ガチャリと鍵が閉まる金属音が響き渡り、玄関には重苦しい静寂が落ちていた。 柊也が去り、残されたのは雪乃と黒木、そして川本の三人だけだった。「……奥様、立ち尽くしていては身体に障ります。リビングへ参りましょう」 川本に促され、雪乃は重い足取りでリビングへと移動した。雪乃はフラフラになりながら、ソファへ腰を下ろして俯いた。力なく垂れた前髪の隙間から、雪乃は斜め前に立つ黒木を密かに盗み見る。 スーツの上からでも分かる圧倒的な体躯は隙がなく、壁のように立ち塞がっている。柊也とは違う、感情の波を一切感じさせない無機質な瞳。何を考えているのか全く読み取れない。こんな大男に阻まれたら、女の力で逃げ出すことなど到底不可能だと絶望が胸を絞めつけた。(どうして……どうして柊也は、あんな勝手なことばかりするの?) 自分は他の女と関係を重ねているくせに、自分勝手に服を奪い、連絡手段を断ち、見張りまでつけて私を閉じ込める。どこまで私を踏みにじれば気が済むのだろう。不条理な怒りと恐怖で、唇が震えた。「あの……奥様」 思い詰める雪乃に、川本が申し訳なさそうに、意を決したような低く沈んだ声で話しかけてきた。「大変言いにくいのですが……本当はお伝えしようと思っていたところで、こんなことが起きまして……」 雪乃が顔を上げると、川本は気まずそうに指先をすり合わせていた。「実はわたくし、初孫ができまして……」 ノートもペンもない雪乃は、立ち上がると、心からの祝福を込めて拍手を送った。声は出せなくても、その穏やかな笑みが言葉以上の感情を伝えていた。「ありがとうございます……」 目元を緩めた川本は、胸の詰まる思いで深々と頭を下げた。「それで、申し訳ないのですが、娘の傍に居てあげたいので、お暇をいただきたいのです。孫が生まれて一ヶ月ほどしましたら復帰いたしますので……」 申し訳
Última actualización : 2026-09-12 Leer más