この恋が永遠になるまで
第九十九回目の「ライオン財団の会長の婚約者と子供を作る計画」に失敗したあと、花井亜月(はない あづき)は親友に電話をかけた。
「風子、私、海外に行くね」
ほとんど一瞬で、電話の向こうから椅子が床に倒れる音が響き、清水風子(しみず ふうこ)の弾んだ声が届く。「亜月、やっと決心したのね!前から言ってたじゃない、野呂なんてダメだって。あの人、見た目からして頼りないもの」
亜月は涙で赤くなった目のまま笑みを作った。「うん、もうはっきりした」
「落ち込まないで、こっちに来たら、肩幅広くて腰が細くて脚が長い白人の男を探してあげる。みんな遺伝子の質がいいから、絶対に綺麗な子が生まれるわよ」
亜月は小さくうなずく。「うん、婚姻届を取り戻したら」
電話を切ったあと、亜月は布団に潜り込み、重たい思いを抱えたまま眠りに落ちた。
真夜中、誰かが布団をめくり、その熱い体が腕一本分の距離に腰を下ろす。
ほどなくして、衣擦れの音と低く荒い男の息遣いが耳に届いた。
体の半分が痺れたように強張るが、彼女はゆっくりと顔を向ける。