一つの技法として、時間軸を操作して心理描写を組み立てる手がある。出来事を時系列で追うだけだと動機の変化が見えにくい場合、例えば結果からさかのぼることで行為に至った“伏線”を後で回収する書き方が有効だ。私はそんな
逆行的な構成を試して、読者の理解を徐々に変化させることを好む。
具体的には、些細な習慣や会話の違和感を細かく配置し、それらが後で重大な意味を持つことを示す。'源氏物語'のように複数の人物が絡み合う古典から学べるのは、人の心は連続的な変化ではなく複数の要因が重なった結果だという点だ。心理描写は単発の告白や震える手ではなく、日常の反復や小さな裏切りが累積していく過程を描写することでリアリティが増す。
結末をどうするかは作者の倫理観次第だが、結末を急がずに因果の網を丁寧に張ることで、寝取る展開は読者にとって意味深いドラマへと昇華できると考えている。