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23.王子の悩み事。side悠里

last update 게시일: 2025-12-23 11:52:34

side悠里

放課後。

床を蹴る音、ボールの弾む音、それから部員たちの声が体育館中に響く。

そんな熱気の中、俺は今日も部活に励んでいた。

テスト週間が終わり、1週間が経った。

鉄崎さんと一緒に勉強したおかげで、テスト結果は過去最高で、改めて鉄崎さんの凄さを思い知った。

そして、俺と同じように、鉄崎さんのテスト結果もよかったようで、鉄崎さんは嬉しそうに「沢村くんのおかげだよ」と笑いながら報告してくれた。

…あの笑顔、可愛かったな。

綺麗な黒髪から覗く、柔らかく細められた大きな瞳。

緩む口元に少し紅潮した頬。

嬉しそうに笑う鉄崎さんを見ると、なぜか心が暖かくなる。

風紀委員長としてみんなから恐れられ、鉄子、と呼ばれている鉄崎さんだが、笑うと花のように可愛い。

一緒にいればいるほど、知らなかった鉄崎さんの新たな一面を知ることができて、俺は嬉しかった。

少しずつ、鉄崎さんの特別になれている気がして。

けれど、鉄崎さんにとっての〝特別〟は俺だけではなかった。

ーーー華守千晴。

彼も鉄崎さんにとってきっと特別な存在だ。

その素行の悪さから、学校中の生徒から恐れられ、距離を置かれ、大人である先生た
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  • 推しに告白(嘘)されまして。   108.告白。

    千晴によって連れて来られた場所は、風紀委員室だった。誰もいない風紀委員室には、基本鍵がかかっており、風紀委員のみしか開けられないようになっている。風紀委員長ではなくなり、もう半年。私は久しぶりに風紀委員室へと足を踏み入れていた。何故、風紀委員でもなんでもない千晴が、ここの鍵を持ち、開けられたのかは、この際、目をつぶろう。千晴のことだ。おそらく持ち前のマイペース&強引さで、鍵を入手したのだろう。鍵を持っていた誰かに同情してしまう。小さな教室のような風紀委員室の奥には、普通の教室と同じように窓が並んでいる。その窓から見える空は清々しいほど青く、校庭にはたくさんの生徒たちが小さな輪になって、まだ別れを惜しんでいた。窓いっぱいに広がる景色に、懐かしさを感じる。風紀委員であった約2年半、私はいつもここの景色を見てきた。それも、今日で最後だ。感傷的になりながらも、ゆっくりと懐かしい風紀委員室を歩く。一歩、また一歩と進んでいくうちに、つい昨日までここにいたかのような感覚に陥った。そして気がつけば、私は窓際にいた。そのまま無意識にゆっくりと窓に手を伸ばしたーーその時。後ろから私に大きな影が落ちた。「先輩」いつの間にか私のすぐ後ろにいた千晴が、柔らかい声音で私を呼ぶ。その声に私の視線は、自然と窓から千晴へと移った。二年間、私を散々悩ませてきた校則違反の金髪が、まず目に入る。ふわふわの柔らかそうなそれは、太陽の光が当たらない室内にいながらも、私にはキラキラと輝いて見えた。そこから覗く顔は、まるで精巧に作られた人形のように一切の欠点がなく、美しい。通い慣れた教室に、いつものように千晴はいた。放課後、私に会いにいつもここに来ていた千晴。ここで千晴の反省文の監督を何度もしたこと、私の邪魔をする千晴を叱りつけたこと、他愛のない会話をしたことなど、いろいろな千晴とのことが走馬灯のように頭に流れる。いつから千晴を好きになっていたのだろう。気づいたのは一年前だったが、きっともっと前から私は千晴に惹かれていた。「先輩、もう卒業しちゃうね」「うん」「明日からもう会えないね」「…うん」千晴がどこか寂しげに私を見る。千晴の言葉に、瞳に、私にも寂しさが押し寄せた。ここに私は明日はいない。ここに来ればいつでも会えた人たちと、もう明日には会

  • 推しに告白(嘘)されまして。   107.さよなら。

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  • 推しに告白(嘘)されまして。   104.胸の熱。

    朝の散歩後、朝食を食べ終え、合宿最終日が始まった。合宿最終日も一日目とやることは同じだ。一人一人に配られたプリントを、ただひたすら解いていく。それを一日目と同じように悠里くんの隣で集中していると、二年生の部屋に何故か我が物顔で千晴が現れた。そして私の隣に、当然のように座ってきた。悠里くんと二人で使っていた机は、二人で使うにしてはかなり広く、全然千晴がいても問題はない。だが、それでも、広さ以外の問題があった。千晴と悠里くん、この二人の相性が何故かとんでもなく最悪なのだ。二人に挟まれた私は、奇しくも地獄の空気の中で勉強をすることになった。私にだけ話しかけ、互いを無視し、時には互いに険悪な雰囲気をまとい、睨み合う。この二人の仲を取り持つことなど、今までの経験上、到底無理だと知っていた私は、苦笑いを浮かべ、ペンを走らせた。たまに見ていられなくて、二人の間に入った時もあったが、私が間に入った一瞬だけ空気が和らぐだけで、地獄の空気は続いた。寝不足と地獄の空気による気疲れと昨日の合宿からの疲れ。本当は最後の一つだけが、今日に響いてくるはずだった。だが、いろいろあったおかげで、想定以上の疲労感が最後の最後に私を襲っていた。そして夕方。ついに勉強合宿は終了し、私たちはバスで学校へと戻っていた。さまざまな疲れで、疲労困憊になっている私の横には、今は千晴だけがいる。悠里くんは学校に到着後、バスケ部が部活をしていたようだったので、そちらの方へと行っていた。その為、何となく流れで、どうやら今日は電車らしい千晴と共に、駅へと向かうことになった。私と千晴。二人で並んで校庭を歩く。校庭内には、私たちのように合宿を終えた生徒たちや部活をしている生徒たちがおり、まだまだ活気で溢れていた。そんな賑わいの中で、私はふと、隣を歩く千晴を見た。夕日に照らされて、キラキラと輝いている目を惹くふわふわの金髪。そこから覗く、まるで精巧に作られた人形のように美しい顔。千晴越しに見える咲き始めた桜は、そんな千晴を余計現実離れした存在にさせていた。私の視界に入るもの全てが美しく、思わず息を呑んでしまう。本当に見た目だけなら千晴は完璧で絵になる男だ。…動いてしまえば、いろいろとボロが出てしまうが。マイペースで我が道を進み、誰の言うことも聞かない。そんな千晴にどれ

  • 推しに告白(嘘)されまして。   103.それでも朝は来る。

    side柚子一睡もできなかった。私は布団の中で、ただただ天井を見上げていた。それもバッキバキの目で。ここは施設内の宿泊部屋。この部屋の畳の上に、私たち生徒は布団を敷き、十人ほどで一緒に寝ていた。その十人の誰のスマホからも、まだアラームは鳴っていない。障子の向こうの空は、おそらく明るくなり出した頃で、あと1時間もすれば起床時間になるだろう。今日の予定のことも考え、少しでも寝なければならないということは十分にわかっている。そうしなければ、体力が持たない。だからこそ、私は就寝時間から何度も何度も寝ようと、まぶたを閉じた。しかしまぶたを閉じるたびに、星空の下で、涙を流しながら、こちらに微笑む悠里くんの姿が浮かんでしまうのだ。それもあまりにも鮮明に。昨日のあの場面が頭の中で繰り返され、結局私は今まで一睡もできずにいた。私は昨日、何よりも大切な存在、推しと別れた。私は推しである悠里くんに、恋心ではなく、憧れを抱いていた。悠里くんと同じではなかった。それでも悠里くんと共にいられた時間は幸せで、楽しくて、キラキラと光で溢れた、かけがえのない、手放し難いものだった。悠里くんと別れることを望んだのは、私だ。悠里くんと同じ想いを抱けない私と付き合っていても、悠里くんが傷つき続けるだけだから。実際、傷つき、苦しそうに、辛そうにしている悠里くんを、私は何度も見てきたし、その姿に胸が痛んだ。私も耐えられなかったのだ。このまま何事もないように悠里くんの隣に居続けることに。ーーーーだから、別れを受け入れた。悠里くんに別れを告げられて、胸がギュッと締め付けられた。以前、私が悠里くんに別れを告げた時も、悠里くんの胸はこんな感じだったのだろうか、と思う。それから最後に、悠里くんとキスをした。何度か唇を重ねたことはあったが、昨日のキスは、唇と唇が触れただけなのに、甘くって、切なくって、苦しかった。私に別れを告げた後も、私とキスをした後も、悠里くんはやっぱり辛そうだった。だが、それでも瞳の奥にはもうあの仄暗さはなく、少しホッとした。胸に悠里くんと別れた喪失感が残る。けれども、悠里くんの未来に明るい兆しを感じ、安心もしていた。都会とは違う、星空の下。どの星よりも光輝く私の推しが笑っている。心からの笑顔ではないけれど、いつかそれは本当の笑顔になる

  • 推しに告白(嘘)されまして。   17.お土産と影。

    side柚子沢村くんの名誉ある彼女(上辺だけ)になり、もう1ヶ月。10月に入り、暑さも和らいできた今日この頃。私は今日も朝の委員会活動を終え、教室へと移動していた。そしてその道中、下駄箱でなんと朝練後の私の推しと遭遇した。「おはよう、沢村くん」「あ、鉄崎さん。おはよう」私に挨拶を返して、爽やかに笑う沢村くんは今日も相変わらず眩しすぎる。練習後で暑いだろうに、着崩すことなく、きちんと着ている制服。汗を拭くために首にかけられているタオル。少しだけ乱れているが様になっている髪。練習後にしか得られないかっこよさがそこには確かにあった。推しが尊すぎる。かっこよすぎる。今日も沢村

  • 推しに告白(嘘)されまして。   15.デートの終わり。

    「…」疲れた。お化け屋敷からやっと出た私は、もう満身創痍で、千晴に寄りかかっていた。あんなもの入らなければよかった。何も楽しくなかった。「先輩、大丈夫?」ぐったりとしている私の様子を伺う千晴は、私とは違い余裕があり、どこか満足げだ。お化け屋敷が苦手だと言っていたわりには、ずっと平気そうで、私を抱き寄せたまま、腰を抜かす私を何度も何度も庇ってくれた。どうなっているんだ。本当は苦手ではないのか…?千晴に疑念の視線を向け始めた、その時。 「きゃー!」突然、女性の甲高い叫び声がこの場に響いた。 ただ事ではなさそうなその声に、周囲の人々はざわつき始める。声の方へと視線を向け

  • 推しに告白(嘘)されまして。   14.お化け屋敷。

    買い物を済ませ、バケハを被り、サングラスを付けたら、いよいよメルヘンランド攻略スタートだ。VIPチケットの特典で、どのアトラクションも待ち時間ゼロで遊べるというものがあったので、私たちは早速一番人気の待ち時間200分超えの屋内アトラクションへ行った。たくさんの人が200分待ちの列へと並ぶ中、すいすいと別ルートに案内され、進む私たち。そして本当に待ち時間ほぼゼロで屋内アトラクションに乗れた。とんでもなく楽しい。最高。それから私たちはさらにメルヘンランドを攻めた。ジェットコースターに4Dライド。シアタータイプのものや屋内アトラクション、屋外アトラクションなど。とにかくたくさんのアト

  • 推しに告白(嘘)されまして。   12.お誘い。

    最高すぎた推しとのデートの翌日の放課後。 私は今日も風紀委員室にいた。 そして机を挟んで目の前に座る千晴のことを睨んでいた。 今日こそはきちんと反省文を書かせる為に。 先日は仕事のついでに千晴の反省文の監督をしたせいで、酷い目にあった。 だから今日は仕事もせずに、千晴から片時も目を離さないつもりだ。 少しでもおかしなことを書き始めたら止めてやる。 「ねぇ、先輩」 「ん?」 先日とは違い、一応真面目に反省文を書いていた千晴を睨みつけていると、ふと千晴が思い出したかのように手を止め、顔を上げた。 急にどうした? 「先輩は土日何やってたの?」 「え?土日

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