All Chapters of 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜: Chapter 51 - Chapter 60

78 Chapters

第51話 行かないでください

そこに立っていたのは、見たこともない姿の柊さんだった。シンプルな長袖のシャツと、グレーのパンツ。髪が少し乱れていて、いつもなら完璧に整えられているこの人が、明らかに顔色を悪くしている。「来なくてよかったのに」「来ずにはいられませんでした」「余計な……」「お粥、作ります」私は言葉を遮った。「いいです」「作ります」柊さんが何か言おうとして、やめた。◇キッチンに立って、冷蔵庫を開ける。食材が少ない。買い物してきて良かった。お粥を火にかけながら、リビングの方を遠目に見た。柊さんがソファに腰を下ろして、目を閉じていた。背もたれに体を預けて、じっとしている。いつもは背筋が伸びて、隙のない人だ。それが今夜は、ただそこにいるだけだった。その姿を見ていると、胸の中に何か静かなものが満ちてきた。ねぎを刻んで、おかゆに乗せた。「柊さん。最近、ちゃんと食べていますか」お盆を持ってリビングへ行くと、柊さんに声をかけた。「ちゃんと、とは?」「一日、ちゃんと食べていますか」「定義が曖昧だ」「うるさいですね」思わず言い返してしまって、はっとする。「す、すみません」柊さんが、目を細めた。熱があるせいか、いつもより反応が一拍遅い。普段なら絶対に表情に出さないものが、今夜は少しだけ漏れていた。「……そういうところが、いいんですよね」独り言のような声だった。私に言ったのか、自分に言ったのか、よくわからなかった。「食べてください」お粥を差し出すと、柊さんがゆっくり口をつける。「……うまい」「お世辞はいいです」「お世辞じゃない」食べ終えた柊さんが、ソファに体を預けた。「ど
Read more

第52話 奈緒という計算

【真帆side】あの人から連絡が来たのは、月曜日の午後だった。『一度、お会いしませんか?』見知らぬ番号からのメッセージだった。名前だけで、他には何も書いていない。澄川奈緒。その名前を検索すると、すぐに出てきた。澄川産業の令嬢。業界内でも顔が広い。そして──かつて、黒瀬柊の婚約者と目されていた人物。不審に思いながらも、あたしは了承した。断る理由より、会う理由の方が少し重かった。彼女はいったい、何を言いに来るのか。そしてあたしは、その答えを聞いてどうするつもりなのか。家に向かうタクシーの中で、そのことだけを考えていた。◇数日後、待ち合わせは都内の静かなホテルラウンジだった。澄川奈緒は、先に来て待っていた。黒いジャケット、完璧なメイク。座っているだけで絵になる人だった。テーブルに近づいた瞬間、鋭い視線がまっすぐにあたしを射抜いた。「あなたが、本物の西園寺真帆さんね」奈緒が言った。確認というより、念押しのような口調だった。「そうですけど」「本物、という言葉の意味、わかる?」あたしは黙って、奈緒の顔を見つめた。「今まで黒瀬家に接触していたのは、あなたの妹さんよね。あなた自身は、一度も出てきていない。それが不思議だった」「それで、あたしに会いたかったと?」「いいえ」奈緒がカップを持った。紅茶だった。一口飲んでから、置く。一点の迷いもない動作だった。「協力してほしいの」「どんな」「あなたの妹さんを、黒瀬柊のそばから引き離すこと」あたしは少し間を置いた。「理由を聞いてもいい?」「柊さんは、私の人よ」言い切った。その目は、欲しいものへ一直線に向いていた。「黒瀬家の親族からも、そろそろ動きがあるはずよ。後継者の交際相手に関する話、近いうちに表沙汰になる頃じゃない?」さらりと言わ
Read more

第53話 真帆の内側

【真帆side】帰宅後。柚葉に連絡しようとして、止まった。スマホを手に持ったまま、テーブルに置いた。何を言うつもりだ。謝るのか、説明するのか。それとも、また何かを頼むのか。自分でも、わからなかった。決めたはずなのに、一歩が出なかった。◇奈緒と会った翌日、あたしは一人で家にいた。雨が降っていた。梅雨に入ってから、晴れた日がほとんどない。雅人と別れてから、もうひと月近くが経とうとしている。別れを告げたのは、あたしの方からだった。よく行っていたバーで、向かい合って座った。雅人は、あたしが知る中で一番、笑い方が本物の人だった。だからこそ、あたしの作った笑顔との差が、最後はどうしようもなくなった。思い返せば、雅人は取引先の担当者というだけの立場にしては、黒瀬家の内部事情に妙に詳しかった。『今度、後継者の周りが騒がしくなるかもしれない。関連の夜会もあるみたいだし』というようなことを、酒の席で軽く口にしたこともあった。あの時、彼が持っていた夜会の招待券を、あたしは別れ際に『最後のお願い』として譲り受けたのだ。まさかその場所に、柚葉が立っているとも知らずに。「真帆って、俺のこと、ちゃんと見てくれてたことあった?」バーで雅人がそう言った時、返す言葉がなかった。「真帆はいつも正しいことしか言わないのに、なんで俺はこんなに苦しいんだろう」その言葉が、今でも胸に刺さっている。正しいことと、相手のことを思うことは違う。雅人が言いたかったのは、そういうことだったと思う。バーを出て、まだ梅雨入り前の冷たい夜の雨の中に立ちながら、タクシーを待った。雅人の「本物の笑顔」が雨に滲んで消えていく。冷たい雨粒が頬を伝った。これが涙なのか、雨なのか、自分でもわからなかった。別れた後も、雅人があの時口にした「後継者の周り」という言葉だけが、時々頭をよぎった。彼が今も、その情報網のどこかに繋がっているのだとしたら──あたしが知らないところで、そ
Read more

第54話 城島の気遣い

月曜日、定時を過ぎたオフィスで、キーボードの音がまばらになっていく。その隙間を縫うように、スマホが震えた。画面に「城島」という名前が出た瞬間、少しだけ背筋が伸びた。柊さん本人ではなく城島さんから連絡が来る時は、大抵、何かある。「もしもし?」『西園寺さん、少しよろしいですか』「……はい」『お近くにいらっしゃれば、ご足労をおかけして申し訳ないのですが』指定された場所は、会社から数分のカフェだった。エレベーターを降りると、一階のロビーは人の声で低くざわめいていた。自動ドアが開くたびに聞こえる、通りの喧騒。信号の変わる音。ヒールの音を数えながら歩いた。コンペの件だろうか。それとも、柊さんに何かあったのだろうか。考えがまとまらないうちに、カフェの前に着いた。◇城島さんは、奥の二人席に座っていた。深いグレーのスーツ。いつも通り、物静かな表情だった。でも今日は、少しだけ雰囲気が違う気がした。「来て下さり、ありがとうございます、急なご連絡にもかかわらず」「いえ」席に着くと、エスプレッソマシンの低い駆動音が背後で響いた。城島さんが、薄い封筒を差し出す。「社長から、お届けものがあります」開けると、コンペの案件に関する追加資料が入っていた。競合他社の分析データと、スケジュールの修正版だった。「……直接、家に送れば良かったのでは」言ってから、少し意地悪だったかもしれないと思った。しかし、城島さんは動じなかった。「はい。ただ──ひとつ、申し上げても良いですか」「どうぞ」城島さんが、コーヒーカップをソーサーに置いた。その小さな音が、やけにはっきりと耳に残った。「社長が……あなたのそばにいる時間を、大切にされているのはわかりますか」「わかります」言ってから、思った。本当にわかっているのかと。「城島さんが、なぜそれを私に伝えて下さるのですか」城島さんが
Read more

第55話 業界紙の記事

澄川奈緒からのメッセージに、翌朝になっても返信できていなかった。画面を開くたびに、朝の白い光が文字の上に反射して、余計に読みづらくなる。何度か読み返した。返信しようとして、指が止まった。◇出社してジャケットを脱いだ瞬間、葵が駆け寄ってきた。「ねえ。これ、見た?」差し出されたスマホの画面が、蛍光灯の下で妙に白く光っていた。ゴシップサイトの見出しが、その白さの中に黒々と浮かんでいる。『黒瀬グループ社長、お見合い相手の実の妹と交際か。妹が姉になりすまし、お見合いの席に現れたという証言も』私は画面を持ったまま、一文ずつゆっくりと読んだ。事実の部分がある。真帆が最初の見合い相手だったこと、私がその妹であること。黒瀬グループの懇親会に私が出席していたこと。でも書き方が、違った。『なりすまして、見合いの席に現れた』──まるで私が自分から画策したかのような文章だった。姉に脅されて、断れない事情があって、仕方なく代役をしただけなのに。事実を捻じ曲げられ、悪意に満ちた言葉で塗りつぶされていく。その一方的な書かれ方に、胸の奥から悔しさが湧き上がった。だけど、同時にそれを打ち消すような諦めが私を支配する。「……嘘じゃない部分があるから、余計に始末が悪い」気づいたら、声に出ていた。「柚葉、大丈夫?」「うん。……うん」うん、と言いながら、全然大丈夫じゃなかった。おかしいと思うより先に、疲れた、と思った。嘘をつき続けてきた。そのことへの罰が来たような気がして、反論する言葉が見つからなかった。同時に──この記事を書いたのは誰か、という問いが、頭の奥から離れなかった。◇その日、フロアの空気が変わった。わかりやすく変わった、というわけではない。誰かが何か言ったわけでも、直接聞かれたわけでもない。でも、すれ違う人たちの視線の落とし方が違った。廊下で松
Read more

第56話 誠一郎の庭・前半

あれから、柊さんと連絡を取り合って調整し、記事が出てから五日後。祖父の誠一郎さんが待つという、お屋敷へ向かう日がやってきた。誠一郎さんが私に会いたいと言っている──その伝言を聞いてから、胃がチクチクと痛み続けていた。当然だ。お見合いに姉の身代わりとして現れ、ついにはスキャンダルで黒瀬家の名に傷をつけてしまった。最悪の場合、「もう関わらないでほしい」と直接言われるかもしれない。黒瀬家の名を傷つけた娘を、誠一郎さん自身の口で追い返すつもりかもしれない。怒鳴られても、言い訳をせずに謝ろう。それだけを、車の中でずっと繰り返していた。隣の柊さんは、窓の外を見ていた。その横顔が落ち着いているのが、かえって不安だった。◇城島さんの車で案内されたのは、都心から少し離れた閑静な住宅街にある、大きな日本家屋だった。門をくぐった瞬間、乾いた木の匂いと、庭木の青い匂いが同時に鼻を掠めた。都会では感じたことのない、静かな匂いだった。玄関に入るなり、柊さんが眉をひそめた。「……すまない。急ぎの電話が入ってしまった。先に行っていてくれ」嘘、と思った。一人で誠一郎さんの前に立つのか。「は、はい。大丈夫です」引き留めるわけにもいかず、私は頷いた。城島さんに案内されながら、一人で奥へと進む。磨き上げられた廊下が、自分の足音を必要以上に響かせる気がした。誰もいない廊下を歩くたびに、緊張が一段ずつ上がっていく。広い廊下の先に庭が見えた。畳と障子の匂いに、微かな線香の香りが混じっていた。縁側に、誠一郎さんが座っていた。城島さんは、少し離れたところに控えている。「来てくれましたか」誠一郎さんが、いつもの穏やかな声で言った。その声が、緊張していた私の肩を少しだけほぐした。「はい。あの、記事のことは……」「知っています。気にしなくていいですよ」誠一郎さんが、庭の先を見つめながら言った。青々とした葉の匂いが、風に乗って強くなった。「
Read more

第57話 誠一郎の庭・後半

「待たせましたか」電話を終えた柊さんが、縁側に戻ってきた。「いいえ」誠一郎さんは、何事もなかったように温かな笑みを浮かべると、ゆっくりと立ち上がった。「柊、戻ったか。私は少し母屋で休むとしよう。柚葉さん、またいつでも遊びに来てください」「あ……はい、ありがとうございます」城島さんに支えられながら、誠一郎さんが奥へと消えていく。さっきの「続きは、また今度」という一言だけが、まだ胸の中に引っかかっていた。私の嘘に勘づいていたのだろうか。それとも、ただの気遣いだったのだろうか。「祖父と、何を話しましたか」二人きりになった縁側で、柊さんが私を見下ろして尋ねる。「内緒です」柊さんの眉が、わずかに動いた。何かを追及しようとした様子だったが、ふっと息を吐いて私の隣に腰を下ろした。諦めたというより、受け入れてくれたような顔だった。二人で並んで、静かな庭を眺める。◇雲の切れ間から差した日差しが、縁側の板に触れて、じんわりと温度を上げていく。膝の上に置いた手のひらにも、同じ温かさが伝わってきた。「祖父は、昔から人を見る目が厳しい」柊さんが言った。「はい、そう聞いています」「あなたのことは、最初から気に入っていました」「なぜわかるんですか」「懇親会の席で、祖父があなたに声をかけた時の顔が、いつもと違ったので」しばらく黙って、光が変わっていく庭を見ていた。「柊さんも、人を見る目が厳しいですよね」「そうですか?」「コリアンダーとか、グラスとか。見ていないようで、全部見てる」柊さんが、視線を庭に向けたまま「そうかもしれません」と言った。そのまま、しばらく何も言わなかった。二人で庭を見ている、ただそれだけの時間がそこにあった。「……建築家になりたかった、という話を、前にしましたね」柊さんが、唐突に言った。
Read more

第58話 取締役会の懸念

その夜。私は自宅で一人、お湯を沸かした。誠一郎さんの家で聞いた「続きは、また今度」という言葉と、柊さんの手の温もりが、まだ両方とも胸の中に残っていた。マグカップに茶葉を入れ、湯を注ぐ。立ちのぼる湯気の匂いを吸い込んで、少しだけ息をついた。スマホが、テーブルの上で光った。城島さんからだった。電話ではなく、メッセージだった。『先週の記事を受けて、一部の役員および親族から、正式な文書が届きました。内容を確認していただきたく、資料をお送りします』続けて、PDFファイルが送られてきた。指が、開くのを一瞬ためらった。◇開いた文書には、丁寧な言葉づかいの中に、刃のような一文があった。『後継者の伴侶として、素性の不確かな人物との交際は、グループの信用に関わる』素性の不確かな人物。正しくはない。でも、完全に間違いでもない。身代わりとしてお見合いに行った。姉の名前を使った。五年前のことを隠している。マグカップに口をつけた。さっきまで熱かったはずのお茶が、いつのまにかぬるくなっていた。舌の上に残る苦みだけが、やけにはっきりしていた。数分後、電話が鳴った。城島さんではなく、柊さんだった。『文書のこと、読みましたか』柊さんの声は、いつも通り感情を乗せていなかった。「はい。今、読みました。柊さんの地位が、危うくなっているんですね」『事実です。俺の立場が揺れているのは、事実だ』「私のせいで……」『柚葉さんのせいではありません』柊さんが、はっきりと言った。『これは、記事を書かせた人間の狙い通りに進んでいるだけです』「記事を書かせた人間──」『まだ、確証はありませんが』柊さんが一拍置いた。『それを理由に、俺はあなたを手放すつもりはない』その声には、迷いがなかった。『柚葉さん。逃げるなら、今のうちに言ってください。俺が引き止める前に』◇しば
Read more

第59話 奈緒との約束

奈緒さんからのメッセージに、一週間、返事を返せずにいた。『一週間、お返事がないですね。逃げ回るのも、そろそろ限界ではないですか?』あの一文が、既読のまま画面に張り付いたままだった。何度開いても、返す言葉が見つからない。話さなければ何も変わらない。話せば、何かが動く。どちらに転んでも止まれないとわかっていながら、決められずにいた。そして今朝、追い打ちをかけるように、二通目が届いた。『お返事、お待ちしています』たった一行なのに、画面を閉じた後も文字が目の裏に残った。城島さんに相談すると、「社長にお伝えします」とだけ言って、それ以上は続けなかった。いつもの淡々とした声だったのに、今日はどこか、言葉を選んでいるような間があった気がした。◇木曜日の昼休み、スマホに着信が入った。奈緒さんだった。出るべきか一瞬迷い、意を決して応答した。『西園寺柚葉さん、ですよね』穏やかな声。パーティーで聞いたのと同じ声だった。「はい」『一度、直接お話しできませんか。場所はどこでも。あなたが決めていいですよ』──どこでも。あなたが決めていい。その言い方が、計算されていると思った。逃げ場を自分に選ばせることで、断りにくくする。「……どんな話ですか」『柊さんのことです。あなたのことも』「それだけでは、会う理由になりません」電話の向こうで、少し間があった。『そうですよね。では、こう言いましょうか』声の温度が、わずかに下がった気がした。『私が話さなくても、あなたの過去は、いずれ表に出ます。会ってくれれば──その速度を、少し遅らせることができる』過去。五年前のこと。頭の奥で、忘れたい記憶が音を立てて動いた。手のひらが、冷たくなった。五年間、誰にも言えなかった。葵に話した夜、ようやく言葉にできた。それでもまだ、「過去」という二文字を向けられると、体が先に反応する。
Read more

第60話 カウントダウン

約束の土曜日まで、あと十日。柊さんに過去を打ち明ける。そう心に決めたはずなのに、目の前に彼が立つと喉が固まり、切り出せないまま時間だけが過ぎていった。一日目。仕事帰りに誘われた夕食の席で、「実は、お話ししたいことが」と口を開きかけた。けれど、運ばれてきた温かいスープと、それを見て柔らかく目を細める柊さんの表情を見た瞬間、言葉が奥へ吸い込まれてしまった。この温かな時間を、自分の過去で壊したくない──そんな弱さが邪魔をした。柊さんは何も気づかない様子で「今日の魚、当たりでしたね」と言った。「はい」と答える声が、微かに震えていた。三日目。仕事終わりに電話がかかってきて、「明日、少し早く終わりそうです」という声を聞いた瞬間、話すなら今かもしれないと思った。けれど「そうですか」以上の言葉が出てこないまま、通話は当たり障りのない連絡だけで終わってしまう。五日目。深夜、ベッドの中でスマホのメモ帳を開き、「五年前のこと」とだけ打ち込んだ。打ち込んでは消し、打ち込んでは消す。画面の白い光が、暗闇の中で虚しく明滅する。三回繰り返した後、四回目は打つ前に指が動かなくなった。もし話して、軽蔑されたら。この手から彼が離れていったら。そう思うだけで、胸が押し潰されそうだった。七日目。城島さんから『社長の予定、来週土曜は空いています』という短い業務連絡が届いた。何気ない一文のはずなのに、心臓が跳ねた。「土曜日」という文字を見るだけで、背筋に冷や汗が伝う。八日目。会社のデスクで、過去の案件の資料を整理していたら、ふと『選ぶ行為そのものが、その人の今日を肯定する』という、自分が作ったコピーが目に入った。──選ぶのは、私だ。奈緒さんに追い詰められて話すのと、自分から話すのとでは、まるで違う。仕事で自分の足で立つと決めたのに、彼との関係ではまだ逃げ腰でいた自分に気づかされた。そう思った瞬間、決意が固まった気がした。でも、それを柊さんに伝
Read more
PREV
1
...
345678
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status