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30:恋人たちの休日

مؤلف: けもこ
last update تاريخ النشر: 2026-07-22 22:55:35

シャワーを浴びながら、まだ、中に廉がいるようで、無意識に下腹をさすっていると、後ろから廉に抱きしめられた。さすっている手の上から指を絡められ、足の間を辿り、自分の指で襞に触れさせられる。まだ、敏感なままの体がさっきの興奮を思い出してしまう。

「さっきまで、俺がここにいたよ」

囁きながら、綾香の指を使って、ゆるゆると襞をさする。もたれるように廉の背中に体を沿わせて頬を上気させる。シャワーに打たれながら再び快感の波を漂った。

ベッドに戻ってからも、服の上から、あちこち触り合って、口づけを交わし合った。そして、自然に眠りに落ちていた。

目が覚めたのは、随分と日が高くなってからだった。時間を見ると、もう昼に近い。横で廉が気持ちよさそうに眠っている。寝乱れた髪と薄く開いた口。幼い雰囲気が、縁側で眠っていた姿を思い出す。あの時のようにそっと唇を重ね、静かにベッドから下りた。忙しい廉には、もう少し休んでてほしい。

着替えてコーヒーを淹れ、買い出しに行く食材のメモを作る。週末の楽しみは常備菜作りだ。この間のバジルソースは大成功だった。今の旬で食べたいものは、カブかなぁ。常備菜で酢漬けを作って、他はカブのポタージュとか朝のお腹に優しいかも‥‥。カウンターで頬杖をついてメモを書いていると、用紙に影が落ちて、首筋に寝起きの温かい頬が触れる。

「何を書いてるの?」

覗き込むようにして廉が顎を肩に乗せる。

「お買い物リスト。いつも週末の夜は、常備菜を作ることにしてて。何がいいかなって」

「買い物に出るなら、車、出そうか」

「え、いいの?」

近くのスーパーで食材を買うのも、量を加減しないと重くて持って帰るのが大変なのだ。米や調味料などの乾物はネットも利用するのだが、生鮮品はそうもいかないし、乳製品は、少し買い足しただけでかなり重くなる。

「荷物を置くのに部屋に戻りたかったし、車を持ってくるよ」

「そんな、すごく、助かって嬉しすぎる」

目を見開いて喜びに鼻を膨らましている綾香の顔を見て、廉が吹き出す。

「なんだ、こんなことで喜んでくれるなら、いくらでも綾香の足になるんだけどな」

軽く唇に口づけを落すと、昨夜着ていたスーツに着替え始めた。

「タクシー、呼ぼうか?」

「いや、大丈夫だ」

出来る人は本当に仕事が早い。いつの間にタクシーの手配をしたのだろうか。

「どのくらいかかりそう? 下で待っておくけど」

準備が終わった廉がスーツケースを引いて玄関へ向かう。

「そうだな、家に戻って着替えをしたいから、20分くらいで戻るよ」

そんなに慌てなくてもいいのに。

「もう、タクシーが来てるの? さすが、段取りがいいのね」

そう言って、玄関先までついて行くと、振り向いて一瞬、ためらったように黙った後、廉が口を開いた。

「いや、歩いて行ける距離だから」

一瞬、綾香の脳の処理速度がグンと落ちて、その後ようやく言葉が入ってきた。

「そんな近くに住んでたの? この1年ずっと?」

廉の耳が少し赤らんだように見える。恥ずかしがってる?

「そうだよ。とはいえ、生活時間帯が合わないし、俺は送迎車で出勤してたから、道でバッタリ会うってことにはならなかった」

表情を伺いながら、もしかしたら、自分の知らない廉がまだあるのかも知れない、ふっと、綾香はそう感じた。

「あ、じゃぁ、ちょっと待って。わざわざ車を持って来てもらうのは申し訳ないから、一緒に行っていい? 廉が着替えてる間、駐車場で待つから」

「駐車場じゃなくて部屋に上がって待ってて」

スーツケースを引きながら、家の近所を廉と歩く。休日の昼なので、人通りは少ない。寒いけれど、天気が良いのでいい散歩になる。

「ねぇ、もしかして、廉は私の部屋がどこなのか知ってたの?」

そういえば、車で送ってもらった時も、道案内などしなかったことに気づいた。

「‥‥知ってたよ」

「孝くんに教えてもらったの?」

「まぁ、そうかな。孝也とはよく綾香の話をしてたから」

駅と反対の方向に並んで歩くこと5分。綾香の部屋からも見えるタワーマンションについた。

「あ、ここか。このマンション、実は見に来たことあるの。孝くんが勧めてくれて、すごく綺麗でいいよって。でも、お家賃がかなり予算オーバーだったのと1人で住むには部屋数が多かったから、お父さんが勧めてくれた今の部屋にしたのよね。ここに住むことにしてたら、廉と同じマンションになるはずだったのに、もったいないことしたな」

そう言って笑いながら、顔を見上げると、廉が何かを言おうと口を開きかけて、いったん閉じた。そして、そうだね、と微笑んだ。

その微妙な反応がちょっとひっかかる。一緒のマンションだったら良かった、なんて、少し重たかったのだろうか。

廉の後ろについて玄関を入りながら、小さく、お邪魔します、と声をかける。留守にしていた部屋は、空気が冷たくて、生活感が感じられなかった。

「部屋の中が冷えてるな。エアコンが効くのに時間がかかるから、コートは脱がないでそのまま待ってて」

廉はそういうと奥の部屋へ入って行った。タイル床のリビングダイニングにグレーのソファとガラステーブル。おしゃれでシンプルなコーディネイトだが生活感はゼロ。まぁ、これだけ忙しいと、ほとんど家にいないのだから仕方ない。普段、休みの日はどう過ごしているんだろう?

キョロキョロと周りを見回すと、キッチンのカウンターの上にある写真が目に付く。大学時代の写真には、孝也とエリカの姿があった。昔、伊豆へ行った時の写真もある。浜辺でスイカ割りをして、水着のまま3人でびちゃびちゃになってスイカを食べた。スイカを食べる自分の後ろで、廉と孝也が変な顔で口いっぱいにスイカを頬張っている。その時を思い出して、ふっと笑いが零れた。

足の裏を切った自分を、移動の度に廉がお姫さま抱っこをしてくれた。恥ずかしかったけど、なんだか王子さまに大事にされるお姫さまになった気分で、しばらくは寝る時にそういうファンタジーを妄想して布団の中で悶えていたっけ。どの妄想も最後は王子とのキスがクライマックスだったから、声を出さずに『キャー』ってなってたな。

「懐かしい写真だろ?」

セーターとスラックスに着替えた廉が、写真を手にした綾香のところへ歩み寄る。

「うん。思い出してニヤニヤしちゃった」

「何を思い出したの?」

「ケガして得したこと。覚えてる? 足の裏を切っちゃって、廉がお姫さま抱っこで移動を手伝ってくれたの。ふふふ、幸せすぎて、もうずーっとケガが治らなくてもいいのにって思ってた」

写真を見ながら、思い出し笑いが止まらない。ふっと写真立てを取り上げられて、振り向かされる。

「綾香、それ以上、俺を喜ばせたら、買い物に行けなくなるから、そこまでにしておいて」

そういうと、自分の興奮をわからせるように体を押し付けて、唇を塞ぐ。口の中のあちこちを熱い舌で探られると、すぐに体が応えてしまう。唇が離れた時には、じぶんがいかに物欲しげで蕩けそうな顔をしているのかが想像できた。

ギュッと抱きしめられて、胸に鼻を押し付けて廉の匂いを嗅いでいると、頭上から大きなため息が聞こえる。

「綾香、買い物に行かないと」

グイグイと押し付けられる昂ぶりが言葉を裏切っていて、まるで、自分自身に言い聞かせるように呟いている廉が可愛い。

「行こうと思ってるお店の閉店時間は夕方の7時なの。それまでに連れて行ってくれる?」

顔を上げて、小首をかしげて笑みを浮かべる。再び唇を塞がれ、舌を絡ませて口中を蹂躙された。

「間に合うように、善処する」

廉はそう言うと、お姫さま抱っこで綾香を抱え寝室へと運んだ。

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