二度も浮気した夫に我が子を渡す気はない!
結城宗谷(ゆうき そうや)と再婚してから3年目、結城杏奈(ゆうき あんな)は妊娠した。
よき妻であるため、杏奈はできるだけ衝突は避けようと努めてきた。
だから、宗谷の帰りが遅くても、わざわざ迎えに行くことはしないし、彼が接待で泥酔して帰ってきた夜は、家政婦に酔い覚ましに効く飲み物を用意させるだけ。
いくら宗谷が忙しくて、滅多に帰ってこないとしても、杏奈は「帰ってきてほしい」と、電話をかけたことすらない。妊娠8カ月の頃、宗谷のコートから自分のではない保湿クリームが出てきても、黙って元に戻すだけだった。
そんなことが続いたある日、産婦人科へ検診に訪れた杏奈は、信じがたい光景を目にする。
看護師二人が病室から出てきて話し込んでいた。「結城さんって、すごく中村さんに尽くしてるよね。元気な男の子が生まれた途端、ここで一番の特別病室を貸し切っちゃったんだから!」
「聞いたところだと、あの中村さんって結城さんの殉職した部下の奥さんらしいよ。それにしても、一晩中中村さんに付き添って、官舎にも帰らないなんて、結城さんは本当に義理堅い人じゃない?」
「でも結城さんの奥さんも、もうすぐ出産でしょ?もし知ったらどうなっちゃうのかしらね」
看護師は小声で話しているつもりなのだろうが、杏奈の耳にははっきりと聞こえた。
病室の中で赤子を抱き、微笑む宗谷の姿を見てしまうと、杏奈の目には知らず知らずのうちに涙が溜まった。
もう、離婚しよう。二度と宗谷とは一緒にならない。