体中から血の気が引くような、苦しい気持ちに襲われる。言葉は、時に人をナイフのように傷つける。「ごめん、今日は帰る」「まだ食事の途中だろ。先に帰って、ここの代金、俺に全部払わせる気?」「……」「いつも払ってやってたんだから、金払えよ。ほんと、お前には優しさってものが無いのかよ」いつもって……私が払うこともあったよね。こんなこと言われて、私達、本当に付き合ってたのかな? って、疑問に思えてくる。急に変わった態度の理由が知りたくなる。私は、テーブルに支払い分のお金を置いて、すぐに店を出ようとした。「また連絡する」またねって言うけど、次なんてあるの?もう……何も考えたくない。私は肩を落としながら電車に乗り、そして、マンションに向かって歩いた。何だか少し寒い。体が震えた。「いやだ、風邪引いちゃう。早く帰ろう」部屋に戻ってから、すぐにお風呂に入り、温かくして早めに眠った。今日あった嫌なことから解放されたかったし、彼の顔を思い出したくなかったから。***次の日、私は、案の定風邪を引いた。「最悪……」昔から、こじらせたら長くなるタイプだから、早めに病院に行くことにした。家から自転車で10分もかからない場所に、「小川総合病院」がある。ちょっとフラフラするけど、化粧もそこそこにして、マスクを着けて自転車で向かった。 中に入ると、たくさんの患者さんがいた。かなり大きな病院で、評判も良いから、いつも混雑している。「おはようございます」「あら、斉藤さんじゃない。どうしたの?」受付の人とは顔見知りだ。ここの病院は、うちの花屋のお得意様だから。「あの、えっと……」「今日はお花の日だったかしら?」「いえ……違うんです。実は、ちょっと風邪を引いてしまって」「あらまあ、それは大変ね。じゃあ、内科ね。これを内科のカウンターに出してね。可哀想に、とにかくお大事に」
Last Updated : 2025-12-23 Read more