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ep01.理不尽なる追放宣告

مؤلف: 理乃碧王
last update تاريخ النشر: 2026-04-10 20:52:06

 ――それにしても、体が鉛のように重い。

 無理矢理着せられた『呪いの装備』がもたらす悍ましい倦怠感が、俺の全身を容赦なく蝕んでいた。

 引きずるようにして前に進み、息も絶え絶えに迷宮の森の最深部へと辿り着いた俺の視界に飛び込んできたのは、まさに死闘のクライマックスだった。

『――グオオオオォォォォォォォッ!』

 森の木々を震わせ、青の暴君が咆哮を上げる。

 サファイアのように煌びやかな青い鱗、深い瑠璃色の瞳と天を突く角……。

 凶暴極まりないモンスターだと聞いてはいたが、絶望的なまでのその美しさに俺は一瞬だけ息を呑んだ。

「決めるぜ。――『雷鳴の一閃アラメイ・スラッシュ』ッ!」

 勇者イグナスが剣を上段に構え、魔法剣を励起させる。

 勇者の十八番とも呼べる、雷属性の剣技だ。

 眩い閃光を纏った剣が横一文字に薙ぎ払われると、青の暴君の強固な鱗が紙切れのように切り裂かれた。

『――ギャアアアァァァァァッ!』

 断ち切られた皮膚から、大量の鮮血が宙を舞う。

 それはさながら、巨大な一輪の青い薔薇が散りゆくような光景だった。

 断末魔を響かせ、巨大な竜が地に伏す。

 ――これにて、迷宮の森における討伐クエストは終了だ。

「ふぅ……これでクエスト達成だな。あとは村に戻って報告するだけだ」

「お疲れ様、イグナス!」

 激戦を終え、傷だらけになったイグナスのもとへ、僧侶のミラが駆け寄る。

 彼女が回復魔法『リカバル』を唱えると、温かな光が勇者の体を包み込み、瞬く間に傷跡を癒していった。

「流石はミラの回復魔法だ。助かったよ」

「えへへ……イグナスのためだもん」

 イグナスに頭を撫でられ、ミラは嬉しそうに頬を赤らめている。本当にあいつのことが好きなのだろう。

 そんな露骨な惚気を見せつけられ、俺の胸の内に虚しさが広がっていく。

 死に物狂いで合流したというのに、結局、俺は何の役にも立てず、ただ彼らの栄光を見守ることしかできなかったのだから。

「青の暴君、か。それにしても――」

 魔法使いのジルが、沈黙したドラゴンの死骸を見下ろした後、ふと振り返って俺の『カタストハンマー』に視線を落とした。

 その眼差しに得体の知れないものを感じ、俺は思わず尋ねる。

「……どうした?」

「いや……何でもない」

 短くそう誤魔化すと、ジルは踵を返し、イグナスたちの輪の中へと戻っていった。

***

 青の暴君を討伐した俺たちは村へと凱旋し、盛大な祝勝会が開かれていた。

「勇者様、本当にありがとうございました! これで村は救われます!」

「あの憎きドラゴンに、何人もの仲間が殺されましたからな……。なんとお礼を申し上げたらよいか」

 村長をはじめとする村人たちが、涙ながらに感謝の言葉を紡ぐ。

 テーブルには豪勢な料理が所狭しと並べられ、ジョッキにはたっぷりとエールが注がれていた。

「ハハッ! いいってことよ。これくらい、俺たち勇者パーティにかかれば朝飯前さ!」

 イグナスは上機嫌で酒を呷り、英雄としての称賛をほしいままにしている。

 片や、俺はというと――。

「ところでイグナス様……あちらの、ひどく暗そうなお方は……?」

「ああ、あいつか。一応、俺の『仲間みたいなもん』だな」

 村人が恐る恐る指差した先には、俺がいた。

 俺は今、呪われた装備のせいで、禍々しい瘴気のような雰囲気を垂れ流している。

 下手をすれば、魔王軍の幹部か刺客としか思われないような、狂気の魔剣士といった出で立ちだ。

 周囲からの怯えた視線にいたたまれなくなった俺は、宴の輪から離れ、部屋の隅でひっそりと一人酒を煽っていた。

「……それにしても、体が重い」

 装備しているのは、呪いの武具の一つ『ブラッドアーマー』。

 こいつは防御力が跳ね上がる代償として、素早さが致命的なまでに低下する。鉛の鎧を着て歩いているようなものだ。

 だが、呪われている以上、自力で脱ぐことはできない。早く教会の設備が整った街へ行き、解呪してもらわなければ。

「お兄さん、一人で寂しそうですね」

 ふと、鈴を転がすような声が耳を打った。

 顔を上げると、いつの間にか隣の席に、黒いローブを目深に被った女が座っていた。

 幼さを残す顔立ちでありながら、どこか妖艶な香りを漂わせている。

 フードの奥から覗く、血のように赤い瞳が美しかった。

 この村の住人だろうか?

「あなた、勇者様パーティの戦士ですって?」

 彼女はテーブルに肘を突き、片手で頬杖をつきながら俺を覗き込んでくる。

「ま、まあ……一応な」

「ヘェ……。じゃあ、あの青の暴君を倒したのはあなたですか?」

「いや、俺じゃない。あそこで囲まれてるイグナスさ」

「ふーん……」

 女は視線を動かし、静かにイグナスを見据えた。

 その横顔と視線は、背筋が凍るほど冷たく、底知れない凄みがあった。

 不思議な女だと思っていると、突然、部屋の反対側から大きな声が響いた。

「おい、ガルア! 後でちょっと話がある。俺の部屋に来てくれ!」

「あ、ああ、わかった」

 イグナスの呼びかけに答え、再び隣へ視線を戻した時――俺は息を呑んだ。

 つい先程まで言葉を交わしていた黒ローブの女が、煙のように消え失せていたのだ。

「あれ……?」

 幻でも見ていたのだろうか。

 不可解な出来事に首を傾げたが、考えても仕方がない。

 宴がお開きになった後、俺は滞在している宿の、イグナスにあてがわれた上等な部屋へと向かった。

「……よく来たな」

「イグナス、この装備の件なんだが――」

 俺が真っ先に呪いの装備について切り出すと、イグナスはひどく面倒くさそうに、これみよがしな溜息を吐いた。

「ハァ……とりあえず、そこに座れよ」

 イグナスの視線の先には、木製の簡素な椅子が置かれていた。

 言いたいことは山ほどあったが、まずは要件を聞くしかない。

 促されるまま腰を下ろすと、イグナスはベッドの上に胡坐をかき、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべた。

「お前さ、あの時の戦闘で、まァーーるで役に立たなかったよな?」

 青の暴君との戦いのことだ。

 呪いの装備による絶望的なまでの重量と倦怠感。そのせいで合流に遅れ、俺は一度も武器を振るうことができなかった。

 引け目を感じているのは事実だ。だが、そもそもこの呪いの装備を俺に押し付けたのは、目の前にいるイグナス自身ではないか。

「それは、お前が俺にこんな装備を……ッ」

「俺のせいにすんなよなー。だいたいさ、前からずっと思ってたんだけど……お前、なんか特技ある? 冒険で役立つような、派手なスキルとかさ」

 その言葉に俺は唇を噛み締め、黙り込むしかなかった。

 確かに、俺は戦士だが、特別な固有スキルや派手な魔法剣を持っているわけではない。戦い方は泥臭い肉弾戦のみだ。

 だが、それでも。これまで幾度となくパーティの『壁』となり、魔物の牙から仲間を守り抜いてきたという自負があった。

 戦士として、身を挺して勇者イグナスをサポートし続けてきたのだ。

「俺は、俺なりに体を張って――」

「あー、そういうのいいから。これからの冒険でさ、『特技なし』『スキルなし』の足手まといを連れ回すのって、リスクが大きいんだよな」

 イグナスは爪をいじりながら、心底どうでもよさそうに吐き捨てた。

「……何が言いたい」

 静かに睨みつける俺に対し、イグナスはあくまでヘラヘラとした態度のまま、決定的な一言を放った。

「だからさ、お前はもう『戦力外』。要するに――今日でパーティから追放ってこと」

 ――戦力外。

 ――追放。

 あまりの理不尽な宣告に、俺はただ、自分の耳を疑うことしかできなかった。

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أحدث فصل

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  • 偽典のダーク・ブレイブ   ep32.首飾りの秘密

     燃え盛るベルタの私室から、俺はラナンを抱え上げて窓を蹴破った。 鼓膜を打つ爆音と砕け散るガラスの雨を抜け、夜の庭園へと飛び降りる。 着地の衝撃を曲げた膝で殺して地面に降り立ち、背後を振り返った。 ゴルベガスの夜闇の中、豪奢なバルザットの屋敷は地下から噴き上がった業火に包まれ、赤々と燃え上がっていた。 熱風が頬を焼き、焦げた木材の匂いが鼻を突く。 火元がどこからかは分からない。 しかし、そんなことは俺にはどうでもよかった。今は逃げたベルタを追うのが先だ。「……いつまで抱き抱えてるのよ。さっさと離して」 腕の中にいるラナンが、俺の胸板を押しのけながら抗議してきた。 見れば、不機嫌そうに顔を背けるその白い頬が僅かに桜色に染まっている。燃え盛る火の熱で火照ったのだろうか。「すまんな。怪我はないか?」「気安く触らないでよね。人間ごときに心配される筋合いはないわ」 俺が腕を解くと、ラナンはそっぽを向いてローブの埃を払いながら急いで距離を取った。 怒ったような口調なのは、やはり俺が不用意に触れたからだろうか。「痴話喧嘩はそこまでにしておけ。ベルタを追うぞ」 不意にため息混じりの声が聞こえ、視線を向けると少し離れた場所にゼイクが立っていた。 燃え盛る炎を背にしながらも、彼の態度はベテランらしくひどく落ち着いている。 腰に手を当て、ヤレヤレといった表情を浮かべていた。「ベルタはどこへ逃げた? 飛んで逃げられたら、暗闇じゃ追いきれないぞ」「簡単なこと推理を展開しよう。あそこに足跡を追えばヤツに会える」 ゼイクが顎でしゃくった先。 手入れの行き届いた庭の芝生に、ベルタが履いていたヒールの足跡がはっきりと残されていた。 その足跡は屋敷の奥に広がる大庭園へと真っ直ぐに続いている。 空を飛べるはずのサキュバスが残した、わざとらしいまでの痕跡。 これは罠か、それとも誘い込んでいるのか――。「ところでゼイク。追う前に一つ聞いておきた

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