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黎華街①

ผู้เขียน: 緋村燐
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-02 20:38:17

「ねえ、今日は新しく出来たカフェに行かない?」

 翌日も遊びに誘ってきた日葵に、内心また? と思ってしまう。

 昨日も遊びに行って、今日もなんて。

 テスト前の羽目外しもやり過ぎなんじゃないのかな?

 それに、どちらにしろ今日は一緒には行けない。

 どうしても外せない用事があるんだ。

「誘ってくれてありがとう。でもごめんね、今日はお使いの用事があるんだ」

「お使いって……あの月イチの?」

 私の断る理由を聞いた日葵が声を潜ひそめて聞いてくる。

 そうなるのも仕方ないだろう。

 だって、そのお使いとは昼でも危険だと言われている黎華街れいかがいに住む叔母さんへの届け物なのだから。

「うん、だからごめんね?」

 もう一度謝る私に、日葵は視線をさ迷わせたあと意を決したように口を開いた。

「……ねぇ……それ、私もついて行っちゃダメかな?」

「え……?」

 日葵が何を言っているのか分からない。

 ううん、分かってはいるけど理解出来ない。

 黎華街は昼でも危険と言われる街。

 この辺りの人なら誰でも知っているし、特に子供には絶対に近付くなと大人達は口を酸っぱくして言う。

 私だって、どうしても届けなくちゃならないものだから月一で通っているけれど、あそこを歩くときは細心の注意を払っている。

 叔母さんやお母さんの言う通り、大通りだけを歩き路地裏には一歩でも入ってはいけない。

 寄り道をせず、真っ直ぐ叔母さんの家に行って真っ直ぐ帰ってくる。

 それ以外のことはしてはいけない、と。

 何度か通って慣れてきたとはいえ、その約束だけは必ず守っている。

 そうしなければならないと、思わせる街だから。

 そんな街に、日葵は行きたいと言う。

 ハッキリ言って無謀だ。

 だからいつもなら流されてしまう私だけど、今日ばかりは簡単には頷けない。

「ダメだよ。やめた方がいいよ」

「でも美桜は毎月行ってるでしょう?」

「それは……」

「ね、ちゃんと言うとおりにするから」

 簡単には諦めてくれない日葵に困り果てる。

 でも、簡単に諦めないってことは何か行きたい理由があるのかな?

「どうしてそんなに行きたいの? 何か理由があるの?」

「え……」

 突っ込んで聞いた私に日葵は静かに驚いていた。

 いつもなら二つ返事で了承する私がここまで渋るとは思わなかったんだろう。

 でも、本当に今回ばかりは生半可な気持ちでOKなんて出来ない。

「ごめんね、でも本当にあそこは危険なの。理由も分からず簡単にいいよなんて言えない」

「美桜……」

 私の本気が伝わったのか、日葵も真面目な顔になって話してくれた。

「……実はね、昔仲の良かったはとこが黎華街にいるらしいんだ。どうしても会いたくて……」

 切なそうな表情に、ただ“仲が良かった”だけじゃないと分かる。

 日葵は美人だから告白もよくされるけれど、そのたびに好きな人がいるからと断っていた。

 もしかして、そのはとこが……?

「行って、会えなかったら諦めるから。お願い、一度だけで良いからついて行かせて」

 必死で、本気の顔。

 ここまで真剣にお願いしてくる親友に応えたいと思う。

 でも、黎華街は本当に危険。

 思考がその狭間を行ったり来たりして……。

「……一回だけだよ?」

 親友の願いを優先してしまった。

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