枯れた愛に満開のバラを添えて
結婚式を一週間後に控えた頃から、森川晴樹(もりかわ はるき)の出張が急に増え始め、式のリハーサルに一緒に行くと約束した日でさえ、彼は現れなかった。
申し訳なさを感じていたのか、彼は朝から何度も電話をかけてきては、私の機嫌をどうにか宥めようとした。
「今日風が強いから、外に出ない方がいいよ。式のリハーサルなら僕が戻ってからでも遅くない。いい子にして待ってて」
けれど私はもう式場に立っていた。そして、彼の姿を見た。
もしかして私にサプライズを?そんな甘い期待がかすめたのも束の間。
紫のバラが絨毯のように広がる会場で、晴樹が両腕を広げた。すると、ウェディングドレス姿の女性が彼の胸に飛び込んだ。
女性が彼の手を握るより先に、晴樹は彼女の体を抱き寄せ、深く唇を重ねた。
「ちょっと、やめてよ、みんな見てるでしょ?」
晴樹は警戒するように周囲を見渡した。
数秒後、ふっと緊張が解けたように、彼は微笑みながら女性の身体を軽々と抱き上げる。
「さっきまで『もう終わりにする』って言ってたの、誰だっけ?」
「その話はもういいでしょ?それより腰は?もう平気?」