Tous les chapitres de : Chapitre 91 - Chapitre 100

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第91話

「クソ男の母親も最低だって分かってたのよ。だけど、まさかここまでとは思ってなかったわ!さすがは親子ね……こんな母親がいるから、あんな息子が育つわけだ!」玲衣は最近の仕事が多忙を極めており、もともと苛立ちが溜まっていたのに加えて、莉亜がどのようなひどい目に遭ったのかを聞いてその怒りが収まらなくなった。親友が自分の代わりに愚痴を吐いてくれたおかげで、莉亜の気持ちはかなり良くなった。「もういいわ、今はもう大丈夫だから。だけど、これから暫くはあなたの所にお世話になってしまうかも」家にはもう戻れなくなった。薫子は今日すでに度を超える事をしてしまった。一度何かを始めて、その目的が達成されないと、さらに過激な行動をしてしまう事がある。今回の件はよりにもよって相馬家の人間である朔也の登場により無事ことなきを得たから、莉亜は警察に通報すべきではないと思っていた。騒ぎが大きくなってしまえば、誰にとっても良くない。玲衣は眉間にしわを寄せた。「私とあなたの関係なのに、まだそんな事言うわけ?私が住む場所を変えたのは全てあなたのためなんだから、別に一緒に住んでも気にしないわよ。歯磨きもタオルも新しいものを買ってあるから、他に必要なものがあれば、後から一緒にスーパーに買いに行こ……」これからの生活はとりあえずどうにかなるので、莉亜はひとときの休息が得られそうだ。しかし、自分と潤のあの家には、もちろん帰ることはできない。翌日の朝、莉亜は起きるとナチュラルメイクをして、すぐにお金を出して八人のボディーガードを雇った。彼女は「家」に帰って荷物を片付けるつもりだ。すでにこのような状況であり、彼女はもう潤と二人きりになりたくなかった。携帯は夜中ずっと電源を切っていて、この時もまだ電源をつける気はなかった。どうせ潤から自分がいかに悲惨なのかや、怒りをぶつけるようなまるで多重人格者が送ってくるようなメッセージと電話しか来ていないはずだ。ここ数年、彼はこのような事を何度もしてきた。莉亜は、当初一体自分はそれにどう耐えてきたのか、考えただけでも不思議だった。八人のボディーガードはみんな背が高く体つきのしっかりとした男たちばかりで、家に入って横に並ぶと、まるで家が埋め尽くされたような圧迫感がある。家の使用人たちは口を開く勇気もなく、互い
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第92話

玲衣が住んでいる場所はかなり住み心地は良いのだが、莉亜にとってはある重要な問題があった。出かけるのに非常に不便な所にあるのだ。彼女は近日処理をしなければならないことが山積みで、往復するのに不便だ。さらに、相馬潤という人間の性格を、莉亜はやはり熟知している。彼は目的を達するまで行動し続けるタイプなのだ。自分は毎日ボディガードをつけるわけにもいかないし、玲衣の生活を邪魔したくなかった。よくよく考えて、莉亜はやはり他の所に部屋を見に行くことにした。不動産屋はとても誠実そうに笑っていた。莉亜のように部屋を借りる時の条件が少ない相手は少ないのだ。莉亜が出した部屋を借りる時の条件は、安全性と出かけるのに便利な所だ。しかし、莉亜が部屋を見る時には、自分が気に入るかどうかが重要だった。続けて何軒か見に行って、彼女は気に入る物件が一つもなく、腕時計で時間を確認して今日はここまでだと決めた。「あの方は確か、うちのオーナーです。ちょっとお声をかけてきます……」不動産屋はそう言うと、そう遠くないところにいる男のほうへ行ってしまった。莉亜は足を止め、無意識に振り向いて見てみると、そこにあったのは見慣れた男の姿だった。朔也だ。この時の彼は黒いスーツを着ていた。ダークシルバーの細いストライプ模様があり、体にピタリとフィットしているのを見れば、それがオーダーメイドであることは一目瞭然だ。毎回彼が現れるたびに、身に着けているものはどれも上等なものばかりで、見た目だけでも十分に人の目を釘付けにする男だと莉亜は思った。それに彼が醸し出す輝かしいオーラに加え、身分も地位も高いことは言うまでもない。莉亜が気づいた時には、朔也の視線が彼女のほうへ注がれていた。盗み見していたのを見つかってしまった時のような気まずさを覚え、莉亜はその瞬間鼻を擦り、自分から挨拶をしようか迷っていた。この時、朔也はすでに向かってきていた。「朔也さん」それでどうしようもなくなり、口を開いて無意識にそう呼んだ。朔也はそれを聞くと微かに眉を吊り上げた。「昨日は別の呼び方だったけど」実は、彼女は昨日何かに驚いた小鹿のように急に彼の懐に飛び込んでいき、彼の名前を呼び捨てで呼んでいたのだ。莉亜は昨日の事を思い出し、頬が熱くなるのを感じた。「昨日の事は、本
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第93話

莉亜は話しながらニコリと朔也のほうへ笑ってみせた。しかし、彼女のその笑顔は他人行儀な距離感のあるものだと朔也は思った。彼は口角を少し上にあげた。「今君は急いで家を探しているけど、今回の件は確かに焦るべきではないと思う。月ヶ丘の安全性は高いし、今ある多くの問題を解決してくれると思うんだけど。今回の件はなんといっても相馬家が関係しているし、他に問題が起きてほしくない。だからこのように手を貸してあげることしかできない」だから、彼は相馬家の人間として、今回の件は平和的に解決したいということだろうか。莉亜は心のどこかが少し苦しくなる感じがした。自分は何を考えているのだろうか。彼は結局は「相馬」なのだ。いくら彼が弟の潤と仲が良くなくても、無条件に自分側に立ってくれるはずなどないというのに。彼女は心の中でそう自分に言い聞かせていた。そして次に口を開いた時には、その口調はさらに淡々としていた。「やっぱり結構です。私は自分で……」「こうするほうが一番いい。安心して、数日間部屋を探して条件に合う物件が見つかってから、引っ越したって遅くはないんだ」朔也が突然、強制するような言い方をし、莉亜は少し驚いた。「相馬さん……」「莉亜さん」彼女の呼びかけに彼が返した瞬間、その場の空気は急に気まずくなってしまった。先に朔也のほうが口を開いた。「そんなに遠慮しないで、潤の奴、あの性格だからきっと君にちょっかいを出してくると思うよ。君たちは今までの関係をまだ清算していないだろ、多くの住宅地の安全性は保証できないけど、月ヶ丘なら絶対に安全だから」相馬潤という男がしてきた事を考えると、莉亜は内心それには同調できた。彼女は少しの間考えて、突然ある考えを思いついた。「でしたら、私たちちょっとした取引きをしませんか?」莉亜は彼には何の見返りもないのに、ただ世話になっておくだけなのは嫌だった。二人はここ最近絡むことが実際多かった。時に、莉亜は心が乱れることもあったが、自分は相馬家の人間とこれ以上関わりを持つべきではないと理性が彼女に語りかけていた。二度と同じ失敗を繰り返してはいけない!しかし、朔也の自分に対する態度に、莉亜も多くのことを悟っていた。朔也は莉亜が何を言い出すのか予想がつき、隣にいた不動産屋にさがるよう手で合図をして、お
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第94話

朔也は相変わらず話している時は無表情だ。しかし、その真っ黒な瞳で見つめられると、莉亜はどうも不思議な気持ちになってくる。まるで……彼の瞳には彼女しか映っていないかのように。莉亜の心臓はドキッと跳ね上がり、不自然な咳をして彼から視線をそらした。「あなたが気にしないのであれば、よろしくお願いします」「そんな遠回しな言い方なんてしなくていい、そもそもこれは取引きなんだから」この時の朔也の言葉のほうが逆に他人行儀に聞こえた。莉亜は軽く唇を噛み、朔也に言った。「じゃあ、今日から荷物を運んで住んでも大丈夫ですか?」この「月ヶ丘」の環境は確かになかなかのものだ。敷地に入ってからというもの、彼女はとても気に入っていた。莉亜もこれ以上玲衣に迷惑をかけたくなかった。今は朔也自ら自分の困り事を解決してくれるので、莉亜もすでにあまり余計なことは考えないようにした。それにここに住むのは、等価交換でもある。彼女はあの会社の株を毛嫌いしている。しかし、あれをお金に換算すれば、誰にあげても願ってもなかった棚から牡丹餅のはずだ。「君の好きにどうぞ。入り口は暗証番号式だけど、用心に用心を重ねて、ここには鍵もあるよ」朔也は莉亜を案内し、部屋の隅々を問題ないか点検してから、ロックについて詳細に説明してくれた。莉亜は部屋を見回る中で、ここには足りていない家具が多いことに気づいた。「本当にここには一度も住んだことがないみたいですね」この時、朔也はあるキャビネットを点検しているところで、莉亜の言葉を聞いて振り返ると、なんともいえない表情で莉亜を見つめた。「それに関して、俺は君に嘘をつく必要はないだろ」そしてようやく自分のさっきの言葉は不適切だったと気づき、彼女はギクシャクした動きで鼻をさすった。「それならよかった、今夜少し荷物を運んできて、明日からここで生活させてもらいます。あと、株式の譲渡に関する書類は今夜のうちに用意して、送りますね」朔也はそれには異論はなく、莉亜にいくつか注意点を伝え、莉亜の前で執事や警備担当者などが、彼女に挨拶を済ませてから去っていった。玄関のドアが閉まると、莉亜はまた一人で中を一回りした。一人で住むにはここは広すぎる……そしてこの時に、朔也は自分に対して緩すぎるのではないかと思った。最後まで家賃のこ
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第95話

莉亜が上司のセクハラを受けていた秘書を助けてあげてから、何か社内で怪しい動きがあると、この秘書がほぼ莉亜に教えてくれるようになった……思い返してみれば、昔この秘書もこっそりと何度か潤と美琴があまりに親密だと教えてくれたことがある。しかし、過去の莉亜はそれを信じようとしなかった。これを思い出し、莉亜の口調はかなり優しくなった。「教えてくれてどうもありがとう。だけど、たぶん私は出席しなくてもいいわ」彼女は今、全くもって潤と美琴の二人に会いたくなかった。この日、彼らが臨時の株主総会を開くのは、莉亜と潤に関係しているのかもしれない。しかし、持っていた株はすでに他の人に譲渡したので、莉亜はこれ以上彼らと揉めるのは面倒だった。「とりあえず行かない。もし何か突発的な状況があれば、またこっそり教えてね」秘書がそれに理解を示し、電話を切った後、莉亜の携帯に朔也からのLINEメッセージが届いた。【やっぱり来てくれないかな。君が興味のあることが起こるかもしれないと思うんだよ】そのメッセージを見ると、眠気が一気に消えてしまった。朔也のこの意味は、つまり行けば何か面白いものが見られるということだろうか。莉亜は口角を上げ、思わず顔をにやつかせた。そして秘書にやはり株主総会に出席すると送っておいた。彼女は起きて顔を洗い黒いスーツスカートを着用して、ロングヘアを一つにまとめあげた。完全にできる女といった様子だ。会社の会議室にて。潤は慰めるように隣に座る女を見つめ、テーブルの下で彼女の手を優しく引っぱった。まるで無言の慰めのようだ。忘年会での事があってからこの数日間、美琴はずっと緊張しっぱなしだった。彼女は優しく潤の手を触っていた。もちろん、近くにいる莉亜はこの二人のコソコソした動きを見逃さなかった。彼女は心の底で冷たく笑っていた。周りを見まわしてみたが、朔也の姿はなかった。それが莉亜の心に懐疑心を生じさせた……そしてちょうどこの時、朔也が会議室の扉を開けた。朔也の姿を見た瞬間、潤はすぐに立ち上がった。「兄さん、どうしてここにいるんだ?」朔也は自分の会社を持っている。普段、潤の会社などに構うことはほとんどない。この会社が成立してからもう長い。朔也が帰ってきたのは指で数えられる程度だが、その数回というのが、
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第96話

美琴の誰が見ても憐れを誘うような顔を莉亜は目にしてから、彼女は瞳を冷ややかに細めさせた。そして、潤は黙って美琴をちらりと見た。目の前のこの状況をどうすることもできない無力感が漂っている。美琴は我慢できずにすすり泣きを始め、みんなの前で涙を流した。「わ……私はずっと仕事には誠実で努力してきました。会社に悪い影響を与えるようなことは一度もしていません。仕事には責任を持ってやってきたんです。私はただ……」そこまで言うと、自分の口を押さえた。「もういいです。こういう話はするべきじゃないし……」彼女は顔を手で覆って、そのまま駆けだした。この時、会議室は静まりかえっていた。今ここに座っているのは、発言権のある株主たちばかりだが、今彼らは他の人物の顔を立てなければならない。朔也だけが、他人の顔色をうかがうような必要はない。彼はペンを指先でくるりと回し、優雅にその場にいる全員を見ていた。「他に何か、話し合うようなことがありますか?」朔也が口を開いた瞬間、周りの株主たちはまた、沈黙した。彼らは心の中で疑問を抱いていた。相馬朔也という人物を前にして、誰が発言できるというのだろうか。この時、潤はさっき美琴が去っていったシーンを何度も思い返していた。彼女のことをすぐにでも追いかけたかったが、朔也と莉亜を見た瞬間、体が動かなかった。彼は石にでもなったかのように、その場に立ち尽くしていた。会議室には暫くの間口を開く人間はいなかった。そして莉亜がようやくどうでもよくなって言った。「みなさんもどうせご存じなので、この場をお借りして説明させてください。私が持っていた株は全て譲渡することにしました。そしてそれを購入したのはここにいる相馬朔也さんです。今日から彼がこの会社の株主の一人になります。つまり私の今までのポジションが彼にかわったということです。今後、このような会議には私はもう参加しません」そう言い終わると、彼女は立ち上がり、全員に向かってお辞儀した。「今まで、ご協力とみなさんのご支持に感謝いたします」最後の最後まで、莉亜は体面を保った。そう言い、彼女はヒールの靴をコツコツと鳴らしてその場を離れようとした。呆然としている潤の横を通り過ぎる時、彼は突然ハッと我に返り、莉亜の腕を強くつかんだ。「莉亜、何度もお前に言っただろう。
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第97話

潤の青ざめていた顔色がますます悪くなっていった。朔也が自分のためにスカッとする言葉を言ってくれたおかげで、莉亜の気分もだいぶ良くなった。会議室を出てからは、他人の議論や憶測など一切頭から捨てさった。莉亜は深呼吸して、緊張状態だった肩の荷が少しおりたように気持ちが楽になった。「スッキリしたかな?」傍にいる朔也がこの時突然口を開いた。莉亜はハッと、傍にこの大物がいたことを思い出し、微笑んで言った。「ええ、とってもスカッとしました。あなたが言っていた面白い事ってこれだったんですね。分かっていたら、早くからここに来て見る準備をしておいたのに」ただ一つ残念に思うのは、さっき美琴がさっさとあの場を退場してしまったことだ。莉亜は本来、美琴と潤が会議室で互いに庇い合い愛情を見せつけようとするシーンでも見てやろうと思っていたのだ。朔也は低い声で笑い、ちらりと腕時計で時間を確認した。「今日は君のためにあの場をセッティングしたんだけど、その礼に食事でもご馳走してもらえるかな?」莉亜は彼に言われる前からその気持ちがあった。これはこれ、それはそれだ。家と株の件はすでにあれで解決しているから、今日の事は莉亜も朔也にはしっかりお礼をしようと思った。彼女はニコリと笑った。「ちょうどお昼時ですもんね、何を食べたいですか?あなたが決めてください」莉亜がこのように積極的な姿勢を見せるので、朔也は少し意外だった。瞳を微かにキラリと光らせ、彼は真面目に答えた。「この付近に新しいレストランがオープンしたらしい。その評判もなかなかだ。そこに行ってみないか?」朔也はまた腕時計を一目見て、腕を彼女の前に伸ばして見せた。「今から行きますか?到着して注文していたら、昼の時間になりますね」莉亜もさっきの会議がここまで長引くとは思っていなかった。行く前は普通の株主総会だと思っていたのだ。それがまさか、潤があの大切な妻のために、会社で社員たちの前で自分と公然と争う姿勢を見せるとは思っていなかった。相馬潤という男は私生活は乱れているが、仕事においては野心を持った人間だと思っていた。しかし、今日の出来事によって、彼をよく見せてくれていたそのフィルターが完全に剥がれ落ちてしまった。それを考え、莉亜はまた感謝して朔也のほうを見た。「本当にありがと
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第98話

三人は車に乗り、秘書が運転し、オンライン会議をする朔也のために、静かな駐車場に車を停めた。朔也はタブレットを取り出すと、その長い指先で画面をタップし、イヤホンをつけた。イヤホンをつけた瞬間、何か思い出したのか、またそれを耳から外して莉亜のほうを向いて尋ねた。「ここで会議して騒がしくないだろうか」莉亜は自分が物音を立てないように、息をひそめてこの会議が終わるまで静かにしていようと考えていたというのに……朔也のほうが彼女がうるさく思わないか心配してきたのだ。莉亜は急いで首を横に振った。「いいえ、大丈夫です。会議を始めてください」朔也は頷いてイヤホンをつけると、暫くして流暢な外国語で話し始めた。彼の声はもともと低音で聞き心地が良い。それが耳に入ると、莉亜はなんだか変な気持ちになるほどその魅力に引き込まれていった。莉亜は耳がくすぐったく感じ、思わず自分の耳をつねった。自分の勘違いかもしれないが、隣で話をしている朔也の声は一瞬だけ止まったように感じた。そしてまた話し始めた時に、その声はさらに小さくなったようだ。会議はおよそ三十分ほど続き、二人がレストランに到着した時には確かにちょうどお昼時だった。莉亜はメニューをめくって見ていた。「このレストランは初めてなので、お店のお勧め料理を注文しましょうか?」朔也から返事はなく、彼女は顔を上げて彼の意見を聞こうとした。しかしその時、彼は真面目な表情で莉亜をじっと見つめていた。その瞬間、心がざわついた。ここ数日、莉亜の心に何度も込み上げてきた、なんともいえないあの直感がこの時最も鮮明になっていた。彼女は前から、朔也が自分に対して特別な気持ちを持っているんじゃないかと薄々気づいていた。しかし、莉亜はそれを確信に変えることはできずにいた。 この二日、朔也が何かあるごとに莉亜を助けてくれていた。それにまたわざわざ重要な会議まで予定を変更して、会社まで赴き、彼女の味方をしてくれたのだ……そこまで考えると、莉亜はメニューを朔也に渡した。「何を食べますか?それとも私が選んだものでも大丈夫ですか?」莉亜がメニューを手渡す時、その手はそのままで引っ込めてはいなかった。細く透き通るような白い指先が朔也の目に飛び込んできた。彼の視線は莉亜のその指先からゆっくりと上に移って
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第99話

話している間、薫子はしっかりと朔也の腕をつかんでいた。朔也を連れて行かなければ、絶対にこの手を離すことはないと言わんばかりだった。朔也は仕方ないといった様子で言った。「母さん、先に俺の話を聞いてはくれないのか?」「駄目よ!今すぐ私と一緒に帰るのよ。帰らないと言うのなら……もう私の息子じゃないわ!」薫子がここまで言うのだから、莉亜は立ち上がって言った。「相馬さん、お母様と一緒に帰ってください。それがいいです」朔也へのお礼としてご馳走するのは、また後日約束しても遅くはないのだ。ちょうど莉亜は今日の彼の自分に対する態度に違和感を覚えていた。二人っきりになった時にこの話題を出すべきか迷っていた。莉亜自身も、少し考える時間と余裕が必要だった。薫子はまたぎろりと莉亜を睨みつけた。「相馬家のことはあんたに心配される必要なんてないわ。この女狐め、そんな演技なんてするな!」昨日朔也が莉亜を助けた時、薫子はあまり深く考えていなかった。そもそも自分がしたことは人の道から外れた行為だったからだ。あの時の彼女は、ただどうやって潤の前に立ちふさがっている危機を乗り越えるかだけ考えていた。だから、莉亜を閉じ込めておけばいいと思いついたのだ。それに彼らも別に莉亜を監禁しようとしたわけではない。家では彼女に美味しいものを与えることができたわけだし、ただ莉亜の名前で今回の件は丸く収まったという内容をネットに投稿させようとしただけだ……そして一時の衝動に駆られた気持ちが冷静になってから、薫子は自分のやり方は不適切だったことに気がついた。しかし、今日、朔也と莉亜が二人っきりでいるのを目撃し、彼女はまたすぐに怒りが爆発してしまった。あの二人が去ってから、莉亜はその場で肩をすくめていた。朔也は二度も振り返って彼女に目配せをしてきた。今回の件は絶対にその後何かがあるだろう。しかし、莉亜は朔也とまた食事する約束ができるかどうかは分からない。ちょうどレストランは賑わっていたし、さっき薫子が話す時もそこまで大声で騒いだわけではなかったので、今はそこまで周りから注目されていなかった。莉亜は店員に軽く説明してから、店を離れた。朝早くに秘書の電話で起こされ、それから急いで株主総会に出席して見物し、今はただ眠くてたまらなかった。食事はしなくていい
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第100話

薫子は話しながら、心の中で愚痴をこぼしていた。ここ数年、家族の中で朔也の結婚を心配していなかったわけではない。以前も、朔也には家柄の釣り合う家の令嬢と政略結婚させようと何人か探してきたのだが、それは朔也に遠回しに断わられてしまったのだ。誰一人として彼のお目にかなう令嬢はいなかった。薫子も彼には結婚の催促を何度もしてきたが、毎回返ってくる言葉は同じだった。朔也はいつも仕事に集中したいと言うのだ。時間が流れ事業はどんどんうなぎ登りによくなっていくものの、恋愛方面については一切動きがなかった。薫子は考えれば考えるほど恐ろしくなってきた。「やっぱり誰か結婚相手の女性を探したほうがよさそうね……最低でもお見合いの席は設けるからね!ずっと恋愛しないで、女性と交流を持っていなかったら、問題が出やすいから!あれはただの弟の女なのよ!それなのにあなたを簡単に利用できるなんて!」朔也はそれを聞いて、眉間を押さえて落ち着いた様子で言った。「母さんは考えすぎなんだよ。昨日は彼女にあんなことをしたんだぞ、そもそもこちらのほうが間違っていたんだ。もし、俺みたいな物事をしっかり見極められる人間がいなければ、昨日の件は言い訳もできないほどのおおごとになっていたに決まっている。その時はどうやって収拾をつけるつもりだったんだ?」昨日自分がした事を思い出し、薫子は後ろめたさを感じたが、すぐにこう言い返した。「過ぎたことなんだから、もういいでしょ……どのみちうちの問題なんだから、あの女がいくら騒ごうとも、世間にばれるようなことはなかったのよ」その言葉に朔也は冷たく鼻を鳴らした。莉亜はもちろん世間にばらすことはないと思った。彼女を閉じ込めたのは相馬家の人間であり、何度も彼女を助けてきたのも相馬家の人間だ。今日、莉亜が何か言おうとして言葉を呑み込んだあのシーンを思い出した。自分への感謝が彼女の顔に書いてあって、朔也は心の底からまた悦が込み上げるのを感じた。薫子は彼を睨みつけながら、頭をフル回転させていた。「もういいわ、余計な事はあまり言わないでおきましょ……これから私のことはきちんと聞いてもらうわよ!そうじゃないと本気であなたを息子だと思わないからね!」朔也は立ち上がった。「お好きにどうぞ。じゃ、まだ忙しいからこれで」翌日、莉亜は目を覚ま
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