耳に残る旋律がある。僕はそのフレーズを聴くだけで、自然と場面の断片が頭に浮かぶことが多い。特に序盤の調査パートで流れるあの軽快なモチーフは、探偵役の動きをテンポよく補佐していて、視覚的なカット割りと完全に同期している。『
ナンダコレミステリー』の制作側は、人物が推理を進める「思考の瞬間」を音で強調するのが巧みだ。木管やピアノの短いパターンを重ね、場面転換の合図にもしているのが印象的だ。
クライマックスに近づくと、同じ旋律が倍のテンポや転調で戻ってくるんだけど、そこでの使い方がうまい。表情の変化や小道具の発見に合わせて楽器編成を変え、緊張感を段階的に盛り上げる。例えば不穏さを出すときはシンセのパッドと低音弦を足して、ほっとする瞬間にはアコースティックな音色に切り替える。こうしたダイナミクスの振り幅で、視聴者の感情がコントロールされているのを感じる。
最後に、コメディ的な誤解シーンでの音楽の軽さも見逃せない。楽器の音色をコミカルにするだけでなくリズムをわざとずらして効果音と連動させ、笑いどころを強調している。細かい音の演出を重ねることで、物語のテンポと感情が気持ちよく揺さぶられる作品だと再確認できた。