制作現場で何度も気をつけていることがある。
下衆キャラは魅力的に描ける反面、扱いを誤ると受け取り手に不快感を与えたり、意図しない誤解を招いたりするからだ。まず最初に自分の意図をはっきりさせることが重要で、揶揄(やゆ)や風刺として描くのか、単純にキャラクター性の一部を強調するのか、あるいはファンの愛情を込めたコミカルな表現にするのかで表現方法が大きく変わる。私は描く前にその“態度”を自分の中で明確にしておき、スケッチ段階でどう見えるか第三者の視点を想像するようにしている。これがないと、つい表現が過激になったり、誤解されやすい描写になったりしやすい。
技術的な注意点もいくつかある。表情やボディランゲージで「下衆さ」を示すときは、誇張と抑制のバランスを考える。あまりにも性的または攻撃的に描くとプラットフォーム規約に触れる可能性があるし、年齢が曖昧なキャラクターを性的描写にするのは絶対に避けるべきだ。衣装や小物、構図でキャラの性格を示すのは有効で、例えば汚れた笑顔や身だしなみの乱れ、扱いの雑な小物などで“下衆さ”を示すと、過度な性的化に頼らずに性格が伝わる。色彩は少し鈍いトーンやコントラスト強めを使っていやらしさや不快感を演出することができるが、やりすぎないように注意している。私は試し塗りを何度かして、最終的にどの程度の表現がコミカルに見えるか、攻撃的に見えるかの線引きを確認する。
倫理面と運用面も無視できない。著作権元や原作者の意向に配慮すること、公式設定を尊重することはファン活動の信頼性につながる。特に商用利用を考える場合は許諾の有無を確認し、場合によっては販売や有償配布を避けることも検討するべきだ。SNSや投稿サイトには必ず作品の性質を示すタグやコンテンツ警告を付け、閲覧者が回避できるようにするのが礼儀でありトラブル回避にもなる。依頼制作を受けるときは境界線を明確にして、描けない表現や描きたくないリクエストは断る勇気を持つこと。私は過去に一度、依頼内容が倫理的に問題があると感じたため丁寧に断った経験があり、その結果としてクライアントも納得してくれた。
最後に、批評や反応への心構えも大切だ。下衆キャラを描くときは賛否両論が生まれやすいので、反応に対して防御的にならずに説明や意図を添えると理解が深まることが多い。ただし、暴力的、差別的、未成年の性的化など社会的に明確に問題のある表現は避けるべきで、そこは個人の表現の自由よりも責任を優先している。こうした点を踏まえて描けば、作品としての面白さやキャラの魅力を損なわずに、見る人にも配慮したファンアートが作れると私は思っている。