บททั้งหมดของ 俺だけの献立 〜隣のスポーツ栄養士志望が俺の食事を管理するらしい〜: บทที่ 151 - บทที่ 160

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150食目

 文化祭当日の校舎は、朝からいつもと空気が違っていた。  廊下の天井には色紙の輪飾りが連なり、各クラスの看板やポスターが壁を埋めるように貼られている。開場前だというのに、教室の前を行き交う足音と呼び込みの声がすでに重なり始めていて、学校全体がどこか浮き足立った熱を帯びていた。 スポーツ科二年A組の会場となった第二体育館も例外ではない。 入口には段ボールで作られた簡易ゴールが飾られ、その奥にはキッキングターゲットを中心に、ピッチングやバスケットの簡易コーナーが並んでいる。「おーい、天根! ちょっとこっち!」 朝から飛んだ声に、蓮は振り返った。  クラスメイトが的の前で手を振っている。「子どもも来るだろうし、昨日広げた穴でちゃんと抜けるか確認しとこうぜ」「俺で確認するのか?」「天根なら外さないだろ」「確認にならない気がするけどな」 軽口を交わしながら、蓮はボールを足元に止める。 昨日よりも少しだけ広げられた高得点ゾーン。  それでも十分狭い。「ほら、上段の二百点」「……朝からそこ狙わせるのか」「天根なら入るだろ?」 そう言われ、蓮は視線だけで距離を測る。 踏み込みは最小限。  乾いた音とともにボールが伸び、狭い穴を正確に抜けてネットを揺らした。「はい、ほらこうなる」「だめだ! やっぱこいつで確認しても意味ねぇ!」 開場前の第二体育館に笑いが広がる。  そこへ、開場を知らせる放送が校内に響いた。 瞬間、廊下の足音が一気に増える。 文化祭が始まった。 午前中の第二体育館は、予想以上の賑わいだった。  他学年の生徒に保護者、小さな子どもを連れた家族まで次々に入ってくる。「次、こっち空いてます!」「ライン越えないようにお願いします!」 呼び込みの声、歓声、ボールがネットを揺らす音。  試合の応援とは違う、柔らかく散った熱が会場いっぱいに満ちていた。 小学生くらいの男の子が、キッキングターゲットの前で少し緊張した顔をしている。  蓮はその横にしゃがみ込んだ。「そこじゃなくて、もう少し左だ」「ここ?」「ああ。そして、蹴る前に穴を見るんだ」 男の子が頷く。  次の一球は見事に中央の穴を抜けた。「入った!」 弾けるような声に、周囲から拍手が起こる。  蓮も自然に口元を緩めた。 その熱の中で、不意に体育
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151食目

 クラスの喧騒が少しだけ落ち着いたところで、蓮は得点板を書き換えていた手を止めた。「おい、天根。そろそろ行ってこいよ」 横から飛んだ声に顔を上げると、クラスメイトがにやりと笑っている。「橘さん、まだ待たせてるんだろ」 「こっちは回るから大丈夫だって」 「もうデモ要員いらないって」 「むしろお前いると基準狂うからいない方が助かるまである」 最後の一言に、周囲から笑いが漏れた。  蓮は小さく息を吐き、第二体育館の入口へ視線を向ける。 第二体育館の入口脇で、椿が待っていた。  腕章は外しているが、まだ文化祭の空気を纏ったまま、こちらへ気づくと小さく目元をやわらげる。「待たせた」「ううん。見てたから」 その返しに、蓮はわずかに視線を止めた。  会場の中を見ていた、という意味ではないことだけはわかる。「じゃあ、まずうちのクラスから見るか?」「ええ。せっかくだもの」 二人で会場へ入ると、すぐにクラスメイトの声が飛んだ。「お、ご両人! ちょうどいい!」「今なら空いてるぞ、やっていってよ」 視線の先にはキッキングターゲット。  椿は一瞬だけ足を止めた。「……やる?」「ああ、やるか。せっかくだしな」 蓮が言った、その直後。「おい、天根はダメだぞ」 即座に横からツッコミが飛ぶ。「やるなら橘さんだろ」「そうそう。お前はチートだ」 会場に笑いが広がる。  椿は少しだけ視線を逸らした。「私、こういうのは……あまり」「まあ一回だけ。記念みたいなもんだって」 「そうだよ橘さん、百点ゾーン狙えば十分だから」 逃げ道を塞ぐように言葉が重なる。  椿は小さく息を吐き、蓮を見る。「……あなたのクラスって、思ったより押しが強いのね」「諦めた方が早い。こいつらは運動部だ」「全然助ける気ないのね」「俺はもう諦めてる」「……そういうこと」 言いながら、椿はボールの前へ立った。  白いスニーカーのつま先で少し位置を整え、的を見上げる。 体育館の中が妙に静かになる。「橘さん、頑張れー」 「百点ならいけるって」 椿は少し助走を取り、右足を振り抜いた。 乾いた音。  ボールは真っ直ぐ飛んだ――が、中央の穴をわずかに外れ、枠に当たって横へ跳ねた。「あっ……」 一拍遅れて、会場に惜しい声が広がる。「おー、今惜しかった!」
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152食目

 黒い幕をくぐった瞬間、文化祭の喧騒が一気に遠のいた。 さっきまで廊下を満たしていた呼び込みの声も、焼きそばの匂いも、軽音の演奏も、厚い布を一枚隔てただけで別世界みたいに薄れていく。足元を照らす赤いライトだけが、迷路のように組まれた段ボールの壁をぼんやりと浮かび上がらせていた。「……思ったより、本格的ね」 椿の声が、いつもより少しだけ低い。「ああ。すごい作り込みだ」 蓮は短く返し、一歩ずつ前へと進み出す。  次の瞬間、制服の裾がわずかに引かれた。 視線を落とすと、椿の指先が制服の裾をそっとつまんでいた。「……何だ」「別に。暗いからよ」「そうか」 蓮はそれだけ返すと、歩幅をほんの少しだけ短くし、そのまま前へ進んだ。 最初の角を曲がった先には、赤いライトに照らされた人形が置かれていた。  長い髪が床まで垂れ、影が壁に揺れる。「……っ」 小さく息を呑む音。  裾をつまむ指先に少しだけ力が入ったのが分かった。「ほんとに暗いところが苦手なだけなのか?」「……別に、ちょっとびっくりしただけよ」 返ってきた声は、少しだけ硬い。 さらに奥へ進むと、今度は天井から吊られた布が、通るたびに肩へ触れた。  床のスピーカーからは低い唸り声のような音が流れ、どこかで金属を引きずるような効果音が鳴っている。 不意に、左側の黒布が揺れた。「っ……」 椿の手が裾から離れ、今度は蓮の袖口をきゅっと掴む。  蓮はわずかに視線を落とした。「今度は袖に変わったな」「……わざわざ言わないで」「だめだったか?」「……ほんと、そういうところよ」 暗がりの中でも、椿が少しだけ睨むようにこちらを見ている気配がした。  だが、袖を掴む指先は離れない。 再び角を曲がったところで、今度は床の仕掛けが鳴った。  足元から突然、
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153食目

 文化祭の熱が校内から抜けきるより先に、サッカー部の空気は一気に張り詰めていた。 放課後の部室前。  掲示板に張り出された選手権県予選の組み合わせ表を前に、部員たちの視線が一斉に集まっている。 紙の中央付近に並ぶ校名。  常盤台の名前のすぐそばに、見慣れた名前があった。「……誠和」 誰かが小さく呟く。  ざわり、と空気が揺れた。「勝ち上がれば、次は誠和か」 「思ったより早いな」 「まあ、どのみちどっかで当たるだろうからなぁ」 部員たちの声が重なる中、蓮は掲示板の前で視線を止めていた。  相手がどこであろうと、一つも落とせない。 だが、誠和の名前が視界に入った瞬間、空気の輪郭がわずかに変わるのを全員が感じていた。「今年の予選は、早々に決着がつくな」 短いその一言で、周囲のざわめきが静かに締まる。 この大会の山場がどこにあるか。  誰もが同じ場所を見ていた。 選手権予選、常盤台の初戦当日。  秋の空は高く澄み、グラウンドの芝には朝の冷たさがまだ残っていた。 試合開始から十分も経たずに相手のラインは押し下げられ、中盤の寄せも2列目まで届かない。 それでも蓮は、試合開始から必要以上に前へ出ることはしなかった。 中盤で受け、左右へ散らす。  攻撃のテンポを変え、相手の出足を挫く。 相手の守備がどこまで食いつくかを見ながら、試合の輪郭だけを静かに組み上げていく。「若葉!左!」 蓮の声に反応し、若葉の足元からボールがサイドへ渡る。「丸さん、ニア!」  中へ折り返されたボールに桐生が反応する。  だが、相手ディフェンダーが着いてきている。(打ち抜く……!) 桐生がダイレクトで合わせようとしたタイミングで、再び蓮の声が響き渡る。「ステイ!」 その声に、桐生は振り抜こうとした足を止め、自身のやや後方にボールを収める。
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154食目

 朝の食卓には、いつもより少しだけ重たい静けさがあった。 窓の外は高く澄んだ秋空で、差し込む光は柔らかいのに、食卓の空気だけがどこか張り詰めている。味噌汁の湯気が二人の間をゆっくりと流れ、焼き鮭の香ばしい匂いが部屋に広がっていても、その温度がそのまま椿の胸の内には届いていないことが、蓮には分かっていた。「……今日の相手」 箸を持つ手を止めたまま、椿が静かに口を開く。「あの青陵なのよね?」「ああ」 短く返した蓮の声に、椿は一度だけ視線を落とした。 去年の夏。  あの練習試合の記憶は、椿にも色濃く残っている。 蓮の脚を狙うような接触。  ベンチから飛ぶ監督の怒声。  帰宅後、何でもないように食卓についた蓮に向けて、思わず感情をぶつけたあの夜。「……絶対に、無茶しないで」 今度は、始まる前に言い切れた。  蓮は椀を置き、まっすぐ椿を見る。「無茶はしない」 その声は静かだった。「今回も、触れさせやしない」 椿がゆっくりと顔を上げる。「……本当に?」「ああ。あれからさらに研ぎ澄まされている。  ラフプレーなんかに、潰されない」 その言葉に、椿は数秒だけ蓮を見つめ、それから小さく息を吐いた。「……信じるわよ」 その一言が、食卓の空気をわずかに緩める。食器の触れ合う音が戻り、いつもの朝の流れが静かに再開していく。  それでも、二人の間には言葉にしきれない緊張が残っていた。 会場へ向かうバスの窓から見える空は高く、秋の光がグラウンドの芝を白く照らしている。  アップを終えてピッチに立った瞬間、蓮は相手の視線の置き方だけで今日の試合の輪郭を理解した。 やはり来る。  その事実を、自身を射抜く視線が物語っていた。 開始の笛が鳴る。  最初に中盤でボールを受けた瞬間、死角から肩が入った。 ボールではなく身体へ。
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155食目

 後半開始の笛が鳴った瞬間、ピッチの空気は前半とは明らかに違っていた。 常盤台のキックオフ。  若葉まで戻されたボールが、迷いなく蓮の足元へ入る。 前半までなら一度中盤で溜めていたはずの位置。  だが、蓮はすでに一列高い場所に立っていた。 その変化に青陵のボランチの寄せが一歩遅れる。  だが、蓮はボールを足裏で止めた。 すぐには動かず、相手をまっすぐ見たまま、左手の指先を小さく動かす。 ――来い。 普段の蓮からはあり得ない、明らかに相手を挑発するジェスチャー。  相手にもその意図は十分伝わった。「舐めるな!」 前半と同じように、身体ごと潰しに来る寄せ。  苛立ちを乗せた足が伸びる。 その瞬間、蓮の身体が半歩だけ沈んだ。  重心を外したままボールを左へ逃がし、そのまま相手の軸足の外を滑るように抜ける。 一枚。 すぐに二枚目が中央から寄せる。 蓮は速度を落とさない。  切り返しすら見せず、上半身のわずかなフェイントだけで逆を取る。 二枚。 ペナルティエリア手前。  三人目がコースを塞ぎに来た。 それでも止まらない。 左足のアウトでボールを前へ押し出し、自分の身体を先に滑り込ませる。  相手の肩が当たるより早く、シュートモーションへ入っていた。 左足が振り抜かれる。  鋭い弾道がニア上へ突き刺さった。 後半開始早々の、衝撃の追加点。 だが、蓮はまだ自陣へ振り返らない。  倒れ込んだままの青陵のDFへ一瞬だけ視線を落とした。 その目に、感情は見えない。  だからこそ、青陵の空気がわずかに揺れた。 次のプレーから、寄せの角度が変わる。 前半以上の勢い。  明確に、蓮だけをターゲットに切り替えた。 蓮は、その勢いを待っていた。 再び中盤で受けると、今度は背後から足が入
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156食目

 試合後の校舎は、勝利の熱がまだ完全には冷めきっていなかった。 部室の前では、試合を振り返る声がいくつも重なっている。若葉の高い声、桐生の低い笑い声、勝ったはずなのにどこか浮ききらない空気。 その中心から少しだけ外れた場所で、蓮はユニフォーム姿のまま立っていた。 汗はすでに引いている。  だが、胸の奥に残った熱だけが、まだ消えていなかった。「天根」 低い声が廊下に落ちる。  振り向くと、監督が部室の入口に立っていた。「監督室に来い」「……はい」 蓮はそれだけ返し、歩き出す。 休日の校舎は静かだった。  試合の余韻が遠くでかすかに残っているのに、この廊下だけは切り離されたように音が薄い。 上履きが床を叩く音だけが、小さく続く。  監督室の前で足を止め、三度ノックする。「入れ」 扉を開ける。 部屋の中は、夕陽の橙が斜めに差し込んでいた。  机の上には試合のメモ用紙、マグネット式の簡易ボード、飲みかけのコーヒー。 監督は椅子に深く腰掛けたまま、真正面から蓮を見ていた。「失礼します」 扉を閉めた音が、妙に重く響く。「座れ」 その後、しばらく沈黙が続いた。 怒鳴られるわけではない。  責め立てる視線でもない。 ただ、見られている。 その静けさの方が、蓮にはずっと重かった。  先に口を開いたのは、蓮だった。「……今日、どうして交代させたんですか?  俺はまだプレーできました。怪我もしていなかった。  なのに、なぜですか?」「あれはお前を怪我から守るためではない」「……え?」「天根。今日の、後半のプレーは何だ?」「あれは……チームを怪我から守るためにも、俺が持ち続けることが最善だと――」「そこじゃない。ラフプレーの方だ」「……っ」
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157食目

 青陵戦の翌日、部室の空気はいつもより少しだけ静かだった。 選手権県予選は準決勝を控えている。  それでも、昨日の試合の余韻はまだ部全体に薄く残っていた。 ロッカーの前でスパイクに手をかけたところで、不意に背後から低い声が落ちた。「よお、天根」 振り向くと、桐生が入口にもたれたままこちらを見ていた。 その視線だけで、何の話かは分かる。 昨日の後半。  青陵戦での自分のプレー。  そして、初めての途中交代。 蓮が言葉を選ぶより先に、桐生が口を開いた。「その顔。監督にこってり絞られたのか?」「……はい」 短い返答に、一瞬だけ沈黙が落ちた。  桐生は小さく鼻で笑う。「なら俺からは言うことないな」 その一言に、蓮はわずかに目を上げた。「あの人が言ったんなら、それで十分だ」 桐生はそれ以上何も言わず、そのまま部室へ入り、蓮の肩を軽く叩いた。 説教が始まる空気だと思っていた。  だが、その信頼の置き方こそが桐生らしかった。 監督の言葉が全て。  それで蓮が戻ると、信じている。 その信頼が、胸の奥に静かに残った。「それはそうとよ」 着替えながら、桐生が続ける。「お前、あんなプレーもできるんだな」「あんなプレー」「ほら、削り返してただろ。交代させられて気づいたけどよ」「あれは、ああしないと、向こうではやられるだけでしたから」「ほえー。俺も学ばないとダメかぁ」「プロは……どうなんでしょう?  というか、桐生さん海外志向あるんですか?」「あん? 当たり前だろ。  いつか同じステージに行くから待っとけよ」 軽く言うが、その決意の硬さが顔に表れている。「桐生さんならすぐですよ」「そうか?お前に言われると現実味が増すなぁ」 着替えを終え
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158食目

 秋の空気は、夏の名残をようやく手放し始めていた。  全国大会出場を決めた熱がサッカー部内にまだ残っている一方で、二年生の教室には別の緊張が静かに流れ込んでいた。 六時間目の終わり、担任が教卓の前でプリントを配りながら口を開く。「はーい、皆聞いて。来週から二年生の進路面談を始めます」 その一言で、ざわ、と教室が揺れる。 誰かが「もうそんな時期か」と呟き、別の席では「まだ全然決めてないんだけど」と苦笑いが漏れる。進学先の名前を挙げて盛り上がる声もあれば、推薦の話をし始めるグループもあった。 担任は配布用のプリントを手に取りながら続ける。「三年になってから考え始めても遅いですからね。今の時点で考えている進路、将来やりたいこと、大学や専門の候補くらいは整理しておきましょう。まだ確定じゃなくていいけど、曖昧なまま放置しないようにね」 列の先頭から順にプリントが回ってくる。  椿の手元に届いた紙には、整然とした枠が並んでいた。 第一志望。  第二志望。  将来の希望職種。  進学理由。  卒業後のキャリアイメージ。 何も難しくないはずの文字が、今日は妙に重たく見える。 将来の希望職種。  その欄に視線を落とした瞬間、椿の頭の中には、これまで積み上げてきた夢の輪郭が自然と浮かび上がった。 国際舞台で戦うトップアスリートの専属管理栄養士。 ただ食事を作るだけではない。  競技特性、コンディション、遠征先の環境、時差、試合日程、怪我からの回復過程まで含めて、選手の身体を支える存在。 その領域に至る。  その目標自体は、ずっと変わっていない。 けれど問題は、その道の長さだった。 放課後、スポーツ栄養科の教室棟へ向かう廊下で、陽菜がすぐに椿の手元のプリントに気づいた。「あー、ついに来たねー。進路の話」 項垂れながら、陽菜が軽く笑う。「ええ」 椿が短く返すと、陽菜は少しだけ目を細めた。
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159食目

 その日の夜、蓮の部屋には夕食後の静かな余韻が残っていた。 食卓の上には、つい先ほどまで二人で囲んでいた夕食の温度がまだ微かに残っている。  味噌汁の椀はすでに片付けられ、キッチンからは洗い終えた食器を水切りラックへ置く小さな音が聞こえていた。 リビングのローテーブルいっぱいに、大学のパンフレットが広げられている。 国内の管理栄養士養成課程の大学案内。  スポーツ科学部の資料。  海外大学の簡易パンフレット。  欧州圏の大学の英語資料。 色の違う冊子が幾重にも重なり、その上を椿の指先が何度も行き来していた。「……うーん」 小さな唸り声。 ページをめくっては止まり、別の大学名に視線を移してはまた戻る。  今日の進路面談でより鮮明になった迷いが、そのまま机の上に広がっているようだった。 洗い物を終えた蓮が、キッチンから戻ってくる。 手をタオルで軽く拭きながら、椿の正面に腰を下ろした。  ソファに背を預け、スマホを手に取る。 画面を開き、親指で何かをスクロールする。 だが、正面から何度も聞こえる小さな唸り声に、数分もしないうちに視線が上がった。「大学、決まらないのか?」 椿は資料から目を離さないまま、短く息を吐く。「ええ……」 机の上に散らばるパンフレットを見渡しながら続けた。「国内だけでも選択肢は多いのに、海外っていう選択肢まで入ってくるから」「海外か」 蓮の視線が、英語表記のパンフレットへ落ちる。「すごいな」 椿がようやく顔を上げた。「蓮くんもでしょ」「俺は元からルーツがあったからな」 蓮はスマホを持ったまま、視線を少しだけ逸らす。「戻る場所があっただけだ。何もないところへ飛び込む勇気の方が、すごいと思う」 その言葉に、椿の指先が一瞬止まる。「……でも正直、海外ルートは無しね」「
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