愛は古き檻に囚われず
葉山涼介(はやま りょうすけ)に強引に迫られ、結婚を余儀なくされてから3年。綾女(あやめ)はようやく、ハリネズミのように彼を拒絶することをやめた。
しかし、医師から妊娠を告げられたその時、偏執的なまでに私を愛していた涼介が変わってしまったことに気づく。
彼はラジオ局の実習生・高槻奈々(たかつき なな)に派手に愛を示し、私をないがしろにし、冷たくあしらい、夜も帰宅しなくなった。
私は、涼介が私のために植えた99株のマンタローズを見ながら、彼に99回のチャンスを与えることを決めた。
彼があの女の子のために私を傷つけるたびに、私は一株ずつその花を切り落とす。
二株目が切られたのは、家族の集まりの日。私はひとり、親戚たちの3時間にわたる非難に耐えていた。その間、涼介は私を置いて、路地裏で奈々と一緒に屋台の雰囲気を楽しんでいた。
三株目が切られたのは、奈々が「ペットに自由を返してあげて」と言った一言がきっかけ。涼介は、私が10年育ててきた猫を道端に放してしまった。
私は必死で探し回ったけれど、見つけたのは血のついた小さなGPS発信機だけだった。
……