夫が初恋に子を授かった後、私は攻略を諦めた
私、朝倉優奈(あさくら ゆうな)は子どもを授かるために、夫とありとあらゆる体位を試した。
ナース服のまま、ベッドの柵に手錠で繋がれ、私はとろんとした目で彼を誘う。夫の朝倉和真(あさくら かずま)が身をかがめて覆いかぶさってくる。
さらに進もうとした矢先、和真は初恋の人からの電話で呼び出され、部屋を出ていく。
どれほど呼びかけても、彼は一度も振り返らなかった。
そのとたん、股のあたりに生ぬるさが広がり、下腹が波のように痛み出す。
私は痛みに耐え、どうにか拘束を外して病院へ向かう。医者は厳しい顔で告げる。
「妊娠しています。夫婦のこととはいえ、こんな無茶はもうやめなさい」
私はうれしさのあまり涙があふれ、和真に伝えようと電話をかける。
だが、そのとき、背後から着信音が鳴る。
体がこわばり、ゆっくりと振り返る。そこには、ふくらみはじめた腹を抱える香坂美琴(こうさか みこと)の妊婦健診に付き添う和真の姿があった。