彩乃は、忍に節操がないことを知っていた。いつもは表立って下品な振る舞いはしないくせに、今日は度を越えている。もしかしたら、今まで猫をかぶっていただけで、今日、自分が先に突っかかったから、本性を現したのかもしれない。「あなたのたいそれた趣味に付き合うのはまっぴらよ。でも、このルックスとスタイルなら輝かしい成功を収めてきたんじゃない?まあ、がんばってよ」忍は、彼女がビジネスの場で見せる抜け目のない立ち振る舞いを、こんな風にするのが我慢ならなかった。彼はさらに図々しく言った。「一条社長、もう一度よく考えてみてくれよ。初めてのことじゃないだろ?俺のテクニックは折り紙付きだ。あの夜、あなたが何回イッたか、覚えてないのか?」それを聞いて彩乃はティッシュの箱を彼の顔に投げつけた。「いい加減にしてちょうだい!」忍は言った。「あなたの好みに合わせてるだけだろ。なんで怒るんだ?泣くほどあなたを喜ばせたイケメンは、どこかに逃がしちまったのか?」彩乃は答えた。「ええ、逃がしてあげたの。今度G市に来るときは、また彼を指名するから」忍は嘘だと分かっていたが、その言葉は我慢できなかった。「社長はやり手のビジネスマンなんだから、損得勘定くらいできるだろ?俺はタダで相手してやる。金は取らない。いつでも、どこでも、あなたが欲しい時に飛んでいく。K市に帰っても女としての喜びを味わえるんだ。こんなにお得な話はないだろ?」彩乃は本当は忍を怒らせたくないと思っていた。しかし、彼は生まれつきおちょくりたくなるタイプで、彼女は今までこんな図々しい男には会ったことがなかった。以前、付き合った男たちは皆、若くて清純派だった。だが忍は違っていた。彼は、その粗野な性格とは似ても似つかない整った顔立ちと、生まれつき色っぽい目を持っている。この違和感を、彩乃はどうも受け入れられずにいた。今は服装にも気を遣うようになって、スタイルは変わったものの、性格はどうにもこうにも変わらない。ハンサムなのは認める。だけど、その顔はあんまりにも女を惹きつけるのだ。人を惑わすような容姿は、彩乃の好きな爽やか系イケメンとは違う。だから、彼女は彼にずっとピンとこなかったのだ。性格はもっとダメ。彩乃は気が利いて、優しく、素直な男が好きなのに、忍は正反対だ。素直じゃないし、すぐに彩乃を怒らせる。しかも、
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