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第264話

Author: フカモリ
覚えている。成美のことは、はっきりと覚えている。

成美は、とても優しい人だった。

母が亡くなった翌年、紗友里と一緒にイベントに参加した時のことだ。

詩織たちが寄ってきて、「母親がいない」と真琴を嘲笑い、いじめたことがあった。

その時、助け舟を出してくれたのが成美だった。

彼女は詩織たちを厳しく叱りつけた後、泣いている真琴を根気強く慰め、励ましてくれた。

その後も、成美に会うたび、彼女は優しく接してくれたし、ためになる本を何冊もプレゼントしてくれた。

成美と由美は、性格がまるで違った。

ただ、子供の頃から体が弱かったとは聞いていた。

真琴がじっと見ているのに気づき、信行は自嘲するように薄く笑って続けた。

「成美が、俺の命を救ってくれたんだ」

その言葉に、真琴は瞬きもせず彼を凝視した。

涼しい風が吹き抜け、真琴の髪と服の裾を揺らす。

無言で見つめる真琴の前で、昔話を語る彼の瞳には、隠しきれない悲しみの色が宿っていた。

しばらくの沈黙の後、信行はゆっくりと語り始めた。

「高校卒業後のことだ。皆で山へ遊びに行った時、俺と成美の二人で買い出しに出たんだが……中腹でス
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