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第4話

Penulis: あめちゃん大好き
直樹が真奈美の姿を捉えた瞬間、その瞳の奥に、目を奪われたような光が一瞬だけ走った。

「真奈美さん、偶然ですね」絢香がにこやかに口を開く。「あなたも交流会に来ましたか?デザインなんてずっとやめていたと思いますが」

含みのある言い方だった。

真奈美はかすかに微笑んだ。「暇でしたから、ちょっと息抜きに、ついでに菊地さんと仕事の話をしました。彼女の雑誌で無形文化財特集のデザイナーをしないかって誘ってくれたんです」

「そうですね」絢香は直樹の腕を強く抱きしめる。「まあ、離婚も決まったことですし、一人で家にいると色々と思い詰めちゃうでしょうから。仕事でもしてたほうがいいですよ」

その言葉に、周りの人たちの視線が一斉に集まった。

直樹の顔色が少し曇る。

「絢香」

「何がおかしいの?」絢香は不思議そうに目をぱちくりさせた。「真奈美さん、気にしないで、私は思ったことをそのまま口に出しちゃうタイプなのです」

真奈美はグラスを揺らし、落ち着いた口調で答えた。

「気にしません。だって、白石さんのように、離婚してすぐ『都合のいい男』を捕まえて、所構わず見せびらかせるわけではありません」

彼女は言葉を切り、付け加えた。「そういえば、白石さんがわざわざ帰国したのは、木村グループに資金援助を頼み込んで実家の危機を救うためだったそうですね。お金にも代えがたいうるわしい絆を見せつけられて、涙が出るほど感動しました」

絢香の笑みが顔に凍りついた。

直樹は眉をいっそう険しくさせた。「真奈美、いい加減にしてくれ」

「私が間違ったことを言ったかしら?」真奈美は彼を見上げて問い返す。「直樹、あなたは今、どんな立場で私をたしなめているの?私の夫?それともこの女の恩人と新しい彼氏?」

直樹は言葉に詰まった。

その場に気まずい空気が流れる。

椿がその場を収めるために口を挟む。「木村社長、最近は文化産業に投資されていますか?弊誌の特集もちょうど企業のスポンサーを探しているのですが、ご興味ありませんか?」

話題はそらされ、直樹はそれに乗った。

しかし彼の視線は、ずっと真奈美の方へと引き寄せられていた。

直樹の上の空な態度に、絢香は苛立ちを隠せない。

交流会が中盤に差し掛かり、真奈美はテラスへ出た。

夜の川風が冷たく頬を撫で、会場の熱気をさっと攫っていった。

彼女は欄干にもたれ、対岸の街明かりを眺めながら、数年前、直樹とここで一緒に夜景を見たことをふと思い出した。

あの時、彼は言った。「真奈美、お前の『帰る場所』を俺が作るよ」と。

真奈美は信じていた。

今思えば、彼の言う「帰る場所」とは、あの澄波ヶ丘の豪邸と、決して自分を心から愛してくれない男のいる場所でしかなかったのだ。

「一人で夜風に当たってるのか?」

背後から低く響く声がした。

真奈美は振り返らなかった。「直樹、白石さんといるべき時間じゃないの?もうすぐ『元妻』になる私を追いかけてどうするの?」

直樹は彼女の隣まで来ると、真奈美の真似をして欄干に寄りかかった。

「今日のお前は綺麗だ」

真奈美はふっと笑い声を漏らした。「それはお褒めの言葉?それとも、あなたから離れた私が、思いのほか『まともな人間』として生きていることへの驚きかしら?」

「真奈美」直樹の声には、どうしようもない切なさが混じっていた。「そんな言い方しかできないのか?」

「なら、どう言えばいいの?」

真奈美は彼へ顔を向けた。その瞳は凪いだ水面のように静まり返っている。「前みたいに、何も気にしてないフリをして、あなたとあの女が仲良く歩く姿に微笑みかけるべきだった?」

直樹はしばらく沈黙した。

「絢香の実家の問題は、すぐに解決する」彼はいきなり弁解を始めた。「事態が落ち着いたら、また一緒になろう」

またか。

またこの、まるで施しを与えるかのような約束。

真奈美は急にひどく疲れた気分になった。

「直樹」彼女は静かに言った。「考えたことはないの?私は最初から、復縁するつもりなんてこれっぽっちもないって」

直樹は息を飲んだ。

「あれは形式だけの別れだと、何度も……」彼は弁解しようとする。

「だけど、私は本気だったわ」真奈美は遮った。「離婚届にサインしたあの日から、振り返るつもりはなかった」

ついに直樹の顔色が変わった。

彼が手をつかもうとしたが、真奈美はそれを避けた。

「真奈美、いい加減にしろ」直樹の声に抑圧された怒りが滲む。「これまで十分にワガママを通してきただろう。

お前のせいで、絢香は散々辛い目に遭ってきたんだぞ。関係を壊したくないと、危うく陣内との婚約まで飲み込もうとしたんだ!」

真奈美は思わず笑ってしまいそうだった。

「つまり、彼女が別の男と結婚しかけたのも、私のせいだって言うの?」

「そんなことは言ってない……」

「じゃあ、どういう意味?」真奈美は一歩踏み出し、彼に詰め寄った。

「直樹、この3年間、私たちの間に問題が起きるたび、あなたはいつだってあの女の肩を持ったわ。事故の時もそう。子供を失った時もそう」

彼女は深く息を吸い込んだ。微かに震える声で、3年間ずっと心の奥底に封じ込めていた問いを、ついに口にした。

「私たちの子がいなくなった日、あなたはどこにいた?あの女の誕生日を祝っていたじゃない!

彼女の『直樹、怖い』という一言で、病院のベッドにいる私を一人残していった!」

直樹に面と向かってこう言ったのは初めてだった。

3年間ずっと、忘れたフリをして、大丈夫なフリをしてきた。

だが、まだ形になる前に消えてしまったあの小さな命が、彼女の心に二度と癒えることのない傷を残していることは、彼女自身が一番よく分かっていた。

直樹の顔から、一瞬にして血の気が引いた。

唇がわななき、言葉が喉に詰まって出てこない。

その瞳には、深い動揺と……茫然とした様子だけがあった。

彼を見つめ、真奈美はふと微笑んだ。その頬に落ちる涙は、とても苦く渋い味だった。

「あなたの秘書が電話をしたわよね?その時、あなたはどう答えたかしら」

真奈美は直樹の冷淡な口調を真似て言い返した。「『今忙しい。目を覚ましたらまた連絡しろ』って。

直樹、知らなかったフリなんてしないで。あなたはただ、『知らないこと』を選んだだけなのよ」

夜風が急に、骨を刺すように冷たくなった。

真奈美は目の前の男を見つめる。6年愛し、3年連れ添い、彼のためにすべてを捨ててきた男が今、ひどく打ち砕かれたような瞳で彼女を見返している。

しかしその眼差しの中に、彼女が求めていた罪悪感は微塵もなかった。

あるのは、図星を突かれた狼狽だけだ。

「そんなはずは……真奈美、俺はただ……」直樹がわななきながら何か言おうとする。

「ただ、何?」真奈美は彼の言葉を遮った。「ただ、私よりあの女の方が大事だった、それだけでしょ?流産して私が1週間も入院していたのに、あなたは一度だって顔を見せなかった。

秘書だけでなく、私自身も電話をしたのに、あなたは忙しいと逃げたわ。メールをしても会議中だと返された」

ついに涙が零れ落ちたが、真奈美はそれでも笑っていた。「直樹、あなたは今さらなかったことにしたいようね」

「そんなんじゃない……」

直樹が否定しようとするけれど、何の弁解の言葉も浮かばない。

なぜなら、すべて事実だからだ。

あの頃、海外にいた絢香が自殺未遂騒ぎを起こし、彼はすべてを放り出して彼女のもとへ飛んだ。

真奈美からの着信をことごとく無視するか、あしらって切っていたことは間違いない。

その中、忘れられない電話があった。弱り切った声で、彼女は言った。「直樹、話したいことがあるの……」

彼はこう言った。「会議中だ。後でかけ直す」

しかし、その「後」が訪れることは、二度となかった。

彼は知る由もなかったのだ。電話の向こう側で、彼女がまさに子どもを失ったばかりだったなどとは。

「悪かった」直樹の声はかすれきっていた。「本当に、申し訳なかった……」

「結構よ」真奈美は静かに言い放った。「直樹、あなたの謝りを受け取る気は、もうとっくにないわ」

彼女は踵を返し、迷うことなくその場を立ち去った。

今回は、直樹が追いかけてくることはなかった。

彼は欄干にもたれたまま、ドアの向こうへ消える真奈美の後ろ姿を見送り、激しい痛みを感じていた。

まるで見えない手で心臓を握りつぶされるような、あまりに現実的で、耐えがたい激痛だった。
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