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第515話

フカモリ
真琴の車を目で追いかけ、研究所から完全に姿を消すまで、信行は視線を外さなかった。

ふと視線を逸らし、先ほどの真琴の態度を思い返すと、信行の眉間には深いしわが寄ったままだった。

長く息を吐き出す。

ただでさえ沈んでいた気分が、これでますます塞ぎ込んでしまった。

もう、どうやって彼女の機嫌をとればいいのか分からなかった。

研究所の前にしばらく立ち尽くし、自分の中で感情の波をどうにか処理してから、ようやく自分の車へと向かい、車を走らせた。

……

拓真と司をバーに呼び出し、信行は険しい顔で黙々と酒をあおっていた。

そんな彼を見て、拓真と司はただただ同情するしかなかった。

ソファにだらりと寄りかかりながら、拓真が尋ねた。

「浜野まで追いかけても駄目だったのか?真琴ちゃん、まだお前を受け入れてくれないわけ?」

何も聞かないでやればいいものを、拓真がそう口にしたせいで、信行の顔色はさらに険しくなった。

その顔を見れば、答えなど聞くまでもなかった。

なるほど、関係が修復するどころか、かえってこじれたらしい。

すると、司が信行を見て言った。

「今日は成美の命日だったよな。真
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    真琴の車を目で追いかけ、研究所から完全に姿を消すまで、信行は視線を外さなかった。ふと視線を逸らし、先ほどの真琴の態度を思い返すと、信行の眉間には深いしわが寄ったままだった。長く息を吐き出す。ただでさえ沈んでいた気分が、これでますます塞ぎ込んでしまった。もう、どうやって彼女の機嫌をとればいいのか分からなかった。研究所の前にしばらく立ち尽くし、自分の中で感情の波をどうにか処理してから、ようやく自分の車へと向かい、車を走らせた。……拓真と司をバーに呼び出し、信行は険しい顔で黙々と酒をあおっていた。そんな彼を見て、拓真と司はただただ同情するしかなかった。ソファにだらりと寄りかかりながら、拓真が尋ねた。「浜野まで追いかけても駄目だったのか?真琴ちゃん、まだお前を受け入れてくれないわけ?」何も聞かないでやればいいものを、拓真がそう口にしたせいで、信行の顔色はさらに険しくなった。その顔を見れば、答えなど聞くまでもなかった。なるほど、関係が修復するどころか、かえってこじれたらしい。すると、司が信行を見て言った。「今日は成美の命日だったよな。真琴ちゃんの母親も、確かこの時期じゃなかったか。お前、まさか墓園で真琴ちゃんと出くわしたんじゃないだろうな?しかも、内海家の連中と一緒のところを」司のその言葉に、グラスを持っていた信行はバッと顔を上げ、司を睨みつけた。くそっ、こいつらは預言者か何かなのか?やけに勘が鋭すぎる。信行のその目を見て、二人にはもうこれ以上聞かずとも何が起きたか手に取るように分かった。真琴が墓園で、信行と由美たち家族に鉢合わせた。心底呆れた顔で信行を見つめ、拓真が言った。「完全に自業自得だな。こんな状況になってもまだ由美と関係を絶ってないなんて。もういっそ、由美と一緒になっちまえよ」拓真がそう言い放つと、信行は冷ややかに彼を睨みつけた。ちょうどその時、良一たちもやってきて、拓真や信行の隣に腰を下ろした。人数が増えると、拓真と司も信行と真琴の話題にはそれ以上触れなくなった。ただ、信行が電話に出るために外へ出た際、通りかかった司が声をかけた。「真琴ちゃんは今、お前にそういう気はないんだろう。だったら、少しその件は横に置いておいて、少し時間を置けよ。まずは仕事や日常の付き合い

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    真琴のその問い返しに、信行は慌てて弁解した。「分かってるだろう、俺は……」信行が言い終わるのを待たず、真琴は再び冷静な声で言葉を継いだ。「それに、友達になる気なんて全くないわ。はっきり言わせてもらうけど、仕事でどうしても避けられない場合を除けば、本当は顔も見たくないし、これ以上どんな関わりも持ちたくないの。だから、私の気持ちを分かってほしい。お互い、仕事上で顔を合わせるだけの付き合いで十分よ。これ以上、お互いに惨めな姿を晒すような真似はしたくないわ」友達?真琴は心の中で呆れて笑いそうになった。信行は本当にただの友達になりたいだけなのだろうか?彼はひどく傲慢だ。真琴が諦めたことも、自分の元から去ったことも受け入れられないから、また一からやり直そうとしているだけなのだ。もしかしたら、ほんの少しは自分への情があるのかもしれない。けれど……それは愛なんかじゃなく、単なる罪悪感からきているものだ。あの三年間の結婚生活を経た今となっては、信行が自分を愛しているなんて、真琴には到底信じられなかった。これからも、絶対に信じることはない。たとえ彼に何度命を救われたとしても、それと愛情や恋愛感情とは全く無関係だ。真琴にここまで言い切られ、信行の瞳は目に見えて暗く沈んだ。どこか傷ついたような信行の眼差しから、真琴は淡々と視線を外した。これ以上言葉を交わす気はなかったし、わざと悲しませたいわけでもない。ただ、はっきりと言葉にして残酷なまでに突き放しておかなければ、この人はいつまでも希望を捨てきれない。目を逸らしてしばらく黙り込んだ後、真琴は無言のまま信行の横をすり抜け、自分の車へと歩き出した。今はただ、自分のこの態度を信行がしっかりと心に留め、過去への執着を手放し、本当の意味で過去と決別してくれることだけを願っていた。すれ違ってゆく真琴に対し、信行は無意識に両手をスラックスのポケットに突っ込んだまま、振り返ってその姿を見つめた。日はすでに傾き、柔らかな夕陽の余韻が真琴の華奢な背中に降り注ぎ、風がその服の裾と髪をふわりと揺らしていた。昔も今も、真琴の後ろ姿はいつもひどく孤独で、たまらなく寂しげだった。幼い頃からずっと独りきりで、いつもあんな風に静かだった。辻本家にはもう彼女しか残っておらず、今は「

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    信行の言い訳に、真琴はかすかに微笑み、落ち着き払った様子で言った。「それはそっちの都合よ。私に釈明なんてしなくていいわ」まだ夫婦だった頃、信行が引き起こす厄介ごとに巻き込まれるたび、真琴はどれほど彼からの説明を待ち望んだことだろう。あれはすべて誤解なのだと、ほんの一言でいいから言ってほしかった。噂なんて信じなくていい、真に受けなくていいのだと。けれどいくら待っても、何年経っても、心がすっかり冷え切り、希望を失い、すべてを諦めるその日まで、信行は一度たりとも弁解してくれなかったし、慰めの一言もくれなかった。今となっては、もう完全に吹っ切れている。過去の出来事など、とうの昔にどうでもよくなっている。それなのに、信行は今更になって言い訳をしに来ている。自分と信行は、そもそも根本的に噛み合っていない。全く意に介さない真琴の態度に、信行は少し眉を寄せて彼女を見た。「真琴……」だが、そう名前を呼んだものの、何度か口を開きかけては、結局何も言えずに言葉を飲み込んだ。今さらどう説明しても分かってもらえないと悟った。見つめ合い、信行の深く沈んだ眼差しと、口ごもる様子を見て、真琴は軽く眉を寄せ、思わずふうっと息を吐いた。息をついた後、真琴は信行を見上げ、淡々と言った。「あれもこれも、何もかも欲しがるなんて無理よ。世界があなたを中心に回っているわけじゃないし、誰もがあなたを理解し、受け入れなきゃいけない理由なんてないの」真琴が言い終えると、信行の顔色は先ほどよりさらに沈み込んだ。彼女を見下ろし、どう説得すればそこまで気にせずにいてくれるのかと考えを巡らせていると、真琴がさらに言葉を継いだ。「二年前もあなたは、自分が内海家の面倒を見ることや、由美への曖昧な態度を私に受け入れさせようとしたわね。これだけ色々なことを経て戻ってきた今でも、やっぱりそんな自分を私に受け入れさせようとしている。あなたはいつまで経ってもあなたのままよ。これまでも、何一つ変わっていないわ。本当は、そのままのあなたでいることを選べばいいのよ。由美だって、成美の身代わりにされることを嫌がらないと思うし。でも、そんなあなたを無理やり私に受け入れさせようとしないで」そこで一旦言葉を区切り、真琴はまた続けた。「あなたのことが好きだった

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