そこに立っていたのは、見たこともない姿の柊さんだった。シンプルな長袖のシャツと、グレーのパンツ。髪が少し乱れていて、いつもなら完璧に整えられているこの人が、明らかに顔色を悪くしている。「来なくてよかったのに」「来ずにはいられませんでした」「余計な……」「お粥、作ります」私は言葉を遮った。「いいです」「作ります」柊さんが何か言おうとして、やめた。◇キッチンに立って、冷蔵庫を開ける。食材が少ない。買い物してきて良かった。お粥を火にかけながら、リビングの方を遠目に見た。柊さんがソファに腰を下ろして、目を閉じていた。背もたれに体を預けて、じっとしている。いつもは背筋が伸びて、隙のない人だ。それが今夜は、ただそこにいるだけだった。その姿を見ていると、胸の中に何か静かなものが満ちてきた。ねぎを刻んで、おかゆに乗せた。「柊さん。最近、ちゃんと食べていますか」お盆を持ってリビングへ行くと、柊さんに声をかけた。「ちゃんと、とは?」「一日、ちゃんと食べていますか」「定義が曖昧だ」「うるさいですね」思わず言い返してしまって、はっとする。「す、すみません」柊さんが、目を細めた。熱があるせいか、いつもより反応が一拍遅い。普段なら絶対に表情に出さないものが、今夜は少しだけ漏れていた。「……そういうところが、いいんですよね」独り言のような声だった。私に言ったのか、自分に言ったのか、よくわからなかった。「食べてください」お粥を差し出すと、柊さんがゆっくり口をつける。「……うまい」「お世辞はいいです」「お世辞じゃない」食べ終えた柊さんが、ソファに体を預けた。「ど
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