離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか!
小林悠良(こばやし ゆら)は十八歳の頃から白川史弥(しらかわ ふみや)に付き従っていた。
ある事故で、彼のために自らを犠牲にし、失った聴力を取り戻した。
この喜ばしい知らせを伝えようと意気込んでいた矢先、彼が初恋の女性と甘く寄り添う姿を目の当たりにする。
彼は知っていた。
悠良がどれほど自分を愛していたかを。
自分のためなら命すら差し出すほど、怒ることもなく、ただ一途だったことを。
けれど今回は、悠良は何も言わず、静かに秘密保持契約書にサインした。
そして期限が来ると、彼の世界から完全に姿を消した。
彼女が消えたと知った史弥は、鼻で笑って一言。
「一週間もしないうちに、必ずおとなしく戻ってくる」
だが、三ヶ月が経った。
彼女はまだ戻ってこなかった。
焦燥に駆られた史弥は、狂ったように世界中を探し回る。
あれほど傲慢だった彼が、初めて頭を下げた。
「悠良、もういいだろ......もうやめよう?」
その後。
「悠良、戻ってきてくれ。なんだってするから......」
さらにその後。
「俺が死んだら、君は会いに来てくれる?」
再会のとき。
史弥は悠良の足元にひざまずき、震える手でお茶を差し出す。
「叔母さん、お茶をどうぞ」