Mag-log in-375 利益を考えろって- メラルークが順当に店で出す料理の仕込みを進める中、ピューアは自分が店(実家)にいない間の変化に驚きを隠せなかった。正直言って明らかに不自然だった様だが・・・。ピューア「お父さん・・・、いくら何でも研ぎ過ぎじゃない?ウチのお客さんってそんなに沢山食べる人ばっかりだっけ?」 そう、何処からどう見ても父が研ぐお米の量が数倍以上に増えていた様なのだ。ただそれ以上にこの量でなければならない理由の方に驚愕していたらしい。ピューア「どうしたってのよ、正直に言うけどそんなには必要無いよね?」メラルーク「うん・・・、そうなんだがちょっと訳ありなんだよ。今年から始めた事でな、ちょっとあっちを見てくれるか?」 マーマンが指差した先には前回真希子と帰って来た時に無かった物が・・・。ピューア「あれね・・・、「無料ライスバー」・・・、無料?!何考えてんの!!」 娘が怒るのも無理は無い、米だって原価がかかっている「大切な商品」の一つなのだ。それを「無料」にしてしまうと利益が無いどころか赤字が発生してしまう、しかしメラルークは至って冷静だった。メラルーク「理由(わけ)も無く無料にしている訳が無いだろう、あっち側にある炊飯器の隣を見てみな。」 改めて無料ライスバーの方を見てみると、調理場にある物とは別に設置されている炊飯器の隣に何故かアンケート用紙が積まれていた。メラルーク「無料で提供する代わりにアンケートに答えて貰おうと思ってな、実はある人に頼まれたんだよ。」ピューア「「頼まれたから」って無料にして良い理由にはならないって、それに「頼まれた」って誰に?!」メラルーク「それがな・・・、貝塚財閥の社長さんなんだ。」ピューア「結愛に?!何で結愛が?!」 どちらかと言うとメラルークはピューアがこの世界でもはやなくてはならない存在となっている「貝塚財閥」の社長を名前で、しかも呼び捨てで呼んでいる事に驚いていた。メラルーク「ピュー、お前は貝塚社長の何なんだよ。せめて「結愛社長」にしろって。」ピューア「「何」って・・・、ネフェテルサでよく会う呑み友達だけど。」メラルーク「「吞み友達」って・・・、世間って狭いな・・・。」 娘の知らない一面を垣間見て開いた口が塞がらない父親、ただ今はそんな事を話している場合では無い。ピューア「それで?結愛がお父
-374 大切な仕事- 翌日の6:30頃、シューゴに豚カツや豚汁などの製法を伝授して欲しいと依頼されたメラルークはピューアと共に他には誰もいない店内の調理場にいた。因みにこの店を開いてから店主がずっと守っている事なのだが、本人は朝4:30からこの場にいるらしい。メラルーク「良いか、今から俺の全てをお前に伝授しようと思うがその前に1つ聞きたい事があるんだ。」ピューア「私に・・・?」 今の今まで父が自分に質問した事があっただろうかと言った表情を見せる長女、そんな中で昨日偶然帰郷していた次女のメラが遠くで欠伸をしていた(雰囲気壊すなよ)。メラルーク「そうだ、父親としてではなく同じ飲食業の者としての質問だ。至ってシンプルな物だがこれから店舗の副店長として働くピューに大切にして欲しい事だ。」 「至ってシンプル」とは言うが深い意味を含んでいる様な内容の質問をしようとしているのではないかと推測できる雰囲気に少し緊張してしまったピューア、そんなニクシーにマーマンは何を聞こうというのだろうか。メラルーク「そんなに緊張するなって、決して難しくないと思うから心配しなくても良い。」ピューア「分かった、それで質問ってどんな物なの?」 早朝の静かな店内で先程よりは緩んだが未だに緊張の色を隠せない娘、「これ以上緊張させるのも可哀想だから早く聞いてあげた方が良いんじゃないの?」と思ってしまうのは俺だけだろうか。メラルーク「よし聞くぞ、「俺達飲食業の者がお客さんに何を提供すべきだと思う」?」 本当にシンプルな質問だ、ピューアは空いた口が塞がらなかった。ピューア「「何を」って・・・、「美味しい料理」に決まってんじゃない。皆それを求めて来るんだから。」 確かにそうだ、しかし本当に「美味しい料理」が正解だというのなら家で自分(若しくは家族)が作る物でも良いはずなので飲食業の者がわざわざ考える必要性は無い。メラルーク「うん、間違ってはいないんだがそうだな・・・。俺が悪かった、質問(聞き方)を変えようか。」 2人の目の前には父親が昔から贔屓にしている近所のパン屋に頼み込んで特別に焼いて貰った食パンを自ら挽いて作ったパン粉があった、よく見れば市販の物に比べてかなり粗挽きで一粒一粒が大きい。その横には近所の養鶏場で今朝採れた卵で作った溶き卵。メラルーク「えっとな・・・。」 腕を
-373 魔法の言葉- ずっと仲違いしていた父・メラルークと数年越しの仲直りを果たした娘(ピューア)は感極まり涙したのは良いものの、気が緩んで『人化』がほぼ解けかけていたが「流石にお客さんの前ではまずい」と冷静さを取り戻して改めて『人化』する事に。因みに着ている服は相変わらずの「小豆ジャージ」だった(勿論悪く言うつもりは無いのでご了承下さい)。メラルーク「お前な・・・、さっき言おうと思ったが相変わらずそれしか持って無いのか?」ピューア「最近はちゃんと買う様にしているけど今日の服は偶々よ、笑わないで。」 別に笑った覚えは無いのだが、一応これが「コメディ小説」だという事を思い出して欲しい今日この頃。 そんな中、娘以上の冷静さを取り戻していた父には疑問に思う事があった様で・・・。メラルーク「そう言えばだが・・・、どうしてピューアがシューゴさんと一緒にいるんだ?」ピューア「えっとね・・・。」 父に銀行員や板前を辞めて拉麵屋で働いている事を伝えていなかった為か、自らの現状を言い出せなくなってしまっているピューアに替わってシューゴが説明する事に。シューゴ「あのですね・・・、実はご監修頂く料理を出す新店の副店長をピューアさんにお願いする事にしたんですよ。」 「飽くまで自分が独断で決めた」事を強調し、ピューアには何の罪もないという事をアピールしようとしたシューゴ。その傍らでニクシーは「家を飛び出してまでなった銀行員」を辞めた上で家にやって来た事により再び父を怒らせてしまったのではいかと小刻みに震えていた、しかし父親の反応は意外な物だった様だ。メラルーク「そうか・・・、俺の娘がいち店舗の副店長にか・・・。俺も歳を取る訳だな。」 冷静さを保っていたはずのメラルークが感動で涙を流す中、ピューアは店の壁に立てかけられた掲示物を見かけた。ピューア「お父さん・・・、あんなのあったっけ?」 涙目を擦りながら娘が指差す掲示物を確認した父親、どうやら娘が興味を持ったことが嬉しかった様だ。メラルーク「いや・・・、つい最近思った事があって素直に書いてみたんだ。」ピューア「そうなんだ、読んでみて良い?」メラルーク「勿論・・・、どうぞ。」 マーマンの許しを得たニクシーは掲示物にそっと近づいた。 ピューア「「「ご馳走様」の魔法」か・・・。」 目の前の掲示物にはこう書
-372 父の本音と最も大切な事- 何も知らない体で店自慢の豚カツを食べながら店主・メラルークの話を聞いていたシューゴ、飽くまで推測ではあるがこの時食べていた料理の味を楽しめてはいなかったのでは無いだろうか。シューゴ「宜しければお話をお聞かせ願えませんか、勿論お気に障らない程度で構いませんので。」メラルーク「決して明るい話では無いですけど、良いんですか?」シューゴ「私なんかが聞いても宜しいなら・・・、ですが・・・。その前にちょっとお手洗いの方をお借りしても?」メラルーク「勿論です、どうぞ。」 シューゴが近くの化粧室から数分で戻った後、グラスに入っていた水を煽って一息ついたメラルークは決して軽くはない口をゆっくりと開いた。シューゴ「すみません、お待たせ致しました。どうぞお話しください。」メラルーク「はい・・・。私には2人の娘がいるんですがその内の長女であるニクシーが突然「魔学校で勉強して銀行員になる」と言い出しましてね、その頃この店を大きくすることで頭が一杯だった私は頭ごなしに反対してしまったんです。ただ娘も強情だったもので私の反対を押し切り家を飛び出して行きました、それから自分は心中で「きっとそれなりの覚悟があるんだろう」と黙認する様にはしていたんですが先日とある理由で帰って来た娘をあからさまに拒絶してしまったんです。 本来親の立場としては子供のやりたい事を応援しなればならないと思うべきなのかも知れませんが反対してしまった手前どうする事も出来なくてね、本当に私は父親として最低な事をしてしまいました・・・。」 今だから、そして長女(ピューア)本人がいなかったから本音を吐き出すことが出来た父(メラルーク)は改まった様に水をもう1口飲んで一息ついた。シューゴ「あの・・・、少々宜しいでしょうか。」メラルーク「はい・・・、えっと・・・、どうされました?」 メラルークの本音を聞いたシューゴは思い切った質問をしてみる事に、返答次第では本当に新店の企画が水の泡になってしまうかもしれない。シューゴ「私がこんな事を聞いて良いのか分からないんですが、もしも娘さんとお会いする事が出来たらどうされたいですか?」メラルーク「そうですね・・・。」 ゆっくりと息を吐いて返答を考える父親(マーマン)。メラルーク「娘は決して私の事を許してくれないと思いますが、「応援
-371 気遣いと心遣い- ピューアとの会話から親子の事を気遣ったのか、一旦シューゴは今回の件を保留にする事にした。いくら何でも気まずい雰囲気のままで父と娘を再会させる訳には行かない、ましてや一緒に仕事をするだなんて出来る訳が無いと思ったからだ。 翌日ダンラルタ王国にある鉱山での営業を普段通りこなした店主は自らの昼食も兼ねて一先ずメラルークが齷齪働くトンカツ屋の「C’ s キッチン」へと向かう事に、どうやら新店がどうなるかはチェルド親子にかかっている様だ。メラルーク「いらっしゃい、あらシューゴさんでは無いですか。次の商談って今日でしたっけ。」 この日に至るまで商談や相談を何度も何度も繰り返して来た2人、今日次第ではその日々の苦労が全て水の泡になりそうで怖い。シューゴ「いえ、今日はただ昼食を食べに来ただけなんですよ。やはり監修をお願いしたお店の味をしっかりと舌で味わっておくのも私の大切な仕事だと思いますし、大好きなここの豚カツを改めて味わいたいと思いまして。」メラルーク「あらま、今ではもう有名企業と言っても過言では無い「暴徒の鱗」の代表さんにそう仰って頂けるなんて料理人冥利に尽きますね。こりゃあ頑張って熱々の豚カツを揚げないといけないな。」シューゴ「何を仰っているんですか、私はメラルークさんが大切にされているこの店その物の味を味わいに来たんですよ。それに頑張り過ぎて焦がすのだけはやめてくださいね。」メラルーク「こりゃあ1本取られましたね、やはりどんな仕事でも適度に頑張るのが良いのかも知れませんね。では・・・、私はこれで。」 やはりランチタイムだからか、それともテレビで放映されて有名になったからか、店内は多くのお客さんで満席となっていた。しかしそんな中でも笑顔でシューゴを出迎える程の余裕を持っている、もしかしてこれが「貫禄」という奴なのかも知れない。メラルーク「あ・・・、あっちい!!こん畜生め・・・。」 あらま、そんな訳でも無かったみたいだな。うん、前言撤回。シューゴ「あの・・・、大丈夫ですか?」メラルーク「いや・・・、お恥ずかしい所をお見せしまして面目ないです。」 正直言ってシューゴは信じる事が出来なかった、目の前にいる優しい表情を浮かべるマーマン(メラルーク)が本当にピューアと仲違いをしている父親だというのだろうか。 ただ今はゆっくり
-370 事情- 昼食をとりながらケデールと豚肉の売買契約交わしてから数十分経った頃、これから出す料理の監修をお願いしたお店が従業員の実家だった事を知ったシューゴは「より一層監修をお願いしやすい」と踏んだので屋台を営業するついでにバルファイ王国にある新店へと立ち寄りピューアを呼び出そうとしていた。 各々の家庭には各々の事情があるはずなのだが1号車の店主の心中には「父親は息子に厳しく娘に甘い」というイメージが強く根付いていた様だ、個人的な考えだけで物事を進めるのは良くないと思うのだが・・・。シューゴ「ピューアさん、お久しぶりです。」ピューア「あらまぁ!!お久しぶり・・・、と言っても何か変な感覚ですね。」 こうやって2人が顔を合わせるのは確かに久々ではあるが、『念話』でちょこちょこ話してはいるので「久しぶり」という言葉が正解なのかどうかが分からないでいる。ピューア「珍しいじゃないですか、今日はどうされました?」シューゴ「ちょっとお2人・・・、と言うよりピューアさんに御報告があるんです。」ピューア「「私達2人に報告」ですか、じゃあイャンを呼んで来た方が良いですね。」シューゴ「いえいえ、皆さんお忙しいでしょうからイャンダさんには後で改めてご報告させて頂きます。」ピューア「そうですか・・・、そう言えば先程「と言うより私に報告」って言っていましたもんね。どうしてイャンじゃなくて私になんです?」シューゴ「実は折り入ってピューアさんにお願いがあるんですよ、これから提供する料理についてなんですが。」 「豚肉料理」と「朝食」というキーワードだけは聞いていた上級人魚(ニクシー)、「朝の時間帯に提供する豚肉料理と言えば・・・」と豚肉や野菜の優しい風味に溢れるある料理を思い浮かべた。ピューア「朝に出すんですよね、という事は「豚汁」とかですか?」 この3国において、特にこのバルファイ王国では夜から翌朝の時間帯と日中における気温差がかなり激しいのでピューアは出汁香る温かな豚汁を提供するお店があるとありとあらゆるお客さんに喜ばれるのではないかと踏んだらしい。シューゴ「良いですね・・・、それも良いアイデアとして取り入れる事を検討してみましょう。ただ実はね・・・、今日お伺いした理由は別の料理なんです。」ピューア「「別の料理」・・・、ですか?」 実は「ビル下店」でも結
3.「異世界ほのぼの日記~日本に似て便利な世界でぷらぷら生活~」佐行 院-①突然の異世界- ここは東京、現在20XX年、去年からより酷く進みだした地球温暖化により7月8月における1日の平均気温が40度を超える様になってしまった今日この頃、営業職の女子社員・吉村 光(よしむら あかり)は営業先への外回りに出ていた。日差しがまぶしい、正午となり昼休み。1日の中でも1番暑い時間帯を迎え涼を求めて多くの人が喫茶店やレストランで食事を取っていた、光もその1人になろうと店を探していた。光「お腹空いたし暑くて何もする気しないよ、何食べようかな・・・。」 街は誘惑に溢れているがどこのお店も満席でな
-㉛ 後日談・異世界へ- 株主総会がおわり、義弘が逮捕されてから数年、貝塚財閥は本格的に社長となった結愛の理念の下で教育支援を中心とした事業に力を入れて信頼を取り戻していった。 今となっては貝塚学園は雰囲気が明るく、部活動等が充実した有名進学校として有名となり当時の面影を全く残していない。 副社長となった結愛の夫・光明が結愛にオリジナルの珈琲を淹れて渡した。光明「ここも大分変ったよな、理想の学校として全国から憧れられる存在になっているから、お前もあれからもの凄い努力をしたんじゃないのか?」 結愛「何言ってんだよ、俺じゃなくて周りの人たちのお陰だろうが。」 相変わらず結愛の口調は
-⑤疑問- 補習で静まり返った校舎、先日の火災(というより義弘の黒服たちによる計画的犯行)で全焼した校舎は跡形もなくなっていた。養護教諭の乃木(のぎ)が当然とも言える質問を投げかけた。乃木「理事長先生、少しよろしいでしょうか?」 義弘「どうした。」 乃木「育ち盛りとも言える生徒達に対して一切の飲食を禁ずるのは如何なものかと思うのですが。」 義弘「君は私の考えに、いや、私に反逆するのかね。」 乃木「いや、そんなつもりは。申し訳御座いません。」 義弘「構わないよ、そう思うのも無理はない。いや、養護教諭として当然の事だ。だったら人間がどうして空腹になるのかをご存じかね。」 乃木「食べ
-④残酷な破壊と手紙- 守や結愛たちが教室で最初の補習の準備をしていると、クラブハウスや校内の部室から私物をさせてきた「元」部員達が続々と帰ってきた。荷物が多い生徒や少ない生徒、中には高価な宝飾品を持っていたものもいた。結愛が宝飾品に反応していたので多分本物だろう、どこのブランドの物かは想像もできないがかなりの高級品そうだ。必要なのかどうかは正直分からないものが正直な気持ちでこれらを先生たちが見たらどういう反応をするのだろうか、特に湯村先生が。 「以前」湯村先生には毎日決まって同じ食堂に食事を取りに行く習慣があった。自由な校風だったため、昼食を校外に食べに行っても大丈夫だった。守や琢磨もそ