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夫に煙まみれの火災模擬室へ閉じ込められた

夫に煙まみれの火災模擬室へ閉じ込められた

双子を身ごもっていても、私は毎日の昼、島崎孝一(しまざき こういち)に弁当を届けに行っていた。 ある日、会社で火事が起きた。なのに、彼の秘書・天野早紀(あまの さき)が私に命令してきたのだ。 「三階に行って、私の猫を抱いてきて。私、喘息だから煙を吸えないの」 私は冷ややかに言い返した。 「自分で行きなさい。中は煙だらけよ。お腹の子たちはどうなるの?私は妊婦よ、消防士じゃないの」 結局、私は中には入らなかった。 夕方、孝一が疲れ切った顔と怒りをにじませて、帰ってきた。 「早紀が猫を助けようとして、発作を起こして集中治療室に入った。これで満足か?」 「孝一、猫一匹のために、私と子どもを死なせるつもり?それに、ただの秘書のくせに、私に命令するなんて何様のつもり?」 彼は一瞬、言葉に詰まった。それ以上は何も言わなかった。 翌日、目を覚ますと、私は火災を再現する専用の模擬訓練室に閉じ込められていた。 部屋の中は煙がもうもうと立ちこめている。 訓練室の外では、孝一が退院したばかりの早紀を抱き寄せていた。そして、ガラス越しに私に言い放った。 「夏目優里(なつめ ゆり)、お前がお嬢様気取りでわがまま言うからだ。今日こそ、お前にも喘息の苦しみを味わわせてやる!」 その瞬間、胸の奥が凍りつくように冷たくなった。私はスマホを取り出し、兄に電話をかけた。 「兄さん、やっぱりあいつはクズだった」
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風に消える恋なら、それでよかった

風に消える恋なら、それでよかった

「莉子、決めたよ。ひとりで無人島に行って暮らすつもり」 電話の向こうは、南条夏希(なんじょう なつき)の一番の親友――北原莉子(きたはら りこ)だった。 莉子はその言葉を聞くと、ようやく安堵したように息をついた。 「やっと決心ついたんだね。あの人ときっぱり別れるって?」 「うん」 「あんなに長い間、隠れて付き合ってたのに、結局なにもしてくれなかったじゃない。あんたにはずっと言ってたんだよ?早く別れなって。 ……でもさ、ひとりで無人島なんて、本気?危なくない?もしよかったら、私も一緒に」 「大丈夫」夏希が答えた。 「一緒に来てくれる人は、もういるから」
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愛を捨てて、それぞれの道へ

愛を捨てて、それぞれの道へ

会社の創立記念パーティーの日。私・藤原凛(ふじはら りん)は社長である・宮城駿介(みやぎ しゅんすけ)が、ついに私を副社長に抜擢すると発表してくれるものと期待していた。 ところが駿介は、隠していた愛人・白石紗雪(しらいし さゆ)を壇上に上げ、彼女を新しい副社長に任命すると発表した。 それだけではない。私が担当していた主力プロジェクトも、すべて彼女に奪われてしまった。 「凛さんは会社に欠かせない人材だからこそ、現場にいたほうが力を発揮できる」 冷酷な言葉が、駿介の口から放たれた。 周囲の社員たちが、一斉に私へ同情や嘲笑の視線を向ける。 私は騒ぎもせず、冷静に結婚指輪を外してデスクに置くと、駿介へ社員証を差し出した。 「そこまでしなくても大丈夫です。私が辞めて、あなたの愛人に席を譲ります」 駿介はまだ知らない。彼がずっと提携を望んでいた上場企業が、すでに私をスカウトしようとしていることを……
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青くて遠い、あの日の空へ

青くて遠い、あの日の空へ

財閥の御曹司と付き合って四年になるが、彼は今も彼女を抱こうとしなかった。 桐谷時乃(きりたに ときの)は母親に電話をかけた。 「お母さん、前に言ってたパイロットの面接......お願いしてもいい?」 電話の向こうで、母は驚きの声を上げた。 「えっ、本当に?でもあなた、海栖市に残って結婚するって......あれだけ空を飛ぶのが好きだったのに、全部やめちゃったじゃない」 けれど、薄明かりの中で見たのは――別の女の子に夢中になり、不安に揺れながら想いをぶつける、彼の姿だった。 時乃は、つい苦笑いを漏らした。 瑞樹市に戻れば、私はまた空を飛べる。 そう、誰かの愛を乞いながら、不倫の泥沼でもがく女にはならない。 自由に空を翔けるパイロット・時乃に戻るのだ。
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どうか、他人でいられますように

どうか、他人でいられますように

幼なじみを亡くした高橋涼太(たかはし りょうた)は、十年もの間私を恨んできた。 私たちの結婚式の翌日、彼は部隊の上層部に申請を出して、最北の地へと赴任した。 十年の歳月。数え切れないほどの手紙を送り、あらゆる努力を重ねてきた私がもらったのは、いつも同じ一言—— 「本当に悔いているなら、いっそ死んでくれ」 それなのに、私が拉致された時、彼はたった一人でアジトに乗り込んで私を救い出した。そのために数発の銃弾を受けた。 死の間際、最後の力を振り絞って、彼は私の手を激しく振り払った。 「この人生で……一番後悔しているのは……お前と結婚したことだ…… もし来世があるなら、頼む……もう俺に関わらないでくれ……」 葬儀の場で、涼太のお母さんは号泣した。 「涼太……無理やり結婚させて、母さんが悪かった……」 憎しみに満ちた目で、涼太のお父さんは私を睨みつけた。 「桜もお前のせいで死んだのによ!この疫病神め、お前が死ねばよかったんだ!」 私たちの結婚を強く応援してくれた連隊長までもが、首を振ってため息を漏らした。 「恋人たちを引き裂いてしまったのがこの私だった。高橋隊長に……申し訳ない!」 誰もが涼太のことを惜しんでいる。 もちろん、私も。 医療支援隊から除名された私は、その夜、農薬を飲んでこの命を自ら絶った。 が—— 再び目を開けた時、結婚式の前夜に、私は戻っていた。 今度こそ、彼ら全員の望みを叶えよう。
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彼らに見捨てられた私は、無人島に向かった

彼らに見捨てられた私は、無人島に向かった

結婚式の開始まで、あと三十分というときだった。控室に置いていた私のウェディングドレスが、何者かによって無惨に破られていた。 スカートの裾はズタズタに裂かれ、ビジューはすべて剥がされていた。さらに、ドレス全体に赤いペンキと汚水がぶちまけられていた。 ドレスが届いてから控え室に入ったのは、メイク係として来ていた義妹――綾瀬美夜(あやせ みよ)だけ。 我慢の限界を超えた私は、思わず彼女に平手打ちを食らわせた。 だが、婚約者と両親は私を責め、汚れたドレスを着て美夜に土下座で謝れと強要してきた。 「たかがドレス一枚じゃないか。式はまたやればいい。人を殴るなんて、まるでヒステリックな女じゃないか。さっさと謝れ。さもないと婚約は破棄だ!」 婚約者の黒江奏真(くろえ そうま)が大事そうに妹をなだめる姿を見て、私は涙をこらえながら静かにその場を後にした。 そして、ずっと保存してあった連絡先に電話をかけた。 「すみません、無人島の居住権と、恋人・家族カスタムサービスを購入したいのですが」 電話の向こうからは、耳に心地よい女性の声が返ってきた。 「ご購入ありがとうございます。10日後のご入島をお待ちしております」
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夫の初恋が帰国。身代わりの私は対テロ部隊へ

夫の初恋が帰国。身代わりの私は対テロ部隊へ

「村上、本当にこの道を行くつもりなのか?」隊長は掠れた声で言った。「君のお兄さんのことは……」 「覚悟はできています。あの時、兄が成し遂げられなかったことを、今、私が最後までやり抜くつもりです!」
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かつて秘めた恋心

かつて秘めた恋心

「今回の政略結婚は、私が行きます」 沢城絵理奈(さわしろえりな)がそう告げると、会議室に息を呑む音が響いた。 「ふざけるな!」 父親が真っ先にテーブルを叩いた。 沢城家には四人姉妹がおり、絵理奈は末っ子で、家族全員から最も愛されて育った。 幼い頃から欲しいものは何でも手に入れ、役員会の頭の固い年寄りたちでさえ、彼女には甘かった。 「今回の縁談は地獄へ身を投げるようなことだ。お前をそんな場所に追いやるわけにはいかん!速水のところの若いのとさっさと、そうだな、数日中にでも婚約を……」 「お父様」 絵理奈は父の言葉を遮った。 「和己が今日ここに来なかった。それが答えよ。彼に私と結婚する気がないのなら、待つ必要はありません」 父親の顔色が変わった。 「絵理奈くん、我々も方策は考える。だが、相手の周防家は人を食い物にするような連中だ。周防家の当主は、前の婚約者二人がどちらも精神病院送りになっているんだぞ!」
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ハンドルは私が握るから

ハンドルは私が握るから

豪雨の中、夫の遠藤笙介(えんどう しょうすけ)の迎えを待っていると、いつも車に便乗してくる同僚の吉田彩楓(よしだ あやか)がしつこく愚痴をこぼしてきた。 「旦那さん、今日はどうしてまだ来ないの?もう、寒すぎて無理!こっちは早く家に帰りたいのに!」 彼女の家は西の街にあり、毎回送り届けるために、笙介はかなり遠回りをさせられていた。 しかし、今日の私、篠原静香(しのはら しずか)は生理痛がひどく、お腹を押さえながら断るしかなかった。 「今日は体調が優れないから、早く帰って横になりたいの。悪いけど、彩楓、自分でタクシーを拾って帰ってくれる?また今度乗せてあげるから」 彩楓は不満げに唇を尖らせ、去っていった。 私はビルの下でさらに30分も待ったが、結局笙介から一本の電話がかかってきただけだった。 「お前の会社の下の通りがものすごく渋滞しててさ。少し先の交差点に車を停めたから、そこまで歩いてきてくれないか」 横殴りの風雨の中、私は必死に傘を差し、ようやく笙介の車を見つけ出した。 ドアを開けると、車内は彼の同僚たちでぎっしり埋まっており、私の座るスペースなどどこにもなかった。 笙介は車の窓を半分ほど下げると、助手席で乾いたタオルを使って髪を拭いている女性を指差した。 「舞衣(まい)がさっき交差点で友達を見かけてさ。その子が雨に濡れてて可哀想だったから、ついでに乗せてあげたんだよ。 どうせお前の会社はすぐ近くだろ?一旦会社に戻ってなよ。彼女たちを家に送り届けてから、また迎えに来るから」 吹き荒れる風に傘を壊され、雨水が容赦なく目に叩きつけられて、激しい痛みが走った。
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恋人の裏切り

恋人の裏切り

私の恋人――新川祐輔(あらがわ ゆうすけ)。彼は私を骨の髄まで愛してくれていた。誰もが「理想の夫」と称えるほど、優しく誠実で、完璧な男だった。 ――けれど、彼は私を三度裏切った。 最初の裏切りは三年前のことだった。祐輔の親友であった中地博(なかじ ひろし)が、祐輔をかばって命を落とした。祐輔は私に何も告げず、博の恋人であった菊浦美羽(きくうら みう)と婚姻届を提出した。 その事実を知ったとき、私は心が粉々に砕け、別れを決意した。祐輔は美羽を国外へ送り出すと、すぐに私の前に現れ、膝をついて泣きながら訴えた。 「桃恵……博は俺のために死んだんだ。だからせめて、彼が遺した美羽を守りたい。あの婚姻届は、美羽を安心させるためだけのものだ。博の仇討ちが終わったら、すぐに美羽と離婚する。俺が本当に愛しているのは、お前だけだ」 その時、私は彼を許した。 しかし一年後、祐輔は記者会見で突然、美羽を「新川組組長の妻」として公に紹介した。 私に対して、祐輔はまたも言い訳を重ねた。 「美羽は菊浦組の一人娘だ。新川組と菊浦組が手を組んだのは、博の仇を討つためだ。美羽ともきちんと話し合ってある。敵を片づけたらすぐに離婚して、お前と結婚するつもりだ」 私はまた、彼を信じてしまった。 だが、一年ほど前、祐輔は晩餐会で何者かに薬を盛られ、美羽と一夜を共にした。そのことを、彼はずっと私に隠していた。 そして、つい半月ほど前、私は偶然彼が美羽の妊婦健診に付き添っているのを見かけた。その瞬間、真実に気づいた。 祐輔は俯き、私の目を見ようとせず、小さな声で弁解した。 「桃恵……これは本当に、わ
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