愛、雪のごとく消ゆ
学生の頃、川内白真(かわうち はくま)に恋をした。
大学入試の日、彼のために喧嘩して愚かにも足を怪我し、片足で歩くようになった。
彼は名門大学に進学し、私はろくに進路も考えず社会に出て働いた。
結婚の時、彼の家族は誰も私を認めてくれなかった。
ただ白真だけが、「一生君の面倒を見る」と断言してくれた。
その後、酒を一滴も飲めなかった彼が、酒に溺れるようになった。
酔った彼は私を抱きしめて、涙を流しながら言った。
「恩返しのつもりで、一生彼女を大切にできると思ってた。でもみんな、ぼくが足の悪い女を娶ったって笑うんだ」
「他の男たちは、パーティーに優雅で綺麗な女性を連れて行く。でもぼくは、恥ずかしい女を連れて行って、しかも彼女を愛してるふりをしなきゃいけない」
「でも、君がいてくれてよかったよ、千紘」
「ぼくの人生に君がいてくれて、本当によかった......」
その瞬間、私は完全に無防備な心を打ち抜かれ、ただぼう然とその場に立ち尽くしたまま、一晩中動けなかった。
一宮千紘(いちみや ちひろ)。
それは、彼の女性秘書の名前だった。