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メンバーごとに音楽的な“座標”を与える作業は、編曲寄りの視点で考えるとやりやすい。低年齢層やカジュアル層を狙うなら明快なメロディとリズム感、コアな支持層を狙うなら複雑なハーモニーや音色の独自性を増やすなど、狙いに合わせて和声や楽器編成を変えていく。僕はしばしばコードの進行やベースラインをメンバーの性格に対応させ、同じ進行でもパートごとにアレンジで色付けする。
制作面の実務では、歌詞と楽曲の結びつきを強めるために、フレーズの語感と伴奏のリズムを細かく合わせる。ライブでの再現性を考えるなら、不可欠なフレーズはステムで保持しつつ、エレメントを差し替え可能にしておくと安心だ。ストーリーテリングを意識したアルバム構成やシングル展開は、ファンの没入感を高める。『BanG Dream!』のようなメディアミックス事例を参考にしつつ、自分なりの音楽的ルールを設けると、長く支持されるバンドに成長させやすいと思う。
音像でキャラクターを演じさせるのは、ひとつの物語作りだ。楽曲一つ一つが人物設定の延長になるように、サウンドの要素をキャラクターの性格やバックボーンに結びつけることから始めるべきだと考えている。例えば声の処理や楽器選び、リズムの取り方ひとつで〈陽気で軽やか〉と〈陰鬱で重い〉は簡単に分かれる。こうした対比を意図的に組み込み、アルバム全体での音像の幅を設計するのが肝心だ。
ミックスやアレンジ面では、キャラクターごとの“音の居場所”を決める。ボーカルの帯域処理や空間系の使い分けで、同じ音源でも立ち位置が変わる。僕はしばしばメロディックなモチーフを各パートに分割して繰り返すことで、聴き手が無意識にキャラクターを識別できるようにしている。さらにライヴ展開を想定して、ステムでの管理やリアルタイム操作の設計も忘れない。
ビジュアルやストーリーと密接に連携することも欠かせない。音だけで完結させず、MVや配信での見せ方を踏まえた音作りをすることで、バンド全体の存在感が強まる。個人的には‘Gorillaz’のような総合的な世界観作りから学んだ点が多く、サウンドとイメージを並行して磨く方法を常に意識している。最終的には、曲ごとに明確な“声”がありながら全体として統一感が保たれていることが、一番大切だと思う。
トラックを一曲作るたびに、自分は小さなルールをひとつ加えて実験する癖がある。ヴァーチャルバンドの場合、音の個性付けは演者が物理的にいない分だけ自由度が高い。だからこそ、キャラクターの動きや振る舞いを想像しながら、音色のエッジやフレーズのクセを作り込んでいく。ボーカルであればビブラートの幅、語尾の切り方、サチュレーションの量まで設定項目として扱うと、キャラがより生きる。
私は制作過程でサウンドプリセットやテンプレートを多用することで、チーム内の一貫性を保っている。例えばドラムのスナップ感やギターの歪み方をプリセット化しておけば、キャラクターごとの“グルーヴ”を一定にできる。さらに、モックアップ段階からステムで分けておくと、リミックスやゲーム、映像への流用がスムーズになる。サウンドデザイン面では、実音と合成音の混ぜ方を工夫して、生身らしさと非現実感のバランスを狙うのが有効だ。
プロモーションやライブ対応を見据えるなら、エフェクトの自動化やパフォーマンス用のMIDIマップも早い段階で設計する。過去に手掛けたプロジェクトで、アニメ的な過剰表現を敢えて取り入れた結果、視聴者の共感が深まった経験がある。『Dethklok』のようにキャラクター性がサウンドにダイレクトに反映される例からヒントを得て、音作りの細部までキャラに即した設計を心がけている。