日⃞本⃞の⃞芸⃞能⃞界⃞が⃞侑⃞さ⃞ん⃞を⃞捨⃞て⃞る⃞な⃞ら⃞、⃞侑⃞さ⃞ん⃞が⃞日⃞本⃞の⃞芸⃞能⃞界⃞を⃞捨⃞て⃞れ⃞ば⃞い⃞い⃞。⃞
去年撮った殺人鬼を題材にした映画は、大ヒットを収めた。
コロナもだいぶ終息し、映画館に人も戻った。相変わらず昴生は人気俳優で、多忙な日々を送っている。
実はあの会見の後、あれよりすごい騒動が起こった。 発端はあの浅井まりかと、あの時昴生を追っていた不気味な記者から。まりかはゴシップ週刊誌の記者であるその男に、昴生がストーカーだという虚偽内容を売っていたのだ。
写真や音声は全て合成。
昴生にふられた腹いせにやったとつぶやく音声がネットに晒され、拡散された。その事により昴生は無実だと言う擁護派が一気に盛り上がり、また芸能トップニュースに。
結局裁判があり、浅井まりかは今度こそ本当に芸能界から姿を消した。
一体誰が浅井まりかを尾行し、音声まで録音したのか分からない。ちなみに八重樫の方も———。
私を不正解雇しようとした事がネットに晒されて会社は叩かれ、大打撃を受けた。
それに。
「侑さんを辞めさせるなら、俺も辞めます。
俺の大切な侑さんにこんな扱いをする会社は、俺には必要ないんで。 違約金?払いますよ。 人気俳優には、大した額じゃないですよね。」「昴生、待ってくれ……!!
今お前にまで辞められたら、事務所は!!」八重樫がみっともなく泣いて昴生に縋ったけど、昴生は冷たく突き離した。
そんな騒動がやっと終息して———。
「侑さん。映画すごく良かったよ。」私達は、今日も一緒にいる。
あのマンションに帰るとすでに昴生がいて、米本さんもいた。
それに佐久間さんに、鳥飼さんまで。 私が家に入るなり、3人はクラッカーを皆酔っ払って、リビングで眠ってる。 私と昴生はほろ酔い気分で、ベランダに出た。 夜風が気持ち良い。私が外に出ると昴生はすぐに私に上着をかけてくれた。 「侑さん。ずっと言おうと思ってたんだけど」 「どうしたの?改まって。」 なぜか緊張していそうな昴生の手を取る。 いつだってこの手は温かい。 そう思って逞しい手を眺めていたら、逆に手を取り上げられて、指に何かがスッとはまった。 キラキラと輝く、シルバーの指輪だった。 多分いくつものダイヤが付いてる。 私は驚き、すぐに昴生を見上げた。 黒髪が風に揺れ、昴生の綺麗な瞳が輝いている。 「昴生、これって………」 「——————侑さん。 俺に一生、飼われるって約束してくれたよね?」 「言ったね…………」 「それなら、俺と結婚しないとだよね?」 「まさか、それってプロポーズ?」 何とも大胆で。昴生らしい。 「私、年上だよ?売れない女優だし。 今はあれでも……この先仕事無くなったらどうするの?」 「大丈夫だよ。社長の俺がそんな事させないし。 それに、もし侑さんの仕事が無くなったとしても。 それはそれで構わないよ。 その時は侑さんは、ただひたすら3食昼寝をして、ブクブク太って、どうしようもなくなれば良いいんだから。」 ……それ、他の人が聞いたら絶対いじられてるって思うだろうね。 「醜い私でも愛せると?」 「当たり前でしょ。 だってどんな侑さんも、俺が愛する侑さんなのに変わりはないんだから!」 そう言って昴生は嬉しそうに笑う。もう返事を聞いたみたいに。本当に子供みたいに。 「私を一
私達があの後どうなったかと言うと。 実は八重樫が私を追い出したくて、嫌がらせや、業界に残れないように妨害工作を働いていた事が発覚し………何とか昴生と引き離したかったんだろう。 だけど、そんな時に昴生が言った。 「侑さん。芸能界が侑さんを捨てるなら、侑さんが芸能界を捨てればいい。」 「それって、どう言う………」 「俺、あの事務所を侑さんと一緒に辞める。 それで。 新しく事務所を作ろうと思うんだ。」 またいつものように昴生が、勝ち誇ったように笑った。相変わらず綺麗な顔で。 誰も昴生に敵う人なんていない、そう実感せずにはいられなかった。 「侑ちゃんがあの時、弟をブシャーって!」 「あははは、米本さん〜!分かりますよ、すごい迫真の演技でしたよね! 侑さんの殺意がもう何とも」 お酒が進み、すっかり出来上がってきた米本さんと鳥飼さんが盛り上がっている。 「こら〜!鳥飼。お前酔いすぎ。」 「何ですかー、佐久間さん?そう言う佐久間さんこそ、侑さんの演技見て泣いてたくせに」 「わ、バカ、鳥飼〜」 実はあの後、事務所を辞めた昴生が本当に芸能プロダクションを設立した。 小規模な会社だったけれど、昴生が社長というのは案外宣伝効果が絶大で。 しかもそこで私も女優として在籍してる。 さらには、昴生のマネージャーである佐久間さんと、私のマネージャーの鳥飼さんまで引き抜いてしまったのだ。 何だかんだありながらも、私達は充実した日々を送っている。 「皆、本当にありがとう。」 改まって私が頭を下げると。 昴生が真っ先に私に笑いかけ、言った。 「お礼なんていいよ。 皆侑さんの演技が好きで、侑さん自身が好きでこうしてるだけなんだから。ね。」 「そうですよ〜、侑
日⃞本⃞の⃞芸⃞能⃞界⃞が⃞侑⃞さ⃞ん⃞を⃞捨⃞て⃞る⃞な⃞ら⃞、⃞侑⃞さ⃞ん⃞が⃞日⃞本⃞の⃞芸⃞能⃞界⃞を⃞捨⃞て⃞れ⃞ば⃞い⃞い⃞。⃞ 去年撮った殺人鬼を題材にした映画は、大ヒットを収めた。 コロナもだいぶ終息し、映画館に人も戻った。 相変わらず昴生は人気俳優で、多忙な日々を送っている。 実はあの会見の後、あれよりすごい騒動が起こった。 発端はあの浅井まりかと、あの時昴生を追っていた不気味な記者から。 まりかはゴシップ週刊誌の記者であるその男に、昴生がストーカーだという虚偽内容を売っていたのだ。 写真や音声は全て合成。 昴生にふられた腹いせにやったとつぶやく音声がネットに晒され、拡散された。 その事により昴生は無実だと言う擁護派が一気に盛り上がり、また芸能トップニュースに。 結局裁判があり、浅井まりかは今度こそ本当に芸能界から姿を消した。 一体誰が浅井まりかを尾行し、音声まで録音したのか分からない。 ちなみに八重樫の方も———。 私を不正解雇しようとした事がネットに晒されて会社は叩かれ、大打撃を受けた。 それに。 「侑さんを辞めさせるなら、俺も辞めます。 俺の大切な侑さんにこんな扱いをする会社は、俺には必要ないんで。 違約金?払いますよ。 人気俳優には、大した額じゃないですよね。」 「昴生、待ってくれ……!! 今お前にまで辞められたら、事務所は!!」 八重樫がみっともなく泣いて昴生に縋ったけど、昴生は冷たく突き離した。 そんな騒動がやっと終息して———。 「侑さん。映画すごく良かったよ。」 私達は、今日も一緒にいる。 あのマンションに帰るとすでに昴生がいて、米本さんもいた。 それに佐久間さんに、鳥飼さんまで。 私が家に入るなり、3人はクラッカーを
そう思って俺は芽衣子に気づかれないよう、こっそり侑に連絡した。 久しぶりに侑の住むマンションで、侑に会えて本当に嬉しかった。 家の中は以前よりもあまり物が無かったけど。 だけど侑の顔は少しふっくらして、いつもより健康そうに見えた。 思い切ってよりを戻したいと伝えたけど、侑はハッキリ拒否した。 「私は隣の部屋にいるから……出て行きたかったら勝手に出て行って。」 侑。侑。 お願いだよ。俺を見てよ、もう一度。 苦しかったから別れようとしたって事を分かってよ。 侑を幸せにするのは俺だったのに。 幸せ………………なんだな、侑。 俺がいなくても侑はもう、寂しくないんだな。 あの時教室で寂しそうにしていた侑も、近頃は俺と会いながらも寂しそうにしていた侑も…… もうどこにもいないんだな。 侑が俺の事を愛してくれていて。 俺が侑の事を愛していたのなら、それだけでよかったはずなのに。 どうして俺は侑を手放す事を選んだんだろう。 その後も、もう一度だけ侑に会いたくてマンションに来ていた。 でも結局ためらって。 もう侑には会えなかった。 あの日言われた事が胸に突き刺さって、会えなかったんだ……………。 家に帰ると、今日は来ないと言っていたはずの芽衣子が合鍵で部屋に上がり込んでいた。 「……芽衣子?」 芽衣子は部屋を薄暗くしたままソファに座っていた。 「小野寺くん。今日、常盤侑に会いに行ったでしょ。」 そう言われてドキッと心臓が脈打った。 この時芽衣子は、いつもよりどこかおかしかった。 顔を上げると、急に早口になった。
食べたものをそのままにしたり、時には—— 「片付けるの面倒くさいよね。明日でいいんじゃない?」 皿洗いや片付けを嫌がり、動こうとしない。 だから全部俺がする。 いや、元々一人の時はしていたから問題はないのだろうけど。 それに半同棲に近い形だったから、いくらか食費も渡していた。 なのに、下手すればレトルト食品が続く日も。 部屋の隅にゴミが溜まり、洗濯物も山のような日も。 だらしない日は髪もボサボサのまま。 綺麗好きな侑なら…… 侑なら。 女優をしながらも、俺の健康面を気遣ってちゃんとした料理を作ってくれたのに。 掃除して、いつも部屋を綺麗にしてくれたのに。 侑自身も綺麗にしていた。 「芽衣子はどうして俺の事、好きになってくれたの?」 「私はね。小野寺くんの顔が好きだったの。 イケメンだし、仕事もできるし……」 顔……で選ばれたと言われて、正直へこんだ。 侑ならそんな事、言わなかったからだ。 『私は聖の……優しいところが好きだよ。』 その間に侑は侑で、ストーカー騒ぎがあったりした。 侑が人気俳優をストーカーだなんて。 また、何か困ってるんじゃないだろうか? もう俺が侑に出来ることはないけど……… でも結局、俺が侑を心配しているうちにそれも解決していた。 浅井まりかという女優を、侑が名誉毀損で訴えたらしい。 だけどその裏で、恋人である綿貫昴生が動いたという情報も。 そんなにも……あの綿貫昴生に愛されてるのだろうか? あの甘いマスクで、侑と一緒に過ごしているのだろうか? * 日々が平凡に過ぎていく中で、側にいるはずの芽衣子の嫌な部分が目につくよう
テレビやネットの芸能ニュースで二人の熱愛報道を見る度に、俺は胸が痛かった。 会社でも。仕事中でも。 二人の顔写真が並ぶたびに…… 常盤侑は元は俺の彼女だった。 侑は彼女だった。……彼女、だったんだ。 「よくあるよね。 その時は何の興味もなかった物が、ある日突然誰かに価値があると評価されると、急に惜しくなるっていう事が。」 ご飯を食べながら芽衣子が、意味深な事を言う。 芽衣子は少しふっくらとした体型だったけど、それがまた魅力的だった。 だけど俺はその時もまだ上の空で……… 「だけど。 一度手放してしまったものは、二度と自分の手には戻らないよね。」 芽衣子がなんて言ってるのか、もう聞こえてなかった。 ぼんやりする俺の側にぴたりとくっついて、芽衣子が顔を赤らめながら言う。 「私達には私達に相応しい世界があるよね。」 ずっと侑の事が頭の中に浮かび続ける。 あれだけ離れたいと思っていたのに。 別れてあれだけホッとしたはずなのに。 何でこうも侑ばかりが思い浮かぶんだろう? 侑が今頃どこかで、あの人気俳優に笑いかけているのかと思うと……… 俺にしてくれたみたいに、今の芽衣子みたいにあの俳優の家に行き、手料理を作ったりしているのかと思うと。 ………………侑。 俺の事をそんなにも早く忘れてしまったのか? 今………幸せなのか? 芽衣子がベタベタするようになって、どれくらい時間が過ぎただろうか。 以前は芽衣子が作る料理が家庭的で本当に美味しいと思っていたけど、近頃はそうは思えない。 それに芽衣子はこの頃会社でもやたらベタベタしてくる