どうか、他人でいられますように
幼なじみを亡くした高橋涼太(たかはし りょうた)は、十年もの間私を恨んできた。
私たちの結婚式の翌日、彼は部隊の上層部に申請を出して、最北の地へと赴任した。
十年の歳月。数え切れないほどの手紙を送り、あらゆる努力を重ねてきた私がもらったのは、いつも同じ一言——
「本当に悔いているなら、いっそ死んでくれ」
それなのに、私が拉致された時、彼はたった一人でアジトに乗り込んで私を救い出した。そのために数発の銃弾を受けた。
死の間際、最後の力を振り絞って、彼は私の手を激しく振り払った。
「この人生で……一番後悔しているのは……お前と結婚したことだ……
もし来世があるなら、頼む……もう俺に関わらないでくれ……」
葬儀の場で、涼太のお母さんは号泣した。
「涼太……無理やり結婚させて、母さんが悪かった……」
憎しみに満ちた目で、涼太のお父さんは私を睨みつけた。
「桜もお前のせいで死んだのによ!この疫病神め、お前が死ねばよかったんだ!」
私たちの結婚を強く応援してくれた連隊長までもが、首を振ってため息を漏らした。
「恋人たちを引き裂いてしまったのがこの私だった。高橋隊長に……申し訳ない!」
誰もが涼太のことを惜しんでいる。
もちろん、私も。
医療支援隊から除名された私は、その夜、農薬を飲んでこの命を自ら絶った。
が——
再び目を開けた時、結婚式の前夜に、私は戻っていた。
今度こそ、彼ら全員の望みを叶えよう。