ANMELDENお昼時と言うのもあって、カフェは賑やかだった。ここでも運良く席が空いていたので、すぐに案内された。水族館のカフェであるがとてもメニューが豊富で、どれも美味しそうで目移りしてしまう。「桜ちゃん、メニュー決まった?」「そうですね...ボンゴレパスタにしようかと。」「OK。食後の飲み物はどうする?」「レモンスカッシュでお願いします。」「じゃあ、店員さん呼ぶね。」新はそう言うと「すみませーん」と店員を呼んだ。そして、新はシーフードパスタとコーヒー、若葉はボンゴレパスタとレモンスカッシュを注文した。料理が来るまでの間、2人は色々なことを話した。「桜ちゃん、学校生活はどんな感じ?桜ヶ丘って進学校だから勉強大変でしょう。」「そうですね。でも勉強は好きですし楽しいです。新君はどうですか?」「オレ?ウチは男子校だし授業中も騒がしいよ(笑)あんまりマジメに授業受けてるヤツはいないかなぁ...。まぁ、オレは少しだけど授業聞いてるかな?」「新君はしっかりしてますよね。」「そうでもないよ?勉強だって幼馴染みの影響だしね。」「え?」新の言葉に若葉は驚いた。まさか自分のことか?と疑問を持った。「その幼馴染みってのが桜ちゃんに似てるんだよね。」「...私に?」「うん。見た感じも、雰囲気もなんだか似てるんだ。...だから一緒にいて楽しいし、心地良い。...まぁ、そいつとは疎遠になっちゃったんだけどね。」「...そうなんですね。」心臓の音がバクバクと言ってうるさい。期待してしまう。新と同じ気持ちだと。若葉はそれがバレないように平静を保つのに精一杯になってしまう。笑顔は引き攣ってないか。声は震えてないか。そんな事を思いながら新と会話していると出来上がった料理が運ばれてきた。温かそうな湯気がのぼり、美味しそうな匂いがする。若葉は緊張しているせいかあまり味がよくわからないし、上手く飲み込めない。それでも新に気づかれまいと何もない様を装っている。「うん。ここのパスタ美味しいね。」「...そうですね。サッパリした味付けで食べやすいです。」「食事終わったら残りの展示見て、その後どこか行く?まだまだ明るいし、もう少し桜ちゃんと一緒にいたいんだけど...時間大丈夫?」「大丈夫ですよ。もしよかったら、近くのショッピングモールにでも行きますか?」「あ、いいね!いろんなお店入
「土曜なだけあって結構人多ね。はぐれないように手、離さないでね?」新に手を引かれながら水族館へと入っていくと、水族館独特の暗がりの空間が広がっている。新の言った通り、多くの人がこの水族館に訪れているようで、家族連れやともだちど、そしてかっふ。傍から見たら若葉と新の2人もカップルに見えるのだろう。時折こちらを見ながら「見て。あそこに美男美女カップルがいる!」と注目を集めている。「桜ちゃん可愛いから結構注目されてるね。」「そんな事は...。新君がカッコイイから...」「ハハッ!ありがと。」そんなやり取りをしていると、この水族館名物のクラゲの大水槽へとやって来た。若葉は子供の頃からこの場所が好きだった。「わぁ...。やっぱりこのクラゲの水槽...キレイ...」「...桜ちゃんココ好きなの?」「はい。子供の頃からこの水族館に来ると必ず見に来るんです。」「そうなんだ...。オレも好きだよ、この水槽。」2人は水槽の前で歩を止めクラゲ達を眺める。若葉が目を輝かせながら見ていると、不意に視線を感じた。「?新君?どうかしました...か...」若葉が新に尋ねると、その言葉を遮るように新は若葉の口にキスをした。「...え...?」「!ゴメン!つい...。イヤ、だったよね。」「い、いえ...」なんでた?なんでキスをしてきたんだ?若葉は今のキスで頭がパンクしそうになる。若葉は新が分からなくなってきてしまった。「あ、もうじきイルカショー始まるよ。見に行く?」「そ、そうですね!行きましょう。」2人の間に少しギクシャクした空気が流れたが、それも一瞬で新は何事も無かったかのように若葉の手を引き、イルカショーの会場へと足を向けた。会場には人で溢れかえっていて、なんとか空いていた2人分の席へと座った。「良かった。席空いててラッキーだったね。」「イルカショー、人気ですからね。」そしてショーが始まるまで会話を楽しんでいると、ショーの時となり、会場は活気で溢れかえった。イルカ達はジャンプしたり、インストラクターを乗せながら泳いだり、輪くぐりしたりと華麗な技を披露して観客を楽しませた。若葉と新も夢中になり楽しんだ。そうしてショーが終了すると、観客達は皆会場を後にしていった。「時間も丁度いいから、カフェでお昼にでもしようか。」「そうですね。そうしましょうか。イルカ
若葉が家を出て駅前へと着いたのは9時50分。新はまだ来ていないようであった。スマホに目をやると、新からショートメッセージが来ていた。内容は「少し遅れるかもしれない」と言うものだった。若葉はそれに「大丈夫です。気を付けてきてきてください。」と返信した。時刻が10時10分になろうとした時、後ろから肩をポンと叩かれた。新かと思い振り返ったが、そこにいたのは見知らぬ男性2人組。「お嬢さん可愛いね。待ち合わせ?」「...そうですけど。」「もう大分待ってない?良かったらオレ達とお茶しようよ。」「いえ。結構です。」「いいじゃん。減るもんじゃないし行こーよ。」そういうと男性の1人が腕を掴んできた。「!離してください!」「もー、ガード固いなぁ。いいじゃん。お茶くらい付き合ってよ。」「嫌です!」若葉がちょっと泣きそうになったその時だった。若葉の腕を掴んでいた手を掴み返す手があった。強い力が込められていたらしく、男性は「いてぇ!!何すんだ!!」と若葉の腕から手を離すとキレた。目をやるとそこには息をきらした新の姿があった。「彼女はオレのツレです。汚い手でさわるのはやめてくれませんか?」新はそう言うと男性2人組をら睨んだ。その睨みに2人組は怯み、「い、行こうぜ。」と言って去って行った。「ごめん!桜ちゃん!オレが遅刻したばっかりに怖い思いさせてしまって...!」「いえ!大丈夫ですよ?新君、助けてくれたじゃないですか。...王子様みたいでかっこよかったですよ?ありがとうございました。」若葉が笑みを浮かべそう言うと、新は照れくさそうに「ありがとう」と言った。「...桜ちゃんそのワンピース似合ってるね。凄く可愛い。」「!あ、ありがとうございます...。友達とショップのお姉さんにデートだからと色々とえらんでもらって...。」「...それって、オレのためって調子に乗っていいヤツ?」「は、ハイ...。」若葉と新は2人して顔を赤らめて固まり、沈黙してしまった。それもほんの数秒で、新はハッとすると若葉に声をかけた。「す、水族館開いちゃってるね!行こうか!」「そ、そうですね!行きましょう!」新はそう言うと若葉の手を握ってきた。若葉はそれにビックリすると、新は「デートだから手、繋がせて?」といたずらっ子のような笑みで言ってきた。若葉は心の中で「ズルすぎるだろ」と言い
平日の学校生活をやりこなし、いよいよ決戦の土曜日となった。若葉は8時にセットしたアラームより前に目を覚まし、アラームを解除すると、洗面所へ行き歯磨きと洗顔を済ませリビングへ行く。すると丁度よく朝食の準備を終えた母とソファで新聞を読む父に「おはよう。」と声をかける。「おはよう、若葉。よく眠れた?」「母さんから聞いたぞ?新君とデートだって?」「...母さん...」「あら。いいじゃない。お父さんもあなたと新君のこと気にかけていたのよ?」そんな話をしながら家族団欒で朝食をとる。半熟卵の目玉焼きに箸を入れ、黄身がトロリと崩れる。白身でその黄身を絡め取りながら口へと運び次いでトーストをサクリと食べる。この朝食をとるのが毎朝の至福のひとときである。それから牛乳を一気に飲み干すと「ご馳走様」と言い食器を流しへと持っていく。「洗うのはお母さんがやっておくから、若葉は仕度をしてきちゃいなさい。初デートは待ち合わせよりも早く行くのがいいのよ?」「そうだぞ?遅刻なんて以ての外だからな。」「わかった、わかったから。」若葉は自室へと戻り、まずはメイクへと取り掛かる。市川さんと増田さんからUVカットもする下地を強く勧められたためそれを顔全体に塗っていく。なんでも、この時期でも紫外線は大敵とのことで。そして地肌に近い色のファンデーションを塗り、淡い色のピンクのアイシャドウを塗る。そして控えめにアイラインを引き、ビューラーで上げたまつ毛にマスカラを塗る。チークで頬に血色を持たせた後は最後にリップグロスを塗り完成。練習したお陰もあり、満足のいく出来上がりとなった。そして部屋着からこの間、今日のために買った水色の花柄ワンピースへと着替えロングヘアのウィッグを被る。一通りの仕度を終え持ち物を準備すると時計を見る。時刻は9時15分。今から家を出れば十分待ち合わせ時間には間に合う。家を出る前に、母に出来上がりを見てもらうためにリビングへと向かう。「か、かあ...」「あら、若葉もう行くの...!!あらあら、まぁまぁ!可愛いわよ若葉!見てお父さん!若葉ったら本っ当に女の子みたいでしょ!」「...本当に若葉なのか...?我が息子ながら信じられん...」「...変なところない...かな...?」若葉はチークの乗った頬を更に紅潮させ両親に問いかけると、母は力強く、父は呆然としながら「大丈夫
女子2人とジュースを飲みながら駄弁っていると、ガチャリと玄関が開く音がして「ただいまぁ」と言う若葉の母の声が聞こえてきた。そしてトントンと階段を登る音がしてくる。若葉は女装をしたままだったため、マズいと思ったが時既に遅し。若葉の部屋のドアが開かれてしまった。「ただいま、若葉。お友達でもきて...」母は部屋に入って来るなり若葉の姿を見て固まった。そして、わなわなと震えたかと思ったら、つかつかと若葉に歩み寄り「若葉ちゃん!」と抱き着いてきた。「か、母さん?!」「もぅ!何よその格好!いつにも増して可愛すぎるわ!!流石ウチの子!お母さん、娘も欲しかったのよねー!あら、あなた達が若葉の事を娘にしてくれたの?ありがとう!」「母さんテンション上がりすぎ。2人が引いちゃ...」「ですよね!佐倉君、ホント女の子にしか見えないくらい可愛くなっちゃうんですよ!」「学園祭でもスゴい評判で!!」母と女子2人が若葉そっちのけで盛り上がっていると、若葉はそのマシンガントークについていけず、ポツーンとなってしまった。「学園祭行きたかったのだけど、この子に来るなって言われてたのよねぇ。まさかその理由が女装しているからだとは...」「男なら誰でも実の親に女装姿は見られたくないと思うよ。」若葉はそう言うと、プイッと顔を背けた。「でも、何でまた女装?お母さんは嬉しいけど、もう行事じゃ無いんでしょう?」「...それは...」若葉が言いにくそうにしていると、市川さんが「実はー...」と学園祭での出来事を話してしまった。母は「まぁまぁ!」と言うと、口に手を当て頬を紅潮させながら、女子高生に負けず劣らずのテンションで若葉に詰め寄ってきた。「ナンパされるなんてスゴいじゃない!しかもそれを助けてくれた男の子とデートですって?!どんな男の子なの?イケメン??」母に相手の事を詰め寄られると、若葉は言いにくそうに「それが...」と言葉を紡いだ。「...それが相手は新なんだ。」「え...新君...?」母は若葉と新が疎遠になっていたのを知っているので驚いた。「そう。新君か...。若葉だとは気づいてなくても仲直りのキッカケにはなるだろうし、いい機会かもよ?」「うん...」母にも背中を押され、若葉は「頑張らないとなぁ」と思い、気合いをいれるのであった。
全ての買い物が終わり、市川さんと増田さんを連れ、メイクの練習をするため若葉は家へと帰ってきた。若葉の家族は若葉を含め、共働きの両親の3人家族なので家族に鉢合わせる事はあまりない。若葉は2人を自室へと案内すると、キッチンへ行きジュースを持って2人の元へと行った。自室の扉を開けると、2人が家探しするかのように若葉の部屋を見て回っていた。「ちょっと...2人とも何してるの...」「いやぁ、男の子の部屋初めて来たから興味湧いちゃって(笑)」「この写真の男の子佐倉君?メチャかわなんだけど!今より更に女の子っぽい!」「やめてよぉ...」2人はキャッキャとはしゃいでいる。一通り遊び終えると、2人はジュースを飲み落ち着いて、「さてと」と言い、自分達のカバンからメイク道具を取り出した。若葉もそれにならって今日買ったプチプラのメイク用品の入った袋をテーブルの上に置いた。そして、それらを使い女子2人からのメイク教室が始まった。下地がー、アイシャドウをー、などと学園祭でやって貰った方法と同じ工程でメイクをしていく。今回は自分で行うので若葉も真剣になって教わっていた。そうしてメイクをし終わると、これまた買ってきたワンピースを着てみる。ウィッグは無いが、着替えた若葉の姿を見た2人は目を輝かせ頬を紅潮させた。「佐倉君可愛すぎ!」「ウィッグ無しでも全然大丈夫だよ!」2人から大絶賛された若葉は恥ずかしくなり、モジモジしていると「その仕草もいい!」と何故か喜ばれた。「これでウィッグ着けたら、誰も男の子だなんて気づかないよ!」「ホントにソレ!もう完璧な"桜ちゃん"だよ!」「2人のお陰だよ。...ありがと。」若葉からお礼を言われた2人は心にズキューンと感じたトキメキを隠すことなく悶えていた。「佐倉君...。反則だよ、その可愛さは...」「桜ちゃんのためなら何でもするよ!そうだ!今度のデートが成功したら、これからのコーディネートは是非私達に任せて!」「...成功するかな...。でも成功したら正体を隠すのは良くないとも思うんだよね...。」若葉の言葉に「それもそうか...」と市川さんが言うと、増田さんが「でも!」と言葉を紡いだ。「すぐ付き合うとかは無いかもしれないし、桜ちゃんとデートだけ続けたいだけかもしれないし!」「それもそうか」と若葉は納得すると、「これからよろしくお
13時を回る頃、若葉はクラス委員長に客引きへと行くように命じられた。衣装係の女子と共に着替え教室へと入り、準備段階から予定していたピンクのゴスロリ衣装へと着替える。着替えが終わり軽くメイク直しをしていると、先に客引きをしていた執事コスの男子生徒が入ってきた。「おつー。おう、桜ちゃんの出番ですか。マジ可愛いな(笑)この格好だとお姫様みたいでええやん!」「...今日だけはありがとうと言っておく。」「ホントは嬉しいくせにぃ。そだ、1枚写真撮ろーぜ!」「1枚につき1万な。」「高ぇ(笑)」男子生徒はそう言うとメイクをしていた女子生徒にスマホを渡し、2人のツーショットを撮ると、男子生徒は「サ
時刻は午前10時。学園祭"桜ヶ丘祭"の開始時刻である。桜ヶ丘高校の校舎には、老若男女様々な人々が集まってきている。校舎に入るとそこら中から生徒達の呼び声が溢れかえる。そんな中、早くも1-3は注目の的となっていた。1-3はコスプレ喫茶。男女様々なコスプレで接客をしている中、やはり人々の視線を引き付けたのはメイドのコスプレをした若葉であった。「いらっしゃいませ、お客様。ご注文はいかがなさいますか?」若葉が柔らかい笑みを浮かべ接客すると、女性も男性も顔を赤らめる。そして大半のお客はこう言うのだ。「あの!写真一緒にお願いできますか?!」普段の若葉であれば「こんな黒歴史、写真に残したくない!」
天気は快晴。見事なまでの学園祭日和。そんな天気とは裏腹で、若葉のテンションはどんよりと曇っていた。「...とうとう来てしまった...。せめて雨でも降って来客数減ってくれればよかったのに...。」若葉が誰にも気づかれないように本当に小さく呟いたのだが、地獄耳のクラス委員長がその呟きを聞き逃すハズがなく。「なんてことを言うの佐倉君!学園祭と言えば晴れと決まっているものよ!そして、この学園祭に来たお客さんを1-3に集客するのよ!そ・の・た・め・に!桜ちゃん!よろしくね!」「...ハァ...」クラス委員長の言葉をかわきりに、クラス中から「桜ちゃんよろしくね!」「期待してるぜ!桜ちゃん!」と
どこを見ても男、男、男。男子校とはむさ苦しく悲しい場所である。マンガの様に美人な若い女性教師が居るわけでもない。そんな中で3年間過ごすというのは、青春を送る若者には酷な話しである。授業中も落ち着きなく騒がしい中、新は回ってきたマンガの最新巻を読んでいた。すると、高校に上がってから仲良くなった斉藤が声をかけてきた。「新ぁー、お前、今月末の土曜ヒマか?」「土曜か...。なんも無いけど何?合コンでも開いてくれるん?」斉藤はこの辺りの高校に顔が広いため、よく合コンを開いたりしているのである。「いやいや。今回は合コンじゃなくて(笑)オレの中学の親友が桜ヶ丘に通ってんだけどさ。その日学園祭らしく







