黎斗は手紙を握りしめたまま膝をついた。指先が震え、薫子の香りと霊力が込められた手紙が、クシャリと音を立てる。その紙から立ち上る薫子の清らかな気が、今の彼には、自分を切り裂く刃よりも鋭く、痛かった。 「……あ、ああ……っ!」 脳裏に浮かぶのは、地下に閉じ込められた薫子の絶望に満ちた瞳。 なぜ、自分を信じてくれないのか、と、悲しむ顔。 それを冷たく見下ろし、罵倒した自分の声。 さらに遡れば、瀕死の自分を救い、「生きて」と泣いた幼き日の彼女――。 「俺は……俺はなんてことを……!」 胃の奥からせり上がるような吐き気が彼を襲った。今の彼にとって、恩人だと思っていた鈴子は己を飲み込む毒であったのだ。 「黎明様! どうなさいましたか? お姉様がまたなにか粗相を……」 背後から心配そうに駆け寄る鈴子の足音が聞こえる。 黎斗はゆっくりと立ち上がった。その背中から立ち上る殺気は、屋敷中の空気を一瞬で凍らせるほどに凄まじかった。 やがて、鈴子が目の前に現れた。 腐敗
Dernière mise à jour : 2026-05-15 Read More