愛を待つ蓮台、涙を捨てた日
海市のみんなは知ってる。
颯真が私と結婚を決めたのは、仕方なく……だったって。
この七年間、何度私が想いを伝えても、彼はいつも数珠を撫でてばかり。
その瞳には、一度だって欲なんて浮かばなかった。
でも、あの夜だった。
彼が、心を寄せる女からの国際電話を受けたのを見てしまった。
女の子の声を聞いた瞬間、あの冷静だったはずの彼が、明らかに動揺して……
熱を帯びたその手には、欲望が溢れてた。
次の日、美苑が帰国。
彼は躊躇いもなく私を車から突き落とし、自分は空港へ向かった。
私は大橋から落ちて、記憶をなくした。
その間に、彼があの女にプロポーズしたニュースが、街中を駆け巡った。
そして、その翌日。
彼はようやく現れた。
病室で彼は言ったの。
「結婚届は出してもいい、ただし――ふたり同時に妻にする」って。
そのまま、三人の結婚式を発表してのけた。
呆気にとられる私は、誠士の腕に抱かれながら、ぽかんと彼を見つめた。
「……あんた、誰?」