LOGIN資産家の姉、鳴海涼音(なるみ すずね)にブロックされてから3年。 彼女はネットの医療募金で俺に100円を寄付し、さらに皮肉に満ちたメッセージを残した。 【肺がんになったの?本当に死んだら教えて、お祝いしてあげるから】 3年前、姉が支援していた苦学生の瀬戸拓海(せと たくみ)が、俺に大学の推薦枠を奪われたと訴え出た。 姉は激怒し、有無を言わさず俺、鳴海湊(なるみ みなと)の退学手続きをとった。 「たとえ学校に行かなくても、私が一生養ってあげる。でも、他人のものを奪ったことには、罰を受けてもらうわ!」 俺たちは激しく口論になり、最終的に彼女は冷酷な表情で俺を家から追い出した。 「自分の過ちを認めたら戻ってきなさい。その腐った性根、絶対に叩き直してやるから!」 その後、彼女はその苦学生をまるで本物の御曹司のように甘やかして育てた。 一方で、俺が見つけた仕事はことごとく彼女に潰され、換金できそうな不用品を拾って食いつなぐしかなかった。 彼女のメッセージを見つめながら、俺はしばらく呆然としていた。 やがて、霊園の管理業者に電話をかけた。 「一番安い区画を押さえておいてください。明日、手付金を振り込みます」 姉が寄付してくれたあの100円で、ちょうど手付金が払える額になった。 俺は、彼女の望み通りにしてやった。
View More姉は俺のスマホをきつく抱きしめ、ヒステリックに泣き叫んだ。彼女は胸を押さえ、その場にへたり込んだ。その顔色は蒼白だった。事ここに至り、彼女はついに自分がどれほど途方もない過ちを犯していたかを悟ったのだ。最初から最後まで、俺はずっと彼女の「聞き分けの良い素直な弟」のままで、何一つ変わっていなかった。拓海の嘘を盲信し、俺に「お灸を据えてやる」などと独りよがりな罰を与えようとしたのは、他ならぬ彼女自身だったのだ。だが、彼女を更なる絶望のどん底へと突き落とす出来事は、まだ後に控えていた。警察から1本の電話が入った。歩道橋の下で、凄惨な男の死体が発見されたという通報があった。「涼音さん、現場の状況から他殺の可能性は排除されています。指紋の照合結果から……亡くなったのは、湊さんだと判明しました」ガタンッ。姉の手からスマホが滑り落ちた。彼女は口を半開きにしたまま、言葉を発することができなかった。電話の向こうで警察が何かを話し続けていたが、彼女の瞳は次第に焦点を失い、最後には目の前が真っ暗になって、そのまま気を失った。次に彼女が目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。人道的配慮から駆けつけた警察が、気絶した彼女を病院へ搬送した。当然、彼女が拓海に激しい暴力を振るい、地下室に監禁していたこともあっけなく発覚した。解放された時の拓海は顔中が青痣で腫れ上がり、口の端から血を流していた。警察は深くため息をついて言った。「涼音さん、あなたの行為はあまりにも常軌を逸しています。3年以下の懲役に処される可能性があります」姉はうつろな目で天井を見つめたまま、長い沈黙のあとにぽつりと口を開いた。「……じゃあ、拓海はどうなるんですか?あいつが、間接的に私の弟を殺したんです」「それを立証できる証拠があるのなら、我々も法に則って手続きを進めます」姉は黙り込み、自嘲するように口角を歪めた。少しして、彼女はゆっくりと言った。「……わかりました。私の罪は認めます。ですが、まだ弟の葬儀を執り行っていません。少しだけ、時間をください」警察は頷いた。「我々の人間がずっと監視につきます。弟さんの葬儀が終わるまでです」「わかりました」姉は感情の抜け落ちた声で返事をすると、蒼白な顔のまま身を起こし、霊園の管理業者に電話をか
姉は指先が白くなるほどスマホを握りしめ、信じられない思いのまま、俺と主治医のチャット履歴を上へとスクロールしていった。実際のところ、やり取りの数はそう多くない。その大半は、医師から俺への定期検査や服薬を促すメッセージだった。【湊さん、今日はどうしてまた来なかったんですか?】【すみません。会社を解雇されてしまい、今はその退職手続きに追われているんです。数日後には行きます】【ですが、あなたの肺がんはすでに末期なんですよ!これ以上治療方針の決定を先延ばしにしたら、手遅れになります!】【大丈夫です。今はそんなに痛まないので。数日したら……新しい仕事が見つかったら行きますから】……【あれからもう2ヶ月経ちますが、まだ仕事は見つかりませんか?湊さん、もしお金に困っているなら私に言ってください。少しなら貸すこともできますから】【先生のお気遣い、本当にありがとうございます。でも、姉から「他人からお金を借りてはいけない」と教えられて育ったので……やっぱりやめておきます】【それなら、ネットの募金サイトを知っていますか?一般の方々から寄付を募る仕組みです。これなら借金にはならないでしょう?】【本当ですか?やってみます!】……【湊さん、いくら集まりましたか?あなたの病気はもう本当に猶予がないんですよ!】【すみません、先生。俺の募金プロジェクト、誰かに通報されて強制終了になってしまいました。詐欺だと言われて】【そんなはずはありません!私が担当医として証明を出しましょうか?】【いいんです。通報したのは、俺の姉なので……先生まで巻き込みたくありません。でも、色々とありがとうございました】……そして最も新しいメッセージは、今日送られたものだった。【湊さん、せめて鎮痛剤2瓶送ります。たとえもう生きるのを諦めたのだとしても……少しでも楽になってください】だが、俺からの返信はなかった。なぜならその時、俺は家で姉から容赦ない平手打ちを食らっていた真っ最中だったからだ。一滴の涙がスマホの画面に零れ落ちた。姉はスマホを死に物狂いで握りしめ、途方に暮れたように視線を彷徨わせていた。「どうしてこんな……嘘でしょ……」彼女はうわ言のように低く呟きながら、今度は俺と彼女自身のトーク画面を開いた。彼女はこの3年間、ずっと俺のアカ
姉はハッと息を呑んだ。一方、拓海は一瞬にして顔面を蒼白にさせ、ギリッと強く拳を握りしめた。鈴木先生は電話の向こうで笑っている。「すまないね、ずっと海外に行っていたんだ。退職したから、ゆっくり羽を伸ばそうと思ってね。国内の人間とは一切連絡を絶っていたんだよ。そうだ、推薦枠なら拓海くんが君に譲ってくれたじゃないか。どうして君が退学したなんて噂になっているんだい?」「譲りました?」姉は射抜くような視線を真っ直ぐに拓海へと突き刺した。彼女の声を聞いて、鈴木先生は少し間を置いてから尋ねた。「……君は、湊くんのお姉さんかな?彼はいるかい?」「すみません、もう一度言ってください。3年前のあの推薦枠は……拓海が、湊に譲ったんですか?」「そうだよ。あの二人の点数はわずか1点差だった。あの時、拓海くんは『湊さんには恩があるから』と言って、推薦枠を自ら湊くんに譲ったんだ」姉の顔から、サーッと血の気が引いていく。鈴木先生はまだ話を続けている。「湊くんは元々受け取るつもりはなかったんだがね。拓海くんが床に土下座までして、『受け取ってもらえないと罪悪感で押し潰される』と彼にすがりついたんだよ。だが、結局二人とも進学しなかったと聞いてね。一体どうなっているんだい?」姉は唐突に通話を切った。彼女は弾かれたように拓海のそばへと詰め寄り、手を振り上げてその髪の毛を力任せに鷲掴みにした。「一体どういうことなの!?湊があなたの枠を奪ったって言ってたじゃない!なんであなたが譲ったことになってるのよ!」拓海は額に冷や汗をにじませ、必死で弁解した。「涼音さん、わざとじゃないんだ!僕はただ涼音さんのことが大切すぎて……涼音さんに少しでもあいつを嫌いになってほしくて、僕は――」パァンッ。奴の言い訳が終わるより早く、目を血走らせた姉の平手打ちが奴の頬を激しく撃ち抜いた。ようやく腫れが引いてきた奴の頬が、瞬く間にまた赤く大きく腫れ上がった。正直に白状しよう。俺はそれを見て、少し胸がすく思いだった。だが、まだ足りない。もっと徹底的に痛めつけるべきだ。まるで俺の心の声が聞こえたかのように、姉は奴の顔に立て続けに何発も平手打ちを食らわせた。「よくもここまで私を騙してくれたわね!3年よ、この3年間ずっと私を騙し続けてきたのね!
強い未練が残っていたせいか、自殺した俺の魂は地獄へは行かず、そのまま家へと戻ってきてしまった。壁をすり抜けてリビングに入ると、ちょうど姉が眉をひそめながら俺のスマホを握りしめ、誰かと電話しているところだった。「何のお話ですか?お墓がどうとかって……」電話の向こうからは、苛立ったような声が聞こえてくる。「もういいです。とにかくお伝えしましたからね、こっちも義理は果たしましたよ!」そこでようやく、相手が霊園の管理業者だと気がついた。俺の心に、じんわりと申し訳なさが湧き上がってくる。ここ数日はあまりにも色々なことがありすぎて、すっかり墓地の支払いのことを忘れていた。業者の言う通りだ。彼は本当に、俺に対して十分に義理を果たしてくれた。少なくとも、実の姉である涼音なんかよりもずっとマシだ。電話が切れ、姉は険しい顔つきのまま、無意識にリダイヤルしようとした。だが、拓海が慌てて彼女の腕を掴んだ。「涼音さん、かけ直しちゃダメだ!絶対に詐欺だって!最近はこういう手の込んだ詐欺が多いんだ。かけ直したら奴らの思うツボだよ!」もし姉が少しでも彼をよく見ていれば、その瞳の奥に明らかな焦りが浮かんでいることに気づいたはずだ。だが残念なことに、姉の視線はずっとスマホに釘付けになったままで、何を考えているのかは分からなかった。結局、彼女が電話をかけ直すことはなかった。彼女は唇を噛み締め、口を開いた。「湊はスマホを置いていってしまったわ。拓海、あなたは家で待っていなさい。私が湊を探してくるから」拓海は彼女の手を引いて離そうとしなかった。「涼音さん、行かないで!もし湊さんがその辺の物陰に隠れてて、涼音さんがいなくなった隙に僕を殺しに来たらどうするんだよ!」姉は彼を一瞥し、やれやれとため息をついた。「今回ばかりは本当にあなたが悪かったわよ。なんで気をつけて運転しなかったの?湊は小さい頃から猫が好きだったの。あの子があそこまで逆上するのも無理はないわ」口ではそう言いながらも、彼女は救急箱を取り出し、綿棒で拓海の顔の傷に薬を塗り始めた。「わざとじゃないんだ。あの子猫がいきなり飛び出してきて、気づかなかっただけで……それに、ただの雑種猫みたいなものだし、ちゃんとお金だって4万円払ったんだから。涼音さん、もう怒らないで。僕が悪か