翻訳で迷うことが多いテーマですが、
爵位を英語にする際はまず文脈を決めるべきだと考えています。一般的に日本語の爵位は具体的なランクごとに対応する英語語を当てるのが自然で、歴史的な日本の
公爵・
侯爵・
伯爵・子爵・
男爵という並びは、英語では概ね『duke』『marquess(または marquis)』『count(または earl)』『viscount』『baron』に対応します。ここで注意したいのは、英国式と大陸式で呼び方の違いやニュアンスがあることです。たとえば『伯爵』は欧州大陸の文脈なら普通に『count』を使いますが、英国史や英国風の訳し方に合わせるなら『earl』と訳すのが自然です。どちらを選ぶかは作品の舞台感や読者層を基準にします。
作品の種類や翻訳の目的によって表現を変えるのも大事です。史実や公的文書風に訳すなら正式な英語の称号(『Duke of X』『Marquess of Y』など)を用いると格調が出ますし、ファンタジーや創作世界では『duke』『marquess』のように一般名詞化して用いることが多いです。親しみやすさを優先するなら『count』より『earl』を選んで英国っぽさを出す、あるいは逆にヨーロッパ大陸風の雰囲気を出したいなら『count』を使う——そうした細かな選択が作品の印象を左右します。
最後に、単語レベルに落とすと「爵位」は単独では『title of nobility』『noble title』『peerage rank』などが無難ですし、制度そのものを指すなら『peerage』や『nobility』がよく用いられます。翻訳時は固有名詞や名前の一部として使うか、一般名詞として説明するかで大文字化や冠詞の扱いも変わるので注意してください。例えば『公爵ジョン』を『Duke John』や『John, Duke of X』とするかは文体次第です。個人的には、原作の雰囲気を尊重しつつ読者に伝わりやすい表現を優先して選ぶのがベストだと思います。