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第942話

作者: 歓乃
凛はふっと笑った。

「証拠なら、いくらでもありますよ」

彰菜は目を見開いた。まさか茂が、本当に証言するはずがない。

「知らないんですか?」

凛は、上品に着飾りながらも、もはや取り乱した様子を隠しきれない彰菜を見つめた。

「あなたが赤ん坊を抱いてどこへ向かったのか、実際に見た人がいるんです。しかも、その人に弱みを握られたからこそ、あなたの旦那さんは公職を辞めたんですよね?」

凛は徹のことまで知っている!

彰菜の顔から一気に血の気が引いた。徹本人を見つけたのか?それとも、茂が話したのか?

どちらにしても恐ろしかったし、とりわけ後者だけは、考えたくもない。

「理由を聞くつもりはありません」

凛は続けた。「どうして私を捨てたのかは、もう知ってますから。私が聞きたいのは一つだけです」彰菜をまっすぐ見据える。「生まれたばかりの私を、雪の中へ置き去りにした。死ぬかもしれないとわかっていて捨てた……それを認めますか?」

将希は、もう止められないと悟った。深いため息をつき、人に支えられながら椅子へ腰を下ろす。

もう好きにさせるしかない。

せめて家の中だけで全部吐き出して、それで
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    凛はふっと笑った。「証拠なら、いくらでもありますよ」彰菜は目を見開いた。まさか茂が、本当に証言するはずがない。「知らないんですか?」凛は、上品に着飾りながらも、もはや取り乱した様子を隠しきれない彰菜を見つめた。「あなたが赤ん坊を抱いてどこへ向かったのか、実際に見た人がいるんです。しかも、その人に弱みを握られたからこそ、あなたの旦那さんは公職を辞めたんですよね?」凛は徹のことまで知っている!彰菜の顔から一気に血の気が引いた。徹本人を見つけたのか?それとも、茂が話したのか?どちらにしても恐ろしかったし、とりわけ後者だけは、考えたくもない。「理由を聞くつもりはありません」凛は続けた。「どうして私を捨てたのかは、もう知ってますから。私が聞きたいのは一つだけです」彰菜をまっすぐ見据える。「生まれたばかりの私を、雪の中へ置き去りにした。死ぬかもしれないとわかっていて捨てた……それを認めますか?」将希は、もう止められないと悟った。深いため息をつき、人に支えられながら椅子へ腰を下ろす。もう好きにさせるしかない。せめて家の中だけで全部吐き出して、それで収まるならまだいい。外にまで持ち出されるよりは、よほどましだった。それでも、彰菜はなおも認めようとしない。凛はもう一度、同じことを尋ねた。「生まれたばかりの私を、雪の中に捨てた。それを認めますか?それとも、認めませんか?」それは問いかけというより、もう確認だった。逃げ道を一つずつ塞がれるような静かな圧に耐えきれず、彰菜が叫ぶ。「殺そうとなんて思ってなかった!」その声が仏間に響いた。「そんなこと思ってない!誰かが通りかかると思ったの。きっと誰かが見つけてくれるって……絶対、誰かが……」そう言いながら、彰菜は大粒の涙をぼろぼろと流した。凛の胸にも、鈍い痛みが走ったが、それでも次の瞬間には、静かに言った。「じゃあ、故意に私を捨てたことは認めるんですね」周囲が一気にざわめいた。本当に捨てられていた。それも彰菜の手によって。和江は足元が揺らぐような感覚に襲われた。これまで、親の言うことを聞き、結婚してからは夫を立て、大きな波風もなく生きてきた。そんな彼女の人生で最も衝撃的だったのは、裕香が自ら命を絶ったことだった。そして今、その次に並ぶほどの事実を突き

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