信じた人は、裏切り者でした
戸籍課に結婚証明書の再発行をしに行ったところ、役所の職員から言われた。
「ご主人の法的な配偶者は、あなたではありません」
その「別の人」とは、他でもない。
三年前に亡くなった、中村美月(なかむらみづき)の実の妹、中村紗季(なかむらさき)だった。
美月は頭が真っ白になり、無意識のうちに佐藤健太(さとうけんた)の番号を押していた。
だが、電話口から聞こえてきたのは、彼の友人の焦った声だった。
「美月さん、健太さんが酔っぱらって暴れてるんです!俺たちは止められません、早く迎えに来てください!」
受話器の向こうからは、物を叩きつけるような音や怒鳴り声がかすかに聞こえてくる。
美月は思わず眉をひそめた。
健太は、もともと一滴も酒を飲まない人で、人前ではいつも冷静で品のある姿を崩さなかった。
そんな彼が、今夜に限ってどうしてここまで取り乱しているのか?