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第583話

Author: ルーシー
車内では、愛莉が玲奈のそばに身を寄せていた。

いま沙羅はいない。

寄りかかれるのは、ママだけだった。

今日の出来事を思い出すと、怖い。愛莉の胸にはまだ怖さが残っている。

何も言わず、ただ黙って玲奈にもたれたままだった。

玲奈は顔を向けた。視線は、智也と拓海の方へ向かっていた。

智也は拓海へ歩み寄ったが、手を出す気配はない。

傘を差したまま雨の中に立ち、黒いコートが夜の闇に溶け込んでいく。

しばらく沈黙したあと、智也は傘の縁を少し持ち上げた。

黒い瞳で拓海をまっすぐ見据えながら、それでも口を開こうとしない。

見つめられる拓海は落ち着かなくなり、怪訝そうに言った。

「……俺を見て、どうするんだ?」

智也が唐突に尋ねる。

「お前、どうやって――そうした?」

拓海は一瞬きょとんとした。

だがすぐに意味を察し、可笑しそうに聞き返す。

「何だ。

恋敵の俺に、コツでも聞く気か?」

智也は、拓海の得意げな顔が気に入らない。

表情を冷たくして言った。

「違う。何となく聞いただけだ」

そう言って背を向け、車へ戻ろうとする。

だがそのとき、背後から拓海が呼び止めた
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