その日の練習を終えてマンションへ戻ると、玄関を開けた瞬間、出汁の香りと包丁の音が迎えた。 「ただいま」 「おかえりなさい。先にお風呂入ってきて。夕食、もう少しかかるから」 「ああ」 蓮はバッグをいつもの場所へ置き、着替えを持って洗面所へ向かった。 シャワーを浴びてリビングへ戻っても、椿はまだキッチンに立っている。鍋から上がる蒸気を確認しながら、まな板の上で野菜を切り分けていた。 蓮はソファへ腰を下ろし、練習中にバッグへ入れたままだったスマートフォンを手に取る。 画面にはいくつかの通知が並んでいた。 その中に、先日の収録で連絡先を交換したばかりの名前がある。 【今日から学校だったんだよね?】 鳴海美羽。 送られてきた時刻は、放課後の練習が始まった直後だった。 【そうだ】 返信すると、ほとんど間を置かずに既読がつく。 【久しぶりの学校、どうだった?】 【普段通りだった】 【……部活は?】 【今終わった】 そこで一度、返事が止まった。 蓮は聞かれた内容へすべて答えたつもりだったが、画面の向こうで美羽が小さく息を吐いていることまでは分からなかった。 ◇ 同じ頃、美羽はテレビ局の控室で、次の収録までの時間を過ごしていた。 鏡の前には新曲の台本と雑誌の取材資料が並び、背後ではマネージャーが明日以降の予定を読み上げている。 「明日は午前からダンスレッスン、そのあとラジオへ移動して、十九時から雑誌の――」 「あとで送っておいて」 「今、確認しておかないと移動時間が」 「見れば分かるから。それを調整するのがあなたの仕事でしょ」 美羽は振り返らずに言い、スマートフォンへ視線を落とした。 ようやく届
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-29 อ่านเพิ่มเติม