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11.それぞれの朝

last update Last Updated: 2025-04-24 05:08:09

美果は駅前に車を乗り捨て、まだ営業している居酒屋の中でも明るい店を選び入って行った。

「いらっしゃいませ ! 」

「一人。空いてる ? 」

「どうぞ ! 」

何となく、人のいる明るい場所へ身を置いた。あのまま一人暮らしのアパートに帰るのが怖かったのだ。

「それでさぁ。盆には帰省するからぁ、お袋がすげぇ息子に玩具とか買うんだよぉ」

「分かるわぁ。嫁がうるせぇのなんの……無限オヤツとかなぁ。俺に言うなっつーの」

泥酔したサラリーマン達が、目前に迫る長期休暇を想像し不貞腐れていた。

些細な日常的の会話だ。

小さな個室に通された美果は、襖を隔てた隣の会話を耳に流し、落ち着きを取り戻していった。

少しのお通しと、冷や奴にレモンサワー。

全く酔わない頭で、空になったグラスを置き再びメニューに目を通す。

少しほろ酔いになった頃、ようやく周囲を見る余裕が出てきた。

手描きのメニューのデザイン文字。よく洗練されている味のある書体だ。

壁に貼られたビールのキャンペンガールの水着。清楚なイメージはそのままにセクシーに大胆に、ビールの色合いとマッチした色調。

狭いテナントでありながら、所狭しと並ぶ個室と賑やかなカウンター席の共生空間。ユニークな間取りと窓の数。仕切りを襖にして音が漏れるのも悪くない。路上からでも、繁盛さが分かる明るい接客の声。

美果の目には全てがデザインの世界で映る。

そして冷静になった時。

ふと思い出し、疑問を抱いてしまったのだ。

──涼川 蛍の作品は本当にアートだっただろうか ?

壁に画鋲で付けられ垂れ下がっただけの物が、パーティルームとは笑わせる。

空間を使うアートならば、縦も横も、奥行も全てが審査対象。

蛍の最初の部屋は天井や、画鋲の使えない窓際は手薄だった。

使えるアイテムは言えば黒服が持ってくる。

パーティ用のリボンでもオーナメントでも、用意されたはずなのだ。

既製品なら時間の短縮にもなる分、もっと豪華に仕上げられたのでは無いか ?

異常な状況で、感覚が鈍っていたのか ?

同じ作業をするならば、自分の方が上手く飾れたはず。

だが、その発想が出てこなかったのは事実だ。

でも、やはり。

涼川 蛍の三世界。

あれは総合点での評価。

一部屋ずつ見れば、何の
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    Last Updated : 2025-05-08

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     七月中旬──日々野高等学校。  本格的な夏を目前に、蛍は古川家から託された仏花を手に登校していた。  香澄の死。  あれから一ヶ月が経とうとしていた。「蛍君。いつもありがとう」 一人の女子がその花を受け取りに、下駄箱へ来ていた。清楚な制服の着こなしに、腰まである長い三つ編み。指紋ひとつない丸い眼鏡が印象的な女子生徒。  蛍に頭を下げ両手で花を持つ。「別にいいよ。香澄の親からだしさ」 彼女は手の中に収まる纏まった菊を、鬱屈な瞳で見下ろした。「今日は白ね。ピンポンマムが可愛い」 剃刀のような瞳が僅かに揺らぎ、小さく微笑む。 生徒会役員 山王寺 梅乃。  香澄の唯一、親しかった女友達だ。付き合いこそ蛍ほどでは無いが、中学、高校と同じ時間を共に過ごして来た。  その容姿の特徴はなんと言っても刺すように鋭い、凍りつくような目付きだ。本人のコンプレックスだと言う梅乃だが、クールで賢い彼女のファンは多い。「ありがとう蛍君。じゃあ花瓶に入れてくる」 切れ長の瞳が、眼鏡の奥で一瞬だけとろんと下がり、はにかむのを隠すように下を向く。「梅乃さん……俺もやろうか ? 」「えっ ? 」「いや、いつも……悪いし……。俺もちょっとやらないと落ち着かないし」「あ……う、うん。じゃあ、花瓶を取りに行きましょうか」 二人並んで廊下を歩く。  既に学校は元の活気を取り戻してきた。香澄も大きな友人グループに身を置いていた訳では無い。至って地味目な生活だった上に、一番懇意な友人が、この梅乃だけ。  学校の中でも目立たない女子生徒二人。 その片割れが亡くなったと集会で知った時、生徒たちは初めこそ動揺していた。しかし、現実は残酷だ。  今や教室の片隅、香澄の花瓶の手入れをする者は減っていくばかり。それで最後に残ったのが梅乃だったという事だ。  花瓶を抱えた胸がふにっと押され、柔らかな様を、目ざとい男達の視線を集める。 &nbs

  • PSYCHO-w   game-2 1.監禁

     目が覚めた中年男性は、直ぐに上半身を起こした。部屋を見回し、汗だくで目の前に座り込んだ少年を見て悲鳴を上げた。「うっ !! うわぁっ !! 助けてくれ !! 頼む ! なんでもする ! 」 見知らぬ場所。 閉ざされたドア。 窓が無く、カメラだらけのコンクリート壁。 無機質な空間だった。 ひと目でわかる密室。 空調は小さな配管のみ。通れるのはネズミ程の生き物だけだろう。 男性は誘拐されてきた自分に、災厄が襲って来るのが確定しているかのように怯えていた。 しかしそばにいた少年もまた、起きたばかりだった。目をシパシパとさせ、明るい蛍光灯の光に顔を歪めていた。 そして男の方をゆっくり見上げる。 ぼうっとしていて、いまいち状況を理解していない様子だったが、錯乱した男性を見て連鎖するように取り乱した。「え……? えぇ !? あの…… ! 違います ! その ! 僕も今、目が覚めたんです ! お兄さん、お願い ! 僕をほっといて ! こっちに来ないで ! 僕は何も…… !! ……あ……うぅ……頭が痛い…… ! 」 さらりとした黒髪に、どんぐりの様な瞳。 本当にただの子供じゃないかと、男は一度生唾を飲み込んだ。 少年の無害そうな素振りに、男も少し状況が見えてくる。 怯えきった少年を、壁に張り付きながらもう一度まじまじと見つめた。 子供。 自分よりずっと年下の……高校生の制服少年。「あ、頭…… ? だ、大丈夫か ? 殴られたのか ? ここに来る時、なにかされたのか…… ? 」「あ……。

  • PSYCHO-w   11.それぞれの朝

    美果は駅前に車を乗り捨て、まだ営業している居酒屋の中でも明るい店を選び入って行った。「いらっしゃいませ ! 」「一人。空いてる ? 」「どうぞ ! 」 何となく、人のいる明るい場所へ身を置いた。あのまま一人暮らしのアパートに帰るのが怖かったのだ。「それでさぁ。盆には帰省するからぁ、お袋がすげぇ息子に玩具とか買うんだよぉ」「分かるわぁ。嫁がうるせぇのなんの……無限オヤツとかなぁ。俺に言うなっつーの」 泥酔したサラリーマン達が、目前に迫る長期休暇を想像し不貞腐れていた。 些細な日常的の会話だ。 小さな個室に通された美果は、襖を隔てた隣の会話を耳に流し、落ち着きを取り戻していった。 少しのお通しと、冷や奴にレモンサワー。 全く酔わない頭で、空になったグラスを置き再びメニューに目を通す。 少しほろ酔いになった頃、ようやく周囲を見る余裕が出てきた。 手描きのメニューのデザイン文字。よく洗練されている味のある書体だ。 壁に貼られたビールのキャンペンガールの水着。清楚なイメージはそのままにセクシーに大胆に、ビールの色合いとマッチした色調。 狭いテナントでありながら、所狭しと並ぶ個室と賑やかなカウンター席の共生空間。ユニークな間取りと窓の数。仕切りを襖にして音が漏れるのも悪くない。路上からでも、繁盛さが分かる明るい接客の声。 美果の目には全てがデザインの世界で映る。 そして冷静になった時。 ふと思い出し、疑問を抱いてしまったのだ。 ──涼川 蛍の作品は本当にアートだっただろうか ? 壁に画鋲で付けられ垂れ下がっただけの物が、パーティルームとは笑わせる。 空間を使うアートならば、縦も横も、奥行も全てが審査対象。 蛍の最初の部屋は天井や、画鋲の使えない窓際は手薄だった。 使えるアイテムは言えば黒服が持ってくる。 パーティ用のリボンでもオーナメントでも、用意されたはずなのだ。 既製品なら時間の短縮にもなる分、もっと豪華に仕上げられたのでは無いか ? 異常な状況で、感覚が鈍っていたのか ? 同じ作業をするならば、自分の方が上手く飾れたはず。 だが、その発想が出てこなかったのは事実だ。 でも、やはり。 涼川 蛍の三世界。 あれは総合点での評価。 一部屋ずつ見れば、何の

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