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ピロトーク:不満満載なボク

작가: 相沢蒼依
last update 최신 업데이트: 2025-07-05 16:24:28

 先日いろいろあって落ち込んでいる僕の元に、友人が元気になりますようにと、たくさんのCDを送ってきてくれた。その中の一枚――。

「なになにー? 腕枕されながら耳元で甘く囁かれる、ピロトークをどうぞ?」

 プレゼントされたCDは、なにかのドラマ仕立てのものらしい、略して腕ピロトーク。

(……っていうか、最近は腕枕どころか一緒に寝た記憶が、遥か彼方の記憶なんですが)

 僕は恋愛小説家、相手は編集者の関係なので、日々すれ違うことが多い。まぁこの仕事をしてたから、偶然巡り会えたっていうのもあるんだけど――。

 付き合った当初は敬語で喋っていたのを、もっと距離を縮めるべく、ため口で話しかけてみたりと、自分なりに努力をした。ラブラブなふたり暮らしの、甘い生活を夢見ていたのに。

 これまでのことを考えつつ、送られてきたCDの取説をぼんやりと眺めた。恋愛に苦労している、僕を労ってくれた友人のチョイスに、苦笑いを浮かべてしまった。

「ヘッドホン推奨って、ここにはないし。そもそも僕ひとりだけなんだから、必要ないっと♪」

 鼻歌混じりに、オーディオへCDをセットする。他の雑音が気にならないように、いつも音楽をかけながら執筆作業をしているんだけど、面白そうなCDだったので、大音量でかけてみた。

(ここには誰もいないんだし、映画鑑賞だと思って聴けばいいや!)

 そしてノートパソコンの前に座り、ネットサーフィン。執筆の意欲が上がるまで、だらだら過ごす。言わば、アイドリング状態と表現しておこうか。

 某サイトにアクセスしたとき、スピーカーから魅惑的な艶のある男性の声が響いた。どこかで恋人同士が仲良くデートしているらしく、彼が楽しそうに恋人へ話しかけていく。

 ――さすがは声優、演技が上手いなぁ――

 音声はカレシのみで、恋人の声は一切なし。なので一人芝居なのである。声色ひとつで、その場の雰囲気を上手に作っていく演技に、すっごく感心した。

「う~ん。僕も同じように、文章でソレを表現しなきゃいけないんだもんなぁ。てか郁也さんとデートしたのって、いつだっけ?」

 一緒に暮らす前は気分転換だと、僕をよく外へと連れ出してくれた。今は連れ出してくれるどころか、かごの中の鳥になっている。そんな生活のつまらなさを、みずから再確認してしまい、深いため息をついたとき。

『なぁ、ちょっと休憩してく?』

 なぁんて甘い言葉と一緒に、吐息とリップ音が部屋の中に大音量で流れ、思わず顔がニヤけてしまった。

(イヤだと口では言っても、どこかについて行っちゃうよな。この荒んだ状況の自分なら間違いなく、喜んで休憩しちゃうよ!)

「――っていうか……こんなふうに誘われたことなかったなぁ。目が合った瞬間、僕を見る目に郁也さんの中にある欲情を感じて」

 気がついたら唇を奪われ、押し倒されてるという――貪るように奪われていくうちに、僕の官能を呼び起こして、これでもかと快感を強引に引きずり出されるんだ。

 好きとか、愛してるなんて甘い言葉が一切なく、ただ性欲を満たすだけの行為――。

「今は、それすらもなくなってしまったということは、飽きられちゃったのかな僕……」

 不規則な仕事時間をちゃっかり利用しながら、外で浮気していたりして。

 魅惑的な低音ボイスのセリフとリップ音の嵐を聴きながら、どうしてこんなふうにマイナスなことを考えなきゃならないんだろ。

『そんな可愛い顔して、お強請りかい? イかせてあげるよ』

 そうだよな。僕のこの思考が逝っちゃってるから、悶々と考えちゃうのかも。それよりも随分と湿度の高い、ディープなリップ音。どーやったら、こんな音が上手に出せるんだろ?

 郁也さんとちゅーしたのって、いつだっけ? ――ってまた、これじゃあさっきと同じじゃないか。

 軽く自己嫌悪に陥ってるときに、玄関の扉が開く音が聞こえた。

「ただいま。ちゃんと書いてるのか?」

 その声に振り返ると、郁也さんがリビングに現れた。長い前髪をなびかせて家に入ってくる姿は、どこぞのモデルみたい。そして編集者らしい台詞に、チッと舌打ちをしてしまう、可愛げのない自分。

(ぜーんぜん仕事が手につかない状態です。なぜならばそれは、僕を構ってくれないからだよ)

 そう言ったところで、ふふんと鼻で笑ってあしらわれるのが、容易に目に浮かぶのだけれど。

「随分早いお帰りだね。取立ては無事に終わったんだ?」

 僕から見たら編集者って、借金の取立てと同じように見えてしまう。期日をキッチリと守ればいいのがわかってるけど毎回、そんなにうまいことはいかないものだし……生みの苦しみを、少しくらいは理解してほしい。

「俺の担当する作家は基本、納期を守る人が多いからな」

 お前以外は――と目がありありと語っていた。

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