私が消えてから夫は一夜で白髪に
長い間連絡のなかったシステムが突然、私に連絡をしてきた。任務の世界から離れたいかどうかと尋ねてくる。
「考える時間は二日だけです。この機会を逃したら、ここに永遠に留まらなければなりません」
私は迷った。
木村真司(きむら しんじ)に未練があったから。
けれど後になって、私の愛は一方的なものだったと気づいた。
その夜、誤って真司の元恋人の写真が飾られた部屋に入ってしまった。
隅に隠れながら、真司が写真を優しく見つめる。
「兼重紗里(かねしげ さり)は君と横顔が少し似ているだけで、君の比じゃない。君以外の女は皆、ゴミだ」と呟く声を聞いた。
その言葉で、私は夢から覚めたようにシステムに連絡した。
「明日にも出発したい。二日も待てない」