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思い出に佇み、君を仰ぐ

思い出に佇み、君を仰ぐ

By:  藤川遥Completed
Language: Japanese
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私・藤井凛香(ふじい りんか)は弟の親友である村上奏多(むらかみ かなた)と、三年間恋人として付き合っていた。 彼は耳元で何度も、家同士の政略結婚なんて大嫌いだと漏らしていた。 けれどまた一度の熱に身を委ねた夜の後、彼は甘えた声で、見たこともない婚約相手のために結婚指輪をデザインしてくれと頼んできた。 その瞬間、私の笑みは凍りついた。だが彼は当然のように言った。 「俺たちみたいな人間は、最終的に政略結婚するしかないんだろ?」 血の気が引いた私の顔を見て、彼は鼻で笑った。 「凛香、まさかまだ二十歳の小娘みたいに、本気で俺が君と結婚するなんて思ってたのか? 俺たちの関係なんて、せいぜいセフレだろ」 その後、私は家の決めた縁談を受け入れることにした。 すると惨めに涙で目を赤くした彼が、私の前に現れ、地に膝をついて必死に戻ってきてほしいとすがった。 私は新婚の夫の腕に手を添えて、かすかに笑みを浮かべた。 「最初に言ったのはあなたでしょ。私たちみたいな人間は、生まれた時から政略結婚する運命なんだって。今、あなたの願い通りになったんだから、喜ぶべきなんじゃない?」

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Chapter 1

第1話

村上奏多(むらかみ かなた)はベッドで私を抱きしめ、限りなく求め続けた。

彼のキスは私の鎖骨に落ち、赤い跡を残した。

「凛香、今日はいい匂いがする」彼の低い声が耳元で響き、温かい息が首筋にかかった。

私は彼の胸をそっと押した。「どうしたの、今日」

彼は何も言わず、すでに私の服の中に手を入れて、慣れた手つきでブラジャーのホックを外した。

すぐに、私は理性を失い、奏多と一緒に快楽に身を沈めた。

彼が血気盛んなだけだと、ただ若い男はこういうものなんだと思っていた。

後になって、彼はベッドのヘッドボードにもたれかかり、だらしなく煙草に火をつけた。

煙が立ち込める中、彼は突然口を開いた。「凛香、俺のために婚約指輪をデザインしてくれないか」

私は胸が高鳴り、心臓が今にも胸から飛び出しそうなほどの喜びを抑え込んだ。ついに彼が私にプロポーズしてくれるのだと思った。

私たちは3年間一緒にいたが、彼は私に正式な関係を約束したことは一度もなかった。

「どうして急にその気になったの?」

私は平静を装って尋ねたが、声には喜びが隠しきれなかった。

奏多は軽く笑い、煙を吐き出し、どこか投げやりな口調で言った。

「家の都合だ。あまりみすぼらしいわけにはいかないからな」

私の顔の笑顔が凍りついた。

「誰にあげるの?」自分の声がひどくかすれているのが聞こえた。

彼は私の唇の端にキスをした。

「家の都合で決まった政略結婚の相手に決まっているだろう。他に誰がいるんだ?」

私の血は一瞬で凝固した。

「あなたは政略結婚を一番嫌っていたじゃない」

私は辛うじて口を開いた。

「あの時、隼人の誕生日パーティーで、あなたは言ったわ」

「あれは血気盛んだった頃の戯言だ!」奏多は苛立たしげに私の言葉を遮った。

「俺たちみたいな家では、政略結婚は当たり前なんだ。ずっと暗黙の了解だったんじゃないのか?」

彼は煙草の火を消して近づいてきて、いつもの甘えるような口調で私をなだめた。

「凛香、安心して。俺の心の中で一番大切なのは、永遠に君だ。あいつはただの飾り物で、家族の利益のための犠牲者だ。

凛香なら、俺のことを理解して支えてくれるよな?」

顔色を失った私を見て、彼は鼻で笑った。

「凛香、まさか俺が君と結婚するなんて、馬鹿げたことを考えていたんじゃないだろうな?」

彼は身を翻してベッドから降り、床に落ちていたバスローブを手に取って羽織り、軽薄な口調で言った。

「俺たちの関係なんて、せいぜいセフレだろ」

「セフレ」という言葉が、ナイフのように私の心に突き刺さった。

初めて彼に会ったのは、弟の藤井隼人(ふじい はやと)の誕生日パーティーだった。

弟にしつこく誘われ、「友達を紹介したい」と言われて仕方なくついて行ったのだ。

私は隅に座って退屈そうにジュースを飲んでいたが、澄んだ声が聞こえてきた。

奏多が酒瓶を振り回しながら、きらめくような反骨の眼差しを周囲に向けていた。

「いつの時代にこんなやり方をするんだ!

俺、村上奏多が結婚する相手は、俺自身が選んだ人じゃなきゃだめだ!」

その瞬間、同じ種類の人間を見つけた気がした。

彼の傲慢で不敵な姿に、私は一目で心を奪われた。

私は彼を追いかけ始め、どんな困難にも負けずに、彼の身を案じ、ようやく彼が頷いてくれた。

彼はかつて言った。

「凛香、君はあの女たちとは違う。

俺は家族の偽善なんか大嫌いだ。君のそばにいるときだけ、一時の安らぎを感じられる」

私は信じ込んでいた。私たちは魂を分け合う盟友で、世間のしがらみと戦う仲間だと。

私たちの間に裏切りなんて存在しないと。

しかし、すべては私の独りよがりだったのだ。

私は静かに頷いた。「分かったわ」

奏多は私の冷静さに少し驚き、眉をひそめた。

彼からすれば、私は泣き叫び、問い詰め、ヒステリックになるはずだった。

しかし彼は深く考えず、私がまた駆け引きをしているのだとでも思ったのだろう、口元に笑みを浮かべながら言った。

「やっぱり、凛香は一番物分かりがいいな」

彼は私の頬を優しく撫で、振り向くことなく去っていった。

残された私は、乱れたベッドの上にただひとり座り込み、一晩中眠ることはできなかった。

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友里
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お母さんの遺品が2つもクズに壊されたのだけ心残り...( ・᷄ὢ・᷅ )
2025-09-27 15:14:37
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松坂 美枝
松坂 美枝
スパダリが徹底的にクズを倒してくれる後半が爽快だった
2025-09-27 13:51:44
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さぶさぶ
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主人公はわりと初期から恋じゃなくてモラハラで精神支配に変わってただけなんじゃ 弱い相手にモラハラするだけのクズ無能の被害者が増えなくてよかった
2025-09-27 18:06:48
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