思い出した!
確かあの戦争の最中、アデリナ達が秘密の精鋭部隊を投入し、ローランドの軍を追い詰めるというエピソードがあった!それがクブルク内部にいたもんだから、ローランドはかなり苦戦したのよね。
じゃあ、あれって……元はアデリナが奴隷少年達を買って育てていた部隊だったの!?しかも最初はローランドのために作った部隊だったのね?
アデリナ、やっぱりアンタ凄くローランドを愛してたのね!
何で秘密にしとくのよ! あ!不器用だからか!……て、事は……このまま小説通りにストーリーが進むとこの子達は全滅するわけ……で。
隣に佇んでいたライリーが腰を低くし、私の右手をそっと握った。 そのまま手の甲に触れるようなキスをする。 まるでファンタジー世界の騎士の誓いの様な仕草。 純朴な瞳がなぜか熱を帯びている。 「アデリナ様。僕達はアデリナ様の命令ならばローランド王を助けます。 ですが…もしアデリナ様がお望みなら、いつでもそのローランド王を殺せます。」 うん、うん、ううんーーー!!? 物騒!何言ってるんだねライリー君!!! フラグ立てたら駄目ーーー!!! とにかく私がこのライリーを買った訳ではないが、これは相当アデリナに忠誠を誓っているみたい。「あ、ありがとう……?」
「いえ……アデリナ様にキスできて僕は本当に幸せです。」
嬉しそうに微笑んでライリーは名残惜しそうに私の手を離した。
顔が真っ赤である。 えっと……これはどういう事かな。とりあえず現在のライリーのステータスを確認する事に。<
思わぬ人物に愛されていたもんだ。 隣国の王子は無理でも、もうこの際ライリーと駆け落ちすれば良くない? ……とは言えライリーってこのくらいだとまだ14歳とかその辺りだっけ? まだ中学生かあ。 だとしたら犯罪になるな。 それにアデリナも近いうちに離婚予定ではあるものの、まだ一応人妻だ。 本気で残念だ。 「アデリナ様。ご無沙汰しております。」 さっきまで子供達に剣を教えていた、ちょっと厳つい村人のような格好の男が近寄ってきた。 髪は白くて短く、顔は角ばって薄ら顎髭を生やしている男性。 まず丁寧に頭を下げる。 見た目に分かるほど屈強な肉体。 汗まみれの額を首にかけていた布でガシガシと拭いていた。 「どうも……?」(ステータスオープン…) [ラシャド▷剣術師範 Lv55 ライリー達に剣を教えている 現在の親密度36] 遠目に見て何となく分かっていたけど、やっぱりライリー達の先生みたい。 ……ていうかレベルと親密度の数字が微妙で良く分からないんですけど。 振り返り、懸命に稽古に励む少年達を眺める。 「アデリナ様のお陰で皆元気になりました。 貴方はあの子達の命の恩人だ。」 「そんな……私は何も。」 実際にライリー達を救ったのは本物のアデリナだ。 でも誰の目にもアデリナはやはりアデリナにしか見えないのだろう。 複雑だが微笑む事にする。 「いつもありがとう、ラシャド。」 「いえ。 あの。もし宜しければアデリナ様もあの子達と一緒に夕食を食べませんか?」 ラシャドの正体は未だよく分からないが、性悪だと言われているアデリナを警戒する様子は全くない。 よほど信頼しているんだろう。 「いいわ。食べましょう。」
そうだ………!! 思い出した! 確かあの戦争の最中、アデリナ達が秘密の精鋭部隊を投入し、ローランドの軍を追い詰めるというエピソードがあった! それがクブルク内部にいたもんだから、ローランドはかなり苦戦したのよね。 じゃあ、あれって……元はアデリナが奴隷少年達を買って育てていた部隊だったの!? しかも最初はローランドのために作った部隊だったのね? アデリナ、やっぱりアンタ凄くローランドを愛してたのね! 何で秘密にしとくのよ! あ!不器用だからか! ……て、事は……このまま小説通りにストーリーが進むとこの子達は全滅するわけ……で。 隣に佇んでいたライリーが腰を低くし、私の右手をそっと握った。 そのまま手の甲に触れるようなキスをする。 まるでファンタジー世界の騎士の誓いの様な仕草。 純朴な瞳がなぜか熱を帯びている。 「アデリナ様。僕達はアデリナ様の命令ならばローランド王を助けます。 ですが…もしアデリナ様がお望みなら、いつでもそのローランド王を殺せます。」 うん、うん、ううんーーー!!? 物騒!何言ってるんだねライリー君!!! フラグ立てたら駄目ーーー!!! とにかく私がこのライリーを買った訳ではないが、これは相当アデリナに忠誠を誓っているみたい。 「あ、ありがとう……?」 「いえ……アデリナ様にキスできて僕は本当に幸せです。」 嬉しそうに微笑んでライリーは名残惜しそうに私の手を離した。 顔が真っ赤である。 えっと……これはどういう事かな。 とりあえず現在のライリーのステータスを確認する事に。
「アデリナ様…………!」 着いた先で私を出迎えてくれたのは、超絶なる美少年だった。 わあ、眩しいイケメン。 弾ける若さ………!モチモチの肌! 鮮やかな黄色い髪。驚くほど小顔。 ぱっちり開いた両目。薄いブラウンの色した瞳。 ファンタジーの世界で騎士が着てそうな白いシャツに、モスグレーのパンツスタイル。 汗さえ眩しいってどういうこと? ただし、まだ背が高いとは言えない。 何で?誰?何? どう迎えてあげれば正解なの? 瞳を輝かせ、犬のように走ってくる姿が目に入る。 「会いたかったです…………!」 ゴフッという鈍い音がして、私の顎のあたりに彼の頭が当たった。 そのままバランスを崩し、私は腰から地面に倒れ込んでしまった。 ……………だから、誰? それは私の第二の推しだった。 その名はライリー。 後に幼いヴァレンティンに剣を教え、あの戦争で最前線で指揮を取った男。 ヴァレンティンの師範であり右腕の将軍。 ヴァレンティンを庇うために自分が囮になり、結果死んでしまう悲しい宿命の! そのライリーだ!生ライリーだ! きゃー可愛い!アイドルみたい! 会えた!第二の推しに会えてしまった! 神様ありがとう…………!!! しかしそのライリーに押し倒されて。これは一体どういう状況なの? ◇ 「……はっ!」「やあ!」 数十名の気迫ある掛け声が響き渡る。
看病したのは妻(仮)だから仕方ないとして、あれからとにかくローランドを避けまくっているのに何故か向こうから凄く絡んでくる。 それに全く離婚してくれる気配もない。 あー!いやだー!この前なんてついに夕食時に捕まって強制的にご飯一緒に食べたし。 何であんな無愛想な男の顔見ながら、ご飯食べなきゃいけないわけ? この世界ならではの罰ゲームなの? 「アデリナ様。馬車の用意が整いました。」 「……馬車?」 午後のティータイムを楽しみにしている私の元に、ホイットニーがやって来た。 彼女は普段とは少し雰囲気が違う、質素な格好をしている。町娘風という感じの? えっと。なんだっけ……馬車? 何か出かける所あったかな? 「あそこに出かけるのは久しぶりですね。 お召し物を変えますか? 準備ができたら行きましょう。」 「あそこってどこ?ホイットニー…!」 「もう、うふふ、アデリナ様ったら。 お忘れですか?あの少年ですよ、あ、の。」 相変わらずアデリナ様は忘れたフリがお上手なんですから〜とホイットニーにお上品に笑われてしまったけど。 ……分かんないなー!どの少年かな!? 身支度を済ませた私と一緒に、ホイットニーもなぜか地味な感じの馬車に乗り込む。 これはよく、アデリナがお忍びの時に使う馬車らしい。 いつもは付き添う護衛の兵もいない。 「アデリナ…って……一体何したの? 少年って何?」 「うふふ、着いたらすぐ思い出しますよ。」 私と向き合う形で台座に座っているホイットニーが、上品に笑う。 「教えてよー、記憶全くないんだから。 本当に私はアデリナじゃないんだって。」
それからも妻はどんどん変化した。 放棄していた、王妃の仕事を率先してやるようになったのだ。 来賓客の対応、その指示。 誠意を持って相手をもてなす事は王家の信用にも繋がる。 上質な茶葉や珍しい陶器で作られた茶器。 上品な食事や、美味なデザート。 それらを選ぶにはセンスが試される。 相手が好きそうな音楽家を迎えて、目の前で演奏させたり、高価で唯一無二の贈り物を贈ったり。 割り当てられた予算を上手に使い、どのようなコンセプトで相手を歓迎するか。 それによって国内貴族との縦の繋がりを。 諸外国との関係を円滑にするのだ。 アデリナは思いの外センスがあった。 それに自分の住む王妃宮の手入れも始めた。 貴族の侍女達にそれぞれ的確な指示を与え、自分に悪意を持つ侍女にはそれなりに正当な制裁を加えた。 今まで見窄らしく思えていた王妃宮が見違えるほどに美しく、生まれ変わっていく。 また荒れていた庭園が驚くほど整備された。 色とりどりの花がバランスよく植えられ、鬩ぎ合うように咲く様は綺麗だった。 しかも花で波打つように道を作っている。 これまで存在しなかった「寄せ植え」という手法を使い、プランターに密集させた様々な花を、溢れ落ちるように咲かせた。 あまりにも美しいのでその中央に、今度新しい噴水を設置させようとさえ思った。 これまでアデリナを無能と思っていた王宮勤めの臣下や官僚達も、この変化に戸惑っているようだった。 ◇ あれからアデリナには監視をつけている。 以前は悪さをしないかどうかだったが、今は少し違う。 「ランドルフ。今日はどうだ?」 「はい。今日もまた本を片手にティータイムをなさっていらっしゃるようです。」 「はあ。そうか。 ……まだ懲りてないんだな?」 「…その様ですね。」
翌朝、アデリナは自分で作ったという料理を侍女達に運ばせていた。 食欲を唆られるような色どりの野菜と肉炒めに、具沢山のスープが用意されていた。 何か重大な病気では?と侍医が言う。 長く王家に仕えている家系だ。 意見は無視できない。 しかしアデリナは「だから栄養不足による貧血ですって。」と、侍医と何故か言い争っていた。 後からクビにした方がいいとも言っていた。 何を根拠に言っているのかは分からないが、自信満々だった。 確かに歳を取った侍医にはいささか不安がある。 考慮するべき点でもある。 食欲が湧かないと言っているのに、アデリナは食べろとひつこく、断れば急に怒り出した。 自分の事をもっと大切にしろと。 ……私は王だ。やるべき事がたくさんある。 そんな事はもう長い間、ランドルフ以外には言われていなかった。 まさかアデリナが私を心配しているのか? 思わずそう尋ねれば。 「ええ!そうです! 妻が夫の心配をするのは当たり前でしょ!」 あの薄青紫の色をした双眼が、真っ直ぐに私を見おろしている。 ピシッと伸ばした背中、堂々とした振る舞い。 とても侮辱や嫌味を言ってるようには聞こえない。 信じられないが、本当に私を心配してくれているようだった。 なぜ今さらそんな風に素直に言うんだ……? 妻から心配される………。 たったそれだけの事がこんなにも嬉しいだなんて。 どちらの料理も胃につっかえるかと思っていたが、案外あっさりした味で、すんなりと喉の奥に収まっていく。 そして、どちらも美味かった。 まさか元皇女が、自ら料理を作るなんて誰が想像できただろうか? 側に控えるランドルフも、何故か何も言わなくなっていた。 多分ランドルフも、アデリナのこの変化に気づいているのだろう。 ただ素直に「美味しかった」とか「ありがとう」とかは言えなかっ