地下恋愛五年、私たちは結局別れた
有栖川雅也(ありすがわ まさや)と、五年間、秘密の恋をしていた。私・白石莉奈(しらいし りな)は、数え切れないほど彼を誘惑した。
私が彼の前で素っ裸になり、バニーガールの耳をつけたとしても、彼は「風邪を引くといけないから」と、私に毛布を掛けてくれるだけだった。
私は、それをマフィアのボスである彼の自制心であり、私たちの初めてを結婚式の夜まで取っておいてくれているのだと思っていた。けれど、結婚式を控えた一ヶ月前、彼はこっそりと街で一番盛大な花火大会を予約し、彼の幼馴染の誕生日を祝った。
二人は人前で抱き合い、一緒にケーキを食べ、その後、ラブホテルへと入っていった。
翌朝、二人がホテルから出てくるのを見て、私はようやく理解した。雅也は、禁欲的なわけじゃない。ただ、私を愛していないだけなのだと。
ホテルを出て、私は両親に電話をかけた。
「お父さん、私、雅也と別れたわ。篠崎家との縁談、受けることにする」
父はひどく驚いていた。
「雅也のことを死ぬほど愛していたじゃないか。どうして別れるんだ?
それに、篠崎家のあの男は、子供ができない体だと聞いている……莉奈は、誰よりも子供が好きだろう。彼に嫁いで、どうするつもりだ?」
失意の底にいた私は、答えた。
「大丈夫……養子なら、たくさん迎えられるから……」