数日後、私は美咲と都心の静かなホテルラウンジのカフェ個室で落ち合った。窓から見える夜景がぼんやりと輝く中、テーブルにはノートパソコンと私のスマホ、そして離婚届のコピーが置かれていた。美咲はいつものショートボブにシンプルなブラウス姿で、コーヒーを一口飲むとすぐに本題に入った。勘の良い彼女は、私の顔を見るなり眉を少し寄せた。「瑞希、目が本気だね。前のお茶のときより、もっと冷たくなってる。……本気で週刊誌に流す気なんだ」私は頷き、スマホの録画データを再生した。画面に映るのは、特別個室での熱いキスと抱擁。真希の細い腕が陸斗の首に絡みつき、陸斗が必死で真希を抱きしめる姿。真希がドアの隙間に向かって勝ち誇った微笑みを浮かべる瞬間も、はっきり映っている。美咲の目が細くなった。彼女は画面をじっと見つめ、録音された陸斗の掠れた声——「真希……お前を失いたくない」——を聞きながら、ゆっくりと息を吐いた。「これは……かなり強いね。新婚初夜に夫が義妹の病室にいた事実、結婚式での暴力映像、家族特別枠の契約書コピー……全部揃ってる。大学病院の理事長(陸斗の父)が、製薬会社から数億円の研究費を引き出すために『医師本人の配偶者家族限定』という裏条件を作っていた不正も、完璧に繋がる」美咲はノートパソコンを開き、メモを打ち始めた。記者モードに入った彼女の指の動きは速く、的確だった。「タイトル案はどうする?私は『新婚初夜、夫は義妹のベッドに…妊娠中の妻を放置した大学病院医師の二重生活』が効くと思うけど」私は一瞬、息を飲んだ。妊娠の事実はまだ美咲に明かしていない。美咲は私の反応を見て、にやりと笑った。「勘が働いたよ」瑞希の目が、ちょっと守るような動きをした。「……妊娠してるの?」私は静かに頷いた。「三ヶ月。まだ誰にも言ってない。離婚届はすでに陸斗の印鑑をもらった。スクープに合わせて、役所に提出するわ」美咲の表情が引き締まった。彼女はコーヒーカップを置き、真剣な目で私を見た。「わかった。じゃあ、戦略を固めよう。週刊誌は来週の号で第一弾。内容は『新婚初夜の裏切り+家族特別枠の医療費不正』を中心に。結婚式の暴力映像と録画データを匿名で提供。」「録画データはワイドショー番組にもリークする」「とことんやる気ね」「ええ」「第二弾で妊娠事
Last Updated : 2026-04-18 Read more