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Ep.3 理子の提案【理子視点】

ผู้เขียน: いろは杏
last update วันที่เผยแพร่: 2026-05-12 16:16:46

【理子視点】

深夜、私は自室の机で実験ノートを開いたまま、頭を抱えていた。客間で眠っている翼のことを考えると、どうしても眠れない。

「私が……私の実験のせいで、翼を……」

原因となった『RG-47』の成分表を見つめながら、何度も自分を責めた。特殊なホルモン様化合物が、人間の性染色体や細胞分裂にまで影響を与えるなんて、予想もしていなかった。

いえ、予想するべきだったのだ。研究者として、もっと慎重に安全性を確認するべきだった。

時計を見ると、もう二時を回っている。

翼はちゃんと眠れているだろうか。そんな心配から客間の扉をそっと開けると――。

「……」

月明かりに照らされた、翼の寝顔が見えた。

艶やかな茶色の髪が枕に広がり、長いまつ毛が影を落としている。

少しだけ開いた小さな唇から、規則正しい寝息が漏れていた。女性の身体に作り変えられて眠る翼は、悔しいけれど、息を呑むほど美しい少女だった。

(こんな時に何を考えているの、私は……)

でも、その寝顔があまりにも無防備で、可愛らしくて。

私の心の中に、今まで感じたことのない奇妙な熱が芽生えているのがわかった。

翼への想い。それは、可愛い後輩に対する感情とは少し違う、何か特別な――。

「ダメよ、理子。今はそんなことを考えている場合じゃない」

私はブンブンと首を振って、自室に戻った。

まずは翼の身体を元に戻すこと。それが私の最優先事項。

そしてその前に……翼のご両親に、この信じがたい現実を説明しなければならない。私の責任で、ちゃんと。

* * *

「おはよう、翼」

朝七時。私はいつもの朝食である栄養固形食とゼリー飲料、それに各種サプリメントの準備を済ませて翼を起こした。

「理子先輩……おはようございます」

起き上がった翼は、自分の胸元や細い腕を見て、まだ戸惑っているようだった。

「やっぱり……夢じゃなかったんですね」

「ええ。でも大丈夫、必ず解決策を見つけるから」

翼と向かい合って朝食を取る。翼は味気ない固形食を不思議そうに齧りながらも、昨日よりは少し落ち着いているように見えた。

「翼、今日の予定なんだけど」

「はい」

「あなたの両親に、私から説明させてもらえる?」

「えっ?」

翼の手が止まる。

「理子先輩が? でも……」

「私の実験が原因なの。だから、私が責任を持って説明するべきよ」

「そんな……申し訳ないです。僕が勝手に手伝ったのに……」

「申し訳ないなんて言わないで。これは私がやらなければいけないことなの」

俯く翼の不安そうな表情を見ていると、胸が締め付けられる。

「両親が……信じてくれるでしょうか」

「きっと大丈夫。あなたの両親なら、翼のことを理解してくれるはずよ」

「わかり……ました。よろしくお願いします」

翼はそう言って、私に深く頭を下げた。

* * *

朝食後、昨夜の相談通り、翼には私の予備の制服を着てもらうことにした。

「うー……やっぱり恥ずかしいです。スースーするし……」

脱衣所で着替えている翼の、情けない声が聞こえる。

「大丈夫よ。私も最初はスカートを穿くのが恥ずかしかったもの」

「理子先輩でもですか?」

「当たり前でしょう。誰だって最初は恥ずかしいものよ」

しばらくして、おずおずと翼が出てきた。

「どう……でしょうか?」

「……完璧よ」

思わず、言葉を失った。

本当に、完璧だった。紺のブレザーにチェックのプリーツスカート、白いブラウス。

ダボダボの男子制服を着ていた昨日とは違い、サイズが合っているせいで、どこから見ても美少女にしか見えない。

「似合ってる。とても」

「ありがとうございます……でも、胸のあたりが窮屈で、なんか変な感じです」

「そうね。でも、きっと慣れるわ」

鏡の前で自分の姿を確認し、落ち着かない様子でスカートの裾を直す翼を見ていると、また胸が大きくざわめいた。

(こんなに可愛い子が、私の家にいるなんて……)

「理子先輩?」

「あ、ごめんなさい。ぼーっとしてたわ」

私は慌てて視線を逸らした。

「それじゃあ、学校には二人とも体調不良で欠席すると連絡を入れてから、あなたの家に行きましょう」

「はい」

* * *

翼の家の前に立つと、私の心臓がドキドキと激しく鳴った。

「緊張するわね」

「僕もです……」

翼も同じように緊張している。当然よね、息子が突然こんな姿になって帰ってきたら、ご両親はパニックになるに決まっている。

「大丈夫。私がちゃんと説明するから」

覚悟を決めて、インターホンを押す。

『はーい』

翼のお母さんの声だ。

「朝早くに申し訳ありません。翼くんと同じ科学部の、白石理子と申します」

『あら、白石さん? 翼から聞いてるわ。今開けるわね』

扉が開いて、翼のお母さんが現れた。そして、私の隣にいる『見知らぬ美少女』を見て、不思議そうに首を傾げた。

「あの……翼は……?」

「詳しくお話しさせてください。お父様もいらっしゃいますか?」

「え、ええ……まだ出勤前だけど……」

リビングに通されて、私は翼のご両親の前で、床に手をついて深く頭を下げた。

「この度は、本当に、本当に申し訳ありませんでした」

「えっ、白石さん? どうしたの突然」

お父様が困惑した声で言う。

「私の実験のミスが原因で、翼さんが……このような状態になってしまいました」

私は、RG-47の事故のこと、その影響で身体の構造が完全に作り変えられてしまったことを、できる限り論理的に、かつ正直に説明した。

当然、お父さんもお母さんも言葉を失った。

「信じられない……そんな、漫画みたいなことが本当に……」

「新手の詐欺か何かじゃないのか?」

お父様が厳しい目を向ける。無理もない。

「お父さん、僕だよ。翼だよ」

ずっと俯いていた翼が、涙声で顔を上げた。

「お母さんがへそくりをキッチンの床下収納の奥のタッパーに隠してることも、お父さんがゴルフバッグの中にこっそり買った高いアイアンを隠してることも、全部知ってる。僕だよ……っ」

「えっ!?」

「なんでそれを……」

ご両親の顔色が変わる。

そこからさらに、小さい頃の怪我の痕や家族しか知らない思い出話をいくつか口にすると、ようやくご両親も目の前の少女が息子であるという現実を受け入れ始めた。

「翼……本当に翼なのね……」

お母さんが涙を流しながら、翼をきつく抱きしめた。翼も「ごめんなさい」と泣きじゃくっている。

「私が、全ての責任を取ります」

私は再び深く頭を下げた。

「翼さんのことは、私が責任を持って面倒を見させてください。私の家で一緒に住んで、元に戻す方法を全力で研究しながら、女性としての生活をサポートします」

お父さんとお母さんが顔を見合わせる。

「でも……白石さん一人にそんな重荷を……」

「お願いします。これは、私がやらなければいけないことなんです」

長い沈黙の後、お父さんが重い口を開いた。

「翼が……安心して過ごせるなら」

「お父さん……」

「姿が変わろうと、性別が変わろうと、翼は私たちの大切な子供だ。……白石さん、息子のことを、どうかよろしくお願いします」

「理子さんのことは翼から時々伺っていました。あなたなら、翼を任せられるわ。でも、必ず定期的に連絡をもらえる?」

お母さんも頷いてくれた。

「もちろんです! ありがとうございます……っ」

私は安堵のあまり、声が震えた。翼のご両親は、本当に翼のことを愛している、理解のある方たちだ。

「ありがとう……お父さん、お母さん」

翼が涙を流して両親に感謝する姿を見て、私も胸が熱くなった。

「理子先輩がいてくれて、本当によかった」

帰り際、翼が私に向けてくれた言葉に、私の決意は更に固まった。

絶対に翼を守り抜く。そして、必ず元の身体に戻してあげる。翼の当面の荷物をまとめて、私たちは私の家へと向かった。

「明日からは学校ね。……こっちも、校長先生や担任への説明が必要になるわね」

「……そうですよね」

「大丈夫よ。そっちも私が責任持って、なんとかするから」

翼の不安そうな表情を見て、私は頼れる先輩として、力強く微笑み返したのだった。

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