その部屋での時間は、セラにとって恐ろしく、歪んだ形で過ぎていった。 キャンディは毎日つきっきりで、セラの世話をした。壊れた右肩のために動けないセラに代わり、着替えから身体を拭くことまで手際よくこなす。おそろしい気持ちで抗おうとしたが、キャンディはそれをゆるしてくれない。服を脱がしはしても、ただ着替えさせたり、身体を拭くだけだったり、それ以上の危険はないようだった。食事のときには、セラが「自分で食べられます」と言うのも聞き入れず、熱すぎないよう丁寧に息を吹きかけ、スプーンですくって口元へと差し出してくる。 まるで大事な人形でも扱うような手厚さだった。 セラには、それが恐ろしかった。 優しく丁寧な態度をされるほど、それ以外のおそろしい部分が際立つ。 レオンは、朝と夕の二回、必ず部屋に顔を出した。 けれど、彼がここに来るのはセラを心配してのことではないようだった。部屋に入るなり、セラと目を合わせようともせず、キャンディへ苛立ったように詰め寄る。 「おい、いつになったら公式の文書とやらが届くんだよ」 「そんなの、ぼくの知ったこっちゃないね。待つしかないだろ、来ないんだから」 キャンディはスプーンをかき混ぜながら、面倒そうに肩をすくめるだけだ。 「……」 レオンは苦々しく舌打ちをすると、ベッドの上に横たわるセラの姿をちらりと一瞬だけ見つめ、あきらめたようにさっさと部屋を出ていってしまう。 バタンと閉まる扉を見つめながら、セラは冷えていく胸を押さえた。 レオンが……王妃様に仕えているだなんて……。 要塞で過ごした時間
Zuletzt aktualisiert : 2026-10-15 Mehr lesen