LOGIN突然の訪問でした。帝国ビスマルクから使者とその王女がきたという事が王国ルンデブルグに伝えられたのです。
私も国王もエル王子もレオ王子も皆が驚きました。相手の事を全く考えていない、院議無礼な訪問だったのです。
そもそも帝国ビスマルクとルンデブルグにはまともな交友関係などないそうなのです。ですが強大な軍事力を持つ帝国ビスマルクの使者及び王女を門前払いするわけにもいかず、仕方なしにルンデブルグは迎え入れるのでした。
話を聞いてみない事には相手の出方もわかりません。出方がわからなければ対応もできないという事でした。
接客室に来たのは使者数名。屈強な男達です。兵士のようでした。流石は帝国の使者という感じです。
そして中央には一人の女の子。とても美しい少女ではありますが、どこか我儘そうではありました。どことなく歪んだ感じを表情から受けます。
豪かな赤いドレスに着飾った彼女が帝国の王女である、リノア王女らしいです。不安に思った私とヴィンセントさんはその様子を覗き見るのです。
その時、あることに気付きました。リノア王女に仕えているメイドです。なんと、そのメイドは宮廷を追放された義妹のディアンナだったのです。「な、なんでてめぇが!」
レオ王子が声を張り上げる。
「ひ、ひいっ! ゆ、許してくださいませっ! もう私は何もしませんわっ!」
ディアンナが怯えています。
「あら、知り合いなの?」
リノア王女が首を傾げます。
「こいつはここで働いている薬師のアイリスに毒を盛ったんだ。その罪で国外追放処分になった。なのにどうして帝国ビスマルクのメイドにこいつが」
「そうだったの。そんな事が。この子は奴隷商からお父様が買ってきたの。私の新しい専属メイドにするように」
「へぇ……そんなことがあったのか。大方奴隷商人にでも捕まったんだろうぜ。二度と会わない顔だと思ってたけど、また会わせる事になるとはな」
「ひいっ! 許してくださいませっ! もう何もしませんわ私っ!」
ディアンナは怯えます
そこは王城のベランダでした。私はベランダから風景を眺めます。王城は高い場所にあります。高所から見下ろす町並みは綺麗でした。 そこではいつもと変わらない日常が続いています。夜になったら皆眠って、朝は起きてご飯を食べて、仕事をして。そんな当たり前の日常が今もなお続いているのです。 ですがそれは嵐の前の静けさです。帝国から宣戦布告されたことはまだ王族などの一部の権力者しか知りえない事です。 ですので今この状況は嵐の前の静けさというものです。平穏な日常というものはある日ある時、一瞬にして変貌してしまうものなのです。 そして戦争という人為的な天災はその日常を一変させてしまうだけの影響力があります。「どうしたんだい? アイリス」 そんな時でした。「エル王子……」 エル王子がベランダに姿を現すのでした。「風景を……街並みを見ておりました」「そうか……僕も一緒に見ていいかい?」「どうぞ……構いません」 エル王子を拒む理由などありませんでした。それに私も一人でいると心細かったのです。ですからエル王子がいると心が安らぐのでした。「不安かい? アイリス」「不安でないはずなどありません。戦争が起きるのに不安のない人間などそうそうおりませぬ」「それもその通りだ。僕だって不安だよ。アイリスと同じだ」 勿論、前線に立つのはエル王子ではないかもしれません。彼と私は同じです。直接戦線に出向くことはない。だけどやはり戦争が起きる以上は責任を王族は負う事になります。死傷者が出れば遺族の恨みを王族は買います。クーデーターや内乱などのリスクが起こりえるでしょう。戦争を不満に思わない国民などいるはずがありません。食糧が減れば配給制になる事だってありえます。それに税金だってあがる可能性があります。しかし敗戦して帝国の植民地化した場合、王国にあるのは暗い未来だけです。恐らくは自由など一切ない、弾圧
リノア王女の要求を断った後の事でした。すかさず帝国から使者がやってきます。使者の命令は帝国への無条件降伏でした。王国ルンデブルグは帝国の属国になるように要求されたのです。その要求を断った場合は戦争をしかけてくるとの事でした。帝国は武力をちらつかせ、要求を通そうとしたのです。なんと卑劣な連中でしょうか。しかし、人類の歴史は戦争の歴史です。醜い戦争の輪廻は決して断ち切る事はできないのです。そう、そして目の前でまた戦争が行われようとしているのでした。「くそっ!」その要求を聞いた後、レオ王子は机に拳を叩きつけます。「落ち着け、レオ」 兄であるエル王子が諫めます。「これが落ち着いてられるかよ! 帝国と戦争になるんだぞ! 兄貴は平気なのかよ!」「平気なわけがあるか! だが、そんな物に当たって怒鳴り散らしたところで状況が変わるわけでもあるまい。レオ、お前は少し冷静になれ」「わ、悪い。兄貴の言う事もその通りだ。取り乱したってどうしようもない事だったな。俺も冷静になるよ」 エル王子に言われて、レオ王子は気を取り直しました。「エル王子、戦争になるんですか?」 私はエル王子に聞きます。「おそらくそうなるだろうな」「そ、そんな! 何とか回避できないんですか!」「リノア王女の要求をのめば可能性があるかもしれない」「だったら……」 リノア王女の要求をのめばいい。そう言いかけて私は言葉を閉じます。エル王子やレオ王子の気持ちを知っておいてそんな事を言おうとするなんて、あまりに酷すぎます。「だが、それは戦わずして帝国に降伏するというだけだ。帝国はそれだけにとどまらない。恐らくは帝国はこの王国ルンデブルグを植民地化する事だろう」 エル王子は語ります。「おそらくはリノア王女の要求なんていうのは戦争のきっかけにすぎねぇ。あいつ等は最初から戦争を起こすつもりだったんだ。あいつ等はこの国を植民地にしたいと思ってるんだよ。どのみち、それを拒否するな
王女リノアと使者。それから専属のメイドになったディアンナは帝国に帰ってきた。「おお! リノア、どうだった? 王国の方は」 帝王は娘、リノアが無事戻ってきた事を喜んでいるようだった。「お父様!」 リノアは泣きながら父、帝王の胸に抱き着くのである。「しくしく……しくしくしく」「おおっ……どうしたリノアよ。よーし、よーし。何があったかゆっくりとパパに説明してみなさい」「はい……お父様。王国の連中がひどいのです。リノアの物になれと命じたのに、王子達が物にはならないと抵抗してきたのです」(当たり前でしょうが……普通の対応だと思いますわ。この女、頭のネジがぶっとんでいますわよ)付き人であるディアンナは毒づいた。無論、声には出さない。出したら冗談抜きで殺される。性格がおかしいディアンナがおかしいと思うのだ。リノア王女のズレっぷりは常軌を逸していた。「おー、よしよしリノア。そいつはひどい! なんて連中だ! リノアの命令に従わないなんて!」 しかしそれにもまして父親の頭もおかしかったのだ。異常すぎる程の子煩悩。度を過ぎていた。やはりこの父にしてこの娘ありといったところか。「はい。お父様、ひどいでありましょう?」「なんてひどい連中なんだ! どうして欲しい、リノア。パパがなんでもしてやろう !」「強引にでもリノアの物にして欲しいのです。王国を攻め落とし、そして王子達をリノアの物にして欲しいのです。あいつ等を玩具にして、可愛がってやりたいのです」(無茶苦茶ですわ、この親子)ディアンナは毒づいた。勿論声には出さないが。「おおっ……わかったぞ。リノア。元々、ルンデブルグは我が帝国の傘下に加える予定だったのだ。命令に従わないというのなら無理矢理攻め落として、いう事を聞かせてやろう」 帝王はそう言った。(これはとんでもないことになりますわよ) ディアンナは慄いた。戦争が起きるのだ。これはとんでもない事になる。間違いなく。「パパに任せろ。
突然の訪問でした。帝国ビスマルクから使者とその王女がきたという事が王国ルンデブルグに伝えられたのです。私も国王もエル王子もレオ王子も皆が驚きました。相手の事を全く考えていない、院議無礼な訪問だったのです。そもそも帝国ビスマルクとルンデブルグにはまともな交友関係などないそうなのです。ですが強大な軍事力を持つ帝国ビスマルクの使者及び王女を門前払いするわけにもいかず、仕方なしにルンデブルグは迎え入れるのでした。話を聞いてみない事には相手の出方もわかりません。出方がわからなければ対応もできないという事でした。接客室に来たのは使者数名。屈強な男達です。兵士のようでした。流石は帝国の使者という感じです。そして中央には一人の女の子。とても美しい少女ではありますが、どこか我儘そうではありました。どことなく歪んだ感じを表情から受けます。豪かな赤いドレスに着飾った彼女が帝国の王女である、リノア王女らしいです。不安に思った私とヴィンセントさんはその様子を覗き見るのです。 その時、あることに気付きました。リノア王女に仕えているメイドです。なんと、そのメイドは宮廷を追放された義妹のディアンナだったのです。「な、なんでてめぇが!」 レオ王子が声を張り上げる。「ひ、ひいっ! ゆ、許してくださいませっ! もう私は何もしませんわっ!」 ディアンナが怯えています。「あら、知り合いなの?」 リノア王女が首を傾げます。「こいつはここで働いている薬師のアイリスに毒を盛ったんだ。その罪で国外追放処分になった。なのにどうして帝国ビスマルクのメイドにこいつが」「そうだったの。そんな事が。この子は奴隷商からお父様が買ってきたの。私の新しい専属メイドにするように」「へぇ……そんなことがあったのか。大方奴隷商人にでも捕まったんだろうぜ。二度と会わない顔だと思ってたけど、また会わせる事になるとはな」「ひいっ! 許してくださいませっ! もう何もしませんわ私っ!」 ディアンナは怯えます
「ぐふっふ! これはよい買い物ができたなっ!」 男は大層喜んでいた。何でもこの帝国ビスマルクの帝王らしい。要するに王様だ。恰幅のいい軍人風の男だ。 やはり武力でのしあがていった国なのでどこかしら血の匂いのする男であった。「は、離してくださいませ! やめてくださいませっ!」「黙ってろ奴隷! 貴様はわしに買われたのだ! 大人しくせいっ!」「ひ、ひいっ!」 帝王に怒鳴られ、ディアンナは押し黙りました。流石に風格があります。「これはリノアも喜ぶぞっ! ぐふふっ!」「リノア……?」 ディアンナは首を傾げる。大きな城につくなり、ディアンナは使用人に渡されました。大きな城とはいえ、石造りの城ではなく鋼鉄で作られた要塞のような城です。 「帝王、彼女は一体?」 メイドが首を傾げます。「ああ。奴隷市場で競り落とした奴隷だ。リノアの新しい専属メイドにしようと思てな」「はぁ……左様ですか」「メイド服に着替えさせろ。わしがリノアの部屋へ連れて行くのだ」「わ、わかりました」 こうしてディアンアはリノアという少女の部屋に連れていかれるのでした。リノアというのはどうやらこの帝王の娘のようです。「またまたえらい事になってしまいましたわ」 ディアンナは苦悩しましたが己の運命にただただ流されるだけでした。 ◇「ぐっふっふ! これはリノアが喜ぶぞっ! リノア、新しい専属メイドだぞっ!」 メイド服に着替えさせられたディアンナは部屋に連れていかれる。新しいペットを拾ってきたくらいの気安さで。実際その程度にしか思わえていないようだ。「お父様! 寂しかったですわ!」 豪華な部屋にいたのは美しい少女でした。確かに美しいのですが、どこか我儘そうで目つきがきつそうです。彼女は情熱的な赤いドレスに身を纏っていました。 ディアンナは内心呟いてしまいます。(確かに見た目は
「さ、最悪ですわ……なぜこんなことに。私は悪くありませんわ。悪いのは全部あの根暗女ですの」 薄暗い、そして寒い檻の中、ディアンナは閉じ込められていた。「私がなぜこんな事に、ううっ……」 ディアンナはナンバープレートのようなものをつけさせられた。『13』。13番目のプレートという事であろう。 周りにいる数十名の娘達もまたプレートをつけさせられている。一体これから何が始まるというのか。 ぞろぞろと娘たちが連れられて行く。「ほら、お前も行くんだ。ちゃっちゃと歩かないか」 男に連れられて檻の外へ向かう。手足に鎖をつけられているので逃走は困難であった。「ひ、ひゃぁ! な、なんですの!」「いいから付いてこい!」 ディアンナは檻の外へと連れ出された。 ◇「な、なんですのここはっ!」 多くの観客がいるステージのようであった、そこは。煌びやかな装飾品を身に着けた成金の男女たち。 その目は完全に楽しんでいた。一列に並ぶ少女達を物色するような目で見ていた。まるで装飾品をえらぶかのように。完全にショッピングのような気分である。 そう彼等は買い物に来ているのだ。「え、えらいところに来てしまいましたわ!」「さあ、それでは奴隷オークションを開始します!」 司会の男がそう宣言する。パチパチパチ、乾いた拍手がする。「それでは早速エントリーナンバー1番、この娘から行きましょう! 金貨1枚からのスタートです!」「金貨2枚!」「3枚だ!」「こっちは10枚!」 どんどんと金額があがっていく。そうやってせっていくのだ。「な、なんて事でしょうか。人を家畜みたいに競りに出すなんて。私達を家畜だとしか思っていないようですわね。何とも思っていないようですわ」 ディアンナは嘆いた。世の中酷い人間もいるもんだと思った。自分も相当ひどい事をアイリスにしてきたのだが、わが身は振り返らなかった。