碧斗はアパレルショップのレジで会計を済ませ、店員から紙袋を受け取った。その姿を見た由利が、碧斗と紫苑に声をかけた。「そろそろ帰りましょう」「そうね、今日は新しいお洋服も買えたし」紫苑は嬉しそうにニッコリと笑った。彼女にとっては楽しい時間だっただろうが、由利にはなかなかに耐えがたい苦痛の時間だった。(やっと家に帰れるわ……)由利はそのまま一足先に帰路につこうとした。そのとき、碧斗が彼女に話しかけた。「由利、君も何か買ったらどうだ?」「……私?」思いがけない提案に、由利は目を丸くした。いつも外出のときは紫苑のことしか頭に無いような碧斗が、由利を気にかけるような発言をするのは初めてだったからだ。「何かって何を買えばいいの?」「……別に何でも。紫苑のように服でも買うのはどうだ?」「服……」由利は近くにあったアパレルショップに視線を移した。たしかにオシャレな服が並んでいるが、彼女は服にあまり興味がなかった。それに今は一刻も早く帰りたい。これ以上紫苑と碧斗と一緒にはいたくないのだ。「そうしたいところだけど、今はあいにく持ち合わせがないのよ。また今度買うことにするわ」「なら、俺が買ってやる」「……何ですって?」由利が驚いたように彼を見つめると、碧斗はきょとんと不思議そうに首をかしげた。「何をそんなに驚いている?紫苑の服を買ったんだから、君のも買うのは当然だろう」「……ハッ」呆れ果てて、乾いた笑みが漏れた。(今まで紫苑にばかりプレゼントを贈ってきた男だとは思えない発言ね)今さら、彼が何を言ったところで意味がない。昔の由利なら感動して泣いていたかもしれないが、今は違う。何より、碧斗に何かを貰いたくはない。暗い表情の由利に、碧斗が明るく声をかけた。「服が嫌なら、アクセサリーでも……」「……碧斗、私は平気よ。服は前にたくさん買ったばかりだし、今は本当に欲しいものがないのよ」「そ、そうか……?」迷うことなく断りを入れた由利に、碧斗は軽くショックを受けたように視線を下げた。「帰りましょう、紫苑」「え、ええ……そうね……ほら、義兄さんも行きましょう」紫苑はガックリと項垂れた様子の碧斗の手を引いた。紫苑の顔を見た碧斗は、僅かに元気を取り戻したようだった。由利は数メートル先を歩き、その後ろを碧斗と紫苑がついて行く。時刻は既に夜の八時
最後更新 : 2026-05-25 閱讀更多