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消えゆく月光は掴めない

消えゆく月光は掴めない

結婚式当日、私は偶然、柏木佑(かしわぎ ゆう)のLINEにボイスメッセージが一つ、お気に入り登録されているのを見つけた。 再生すると、甘ったるい声が響いた。「佑、会いたいよ」 私が問い詰めると、佑は冷静に答えた。 「下心があったのは認める。でも、これはただ彼女が王様ゲームで負けた罰ゲームなだけで、他には何もない」 二人のチャット履歴も、その言葉を裏付けていた。 ごく日常的で、普通で、決して一線を越えるような内容はなかった。 なのに私は、それを見ながら涙が止まらず、ウェディングドレスを濡らしてしまった。 「佑、彼女をブロックして。そうすれば、式を続けられるわ」 七年にも及ぶ長い恋。ゴールは目前だったのに。 つい最近、妊娠していることも分かったばかり。まさに二重の喜びとなるはずだった。 しかしその時、清掃員の格好をした女の子が突然、血を一口吐き、涙目で走り去った。 それが誰か分かった途端、佑は考える間もなくあの女の子を追いかけた。 私は彼の腕を掴む。「行くなら、一生私と結婚できるなんて思わないで。よく考えて......」 佑は私の指を一本一本こじ開け、硬直したまま去っていった。その後ろ姿が、私の目に焼き付いた。
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この愛を止めてください

この愛を止めてください

雨宮 くるみ には、付き合ってもうすぐ三年になる彼氏、近藤 大和 が社内にいた。 婚約を結んでいるにも関わらず、一向に結婚の話が進展する気配がなく、彼女は日々悩んでおりーー。 そんな中、龍ヶ崎 海斗 という他企業から出向してきた男性がくるみの部署の部長になることに。 くるみと海斗が出逢ったのは初めてではなく、十年以上前の苦い思い出が二人の心の中に残っていた。   思わぬ再開を果たした二人に訪れる未来とはーー? たった一年間の偽装彼女のはずだったのに……。 愛が重すぎじゃありませんか? ※イラストの無断転用・転載は禁止です。
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月は一人しか照らさない

月は一人しか照らさない

私は、ヤクザの大物である須崎錦治(すざききんじ)が、彼の愛する女、温井百恵(ぬくいももえ)のために直々に選んだ身代りだ。 結婚三年目、私は八度目となる仇敵による拉致に遭った。 錦治が救出に現れ、交渉は五分も経たないうちに、百恵から電話がかかってきた。 「錦治、私、ゲームで負けちゃって、その場にいる男の人とキスしなきゃいけないの。でも初めてのキスはあなたにあげたいの。 会いに来てくれる?」 錦治はためらうことなく立ち去り、その瞬間、刃が私の腹に突き立てられ、鮮血が噴き出した。 彼の部下たちは、過去七回と同じように金で片づけ、私を病院へと送った。 救急車の中、誰かが、私が百恵が一人前になる日まで生きていられるかどうかを賭けている。 彼らは大笑いし、泣いているのは私だけだ。 ヤクザの大物を救うという任務は失敗し、私はシステムに消されようとしている。 錦治、私はもうその日まで生きられない。
Short Story · 恋愛
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これからは月は堕ちない

これからは月は堕ちない

「院長先生、今回の蔵原市の研究プロジェクトに参加することに決めました」 入江月乃(いりえ つきの)の声は揺るぎなく、眼差しには一片の迷いもなかった。 物理研究院の院長は顔を上げ、鋭い視線で彼女を見つめた。 「本当に決めたのか?行けば、少なくとも十年は戻ってこられないかもしれんぞ」 月乃は一度目を伏せ、そしてゆっくりと顔を上げた。その手には、すでに準備された申請書が握られており、迷うことなくそれを差し出した。 院長はしばし沈黙し、熟考の末、印を押した。 「七日後、手続きが完了したら、迎えを手配しよう」 背を向けて立ち去ろうとしたその瞬間、月乃はスタッフたちがひそひそと話している声を微かに耳にした。 「ねえ、あれって東条奥さんじゃない?研究基地って、すごく辺鄙な場所らしいよ。十年は戻れないかもしれないって……東条社長がそんなの許すと思う?」 月乃が部屋を出た時、その瞳には、自嘲と哀しみが滲んでいた。 一桐市では誰もが知っていた……東条優成(とうじょう ゆうせい)は入江月乃を深く愛していたと。彼は命を賭けてでも、彼女を守ろうとしていた。 そして彼女自身も、優成と共に一生を過ごそうと思っていた。 しかし、一ヶ月前、彼がなんと彼女の学生の一人と関係を持っていたことを偶然知ってしまったのだった……
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いつか白髪になる日まで

いつか白髪になる日まで

斉藤若葉(さいとう わかば)は、地震で半身不随になった白石翼(しらいし つばさ)を、60年ものあいだ介護した。天真爛漫だった女の子は、すっかり白髪になっていた。 若葉は、翼が自分と結婚し、養子を二人迎えたのは、心から愛してくれているからだと思っていた。そして、あの地震の時、命がけで彼を助けた自分の恩に報いてくれたのだと信じていた。 しかし死の間際になって、翼は最後の力を振り絞って彼女の手を振りほどいた。代わりに彼は一本のペンを胸に抱き、それに愛おしそうな眼差しを向けたのだ。 「若葉、君が俺を助けたと嘘をつき続けたことは許してやる。君のせいで、俺の人生は台無しになった。来世では頼むからもう俺を解放して、薫のそばにいかせてくれないか? だって、俺の本当の命の恩人は、彼女なんだからな!」 そして若葉が手塩にかけて育てた養子たちまでが、翼の側に立ち、諭すように言ったのだ。 「おばさん。血は繋がってないけど、僕たちはおじさんを本当のお父さんだと思ってる。だから、お願い、おじさんを、僕たちの本当のお母さんと一緒のお墓に入れてあげて!」 「そうよ、おばさん。あの時、おじさんが母の足手まといになりたくないと思わなければ、あなたと一緒になるはずなかったの。私たちを養子にしたのもそのため。そのおかげで、あなたも私たちにそばにいてもらえたんだから、感謝すべきじゃない?まだ満足できないの?」 そうか。自分が彼の命の恩人だと言っても、翼は一度も信じてくれていなかったんだ。 60年以上も続けた自分の献身的な介護は、彼が落ちぶれていた時に初恋の人がくれた、たった一本のペンに比べても劣るということなのか。 自分が母として注いできたつもりの愛情でさえ、病弱な初恋の人では子供を育てられないと心配した彼の計算ずくによるものだったなんて。 その瞬間、若葉は一生をかけて注いできた深い愛情がすべて踏みにじられたような気分になった。 彼女は、ひと口の血を吐き出すと、無念のあまり、目を開いたまま息絶えた。
Short Story · 恋愛
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流れ星のように輝かしい

流れ星のように輝かしい

「確認させていただきますが、日笠さんは旦那さんとの離婚協議書を作りたいということでよろしいですか?」 電話の向こうの弁護士が繰り返し確認した。 数秒の沈黙の後、日笠夕夏(ひがさ ゆうか)はうなずいた。 「はい。いつできますか?」 「処理には少し時間がかかります。おおよそ、半月ほどで大丈夫です」 電話が切れ、夕夏が通話画面を閉じた瞬間、すぐに一件のチケット予約成功の通知が届いた。 それはZ国行きの航空券で、日時はちょうど半月後だ。 ぴったりだ。
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人は移ろい、月は変わらず

人は移ろい、月は変わらず

「結城夫人、この献体同意書に署名なさいますか?」 「はい、決めています」 桐原静葉(きりはらしずは)の声には迷いはなく、淡々としていた。 医師も、彼女の余命がせいぜいあと半月だということを知っていた。それ以上は引き止めず、ただ慎重に確認した。「では……結城社長とはご相談されましたか?もしご存知なければ、その時は……誰もただでは済みません」 結城修司(ゆうきしゅうじ)が妻を命懸けで愛していることは、誰もが知っていた。 彼の許可なく静葉の遺体に手を付けようものなら…… 静葉は自嘲的に微笑んだ。「心配いりません。きっと……彼も知っているはずですから」 彼女が死ぬその日になって、 修司は知ることになる。
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あなたと交わらない人生

あなたと交わらない人生

私・高瀬紗月(たかせ さつき)の婚約者・御堂圭介(みどう けいすけ)には、真っすぐで世話焼きな後輩・鷹宮真琴(たかみや まこと)がいる。 真琴は彼にマッサージをしてやり、耳かきまでしてやる。下着の買い替え時期やサイズまで把握しているほどだ。 私の誕生日に、圭介が私の好きな店を予約して祝ってくれる時でさえ、真琴は陰で念を押していた。 【言い方悪いけどさ、甘やかされて調子に乗る人、ほんとにいるから。大事にされるのが当たり前になると、気づいたら立場、完全に逆になってる。で、痛い目見るのは、だいたいそっちなんだよ】 私はトーク履歴を突きつけ、圭介を問い詰めた。 けれど、彼はたいして気にも留めなかった。 「真琴は率直なだけで、言い方がきついんだ。でも世話焼きで、根はいい子だよ。他の女みたいに、回りくどいことはしない」 彼の煮え切らない態度に腹が立って、胸の奥が痛み、別れを切り出した。 さすがに堪えたのか、圭介は顔色を変え、真琴をブロックし、もう二度と連絡を取らないと約束した。 ――ところが、挙式を目前に控えたある日。 ようやく予約の取れたドレスデザイナーに、私がブロックされていることに気づいた。 調べてみて、すぐに分かった。真琴が圭介のスマホを使い、デザイナーを罵倒した挙げ句、私の予約を勝手に取り消していたのだ。 「あのドレス、正直高すぎじゃない?先輩のお金だと思うと、もったいなくて。 まあ、あんたが恥かくのは勝手だけど。でも、ああいうの、あんたに似合わなくない?周りに笑われたら、先輩まで一緒に恥かくことになるじゃん。それ、見てられないんだけど」 真琴は、にやにやと笑いながら眉を上げてみせた。 そして――私の婚約者は、迷いなく彼女を庇うように前に出た。 「心配して言ってくれてるだけだろ。そんなことでいちいち腹を立てるほうが、面倒じゃない?」 ……ああ、そうか。 胸の奥に溜まっていたものが、すっと冷えていくのを感じた。もう、どうでもよくなった。 私は黙って指輪を外し、彼の頬に向かって投げた。 「もういい。結婚、やめる」
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【完結】あおい荘にようこそ

【完結】あおい荘にようこそ

高齢者専用の集合住宅「あおい荘」。 管理人の新藤直希は、ある日家の前で倒れている家出少女、風見あおいと出会う。 あおい荘と同じ名前を持つ天然少女に不思議な縁を感じた直希は、あおい荘で一緒に働くことを提案する。 幼馴染の看護師・東海林つぐみ、入居者の孫・小山菜乃花、シングルマザーの不知火明日香。 直希に想いを寄せる彼女たちを巻き込んで、老人ホームで繰り広げられる恋愛劇場にようこそ。
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私は清純な顔をしている

私は清純な顔をしている

清純な顔をして生まれた私。それが母にとって最も憎むべき存在になってしまった。 「お前の顔を見るだけで吐き気がするのよ。お前の父親があんな女と関係を持つのを見るなんて……」 そして、母は貧しい山間部から来た少女を援助し、その少女の純粋さと優しさを称え、私よりも何百倍も愛した。 しかし、その少女は裏で私の彼氏を誘惑し、母は私を何度も平手で打った。 「なんでこんなクソ娘を産んだのかしら。お前こそが間違ってるわ!」 しかし、私が病気になり死に瀕しているとき、母は泣き叫び、仏様の前で何度も頭を下げて謝罪した。 「私はお前を愛していないわけじゃない。私の間違いが大きすぎたのよ……」
Short Story · ラノベ
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