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 最強のママチャリに乗って美少女と一緒に異世界をのんびりと旅する
最強のママチャリに乗って美少女と一緒に異世界をのんびりと旅する
Auteur: 桜森よなが

誰とも仲良くなれない町――1

last update Date de publication: 2026-06-23 05:50:59

「テル、もうすぐ町につくわよ」

と乗っているママチャリの方から声が聞こえる。

この自転車、なんとしゃべるのだ。

二年前、異世界に転移したのだが、そのときこのママチャリごとこっちの世界へ来てしまった。

元々は普通の自転車だったのだが、なぜかこの世界に来た途端、人間みたいに意志を持ち言葉を話すようになったのだ。

「前方にモンスター発見」

とママチャリが言う。

数十メートル先に、角が額に生えたウサギ――アルミラージがいる

一見かわいらしいが、かなり狂暴で、人を見るやいなや襲い掛かってくる危険なモンスターだ。

「で、どうするの?」

「このまま轢こう」

「わかったわ」

モンスターがこちらに気づく。

こちらに向かって走ってきて、自転車の前まで来ると、僕の顔の高さまで跳躍し、こちらへ迫ってきた。

このままだと数秒後に、僕はその角で刺されるのだろう。

そこで、僕は前輪を地面から浮かせ、ウィリー走行をして、獣の頭の位置まで持ち上げたタイヤをそのまま敵にぶつけた。

「ぎゃんっ!」

悲鳴を上げて、派手に吹っ飛ぶ獣。

今の体当たりによって角がタイヤを少し傷つけていたが、この自転車は自動修復スキルがあるので、勝手に元通りになっていく。

この光景も最初の頃は戸惑っていたが、今では全く驚かなくなった。

地面を転がって、動かなくなるモンスターを通り過ぎて、僕たちはそのまま先へ進んでいく。

「さっきも言ったけど、もうすぐ町に着くころよ」

「わかったよ、チャーリー」

「私のことは、ママと呼びなさいと言っているでしょう」

「わかったよ、チャーリー」

「わかってないじゃない、もう」

プリプリと怒りながらも、チャーリーは僕を乗せて、進んでいく。

元の世界に母がいる僕はこの自転車をママと呼ぶのはなんか抵抗があるので、無視してチャーリーと呼んでいる。

彼女は気にいってないようだけど、この名前が。

でも、やっぱりママと呼ぶ気にはなれない。彼、前世は男だったみたいだし。

「なんて名前の町だっけ?」

「ヒボットという町ね、誰とも仲良くなれない町と言われているわ」

「誰とも仲良くなれない? どんな町なんだろ……」

それから自転車を走らせること数十分、目的の町にたどり着いた。

外壁に守られていて中は見えない。門の前に、門番と思われる人が一人いた。」

自転車を降りて、手で押しながら門の方へ近づいていくと、門番が声をかけてきた。

「旅人さんですか? 見慣れない乗り物に乗っていますね」

「自転車というんです」

「へー、すみません、少し乗せてもらってもいいですか?」

「チャーリー、いいか?」

「いや」

やっぱりダメだったか。こいつは面食いで好みの見た目の奴しか乗せないのだ。

「だめだそうです」

「え、今、この乗り物、しゃべりました?」

「ええ、生きていて感情があるんです、これ」

「乗り物が生きている? 感情がある? ははは、ご冗談を……どうせ魔法か何かで人間っぽくしゃべらせているだけなんでしょう」

そういう魔法があるのかは知らないけど、魔法で喋っているのなら不思議に思わないのか。

元々は魔法なんて漫画やアニメにしか出てこない世界にいた僕にとっては、この世界の人々の感覚はよくわからない。

「でも、おもしろい乗り物ですね、乗れないのが残念です」

「ちなみに、しないとは思いますけど勝手に乗ったりしたらだめですよ、死にはしませんがかなりの大ダメージを負う電流を流してくるんで」

「そ、そうですか、ははは」

この顔、隙を見て勝手に乗ろうとしてたに違いない。

「ところで、この町、宿はどこにありますか?」

「しばらくこの町にいるつもりですか?」

「ええ、数日ほど」

「悪いのですが、今、この町に滞在するのは、おすすめしません」

「なんでですか?」

「実はこの町、ここ一週間くらい、毎日のように殺人事件が起きていまして、非常に危険なんです……」

「殺人事件?」

「ええ、夜中に人が殺されるという事件が多発しているのです」

「へぇ、がぜん興味がわきました、滞在することにします」

「正気ですか? まぁ滞在するというのならとめはしませんが……」

「それで、宿の場所は?」

「東側と西側に一軒ずつありますね、西側の方が安いですが、サービスは東側より劣ります」

「丁寧に教えていただき、ありがとうございます」

と礼を言ってから、僕は開かれた門の先へ進もうとしたところで、門番によびとめられた。

「ちょっと待ってください」

「なんですか?」

「注意事項が一つあります、この町では誰かの悪口を決して言わないようにしてください」

「悪口を?」

「ええ、悪口を言ってはダメなのです」

「それは普通なのでは?」

「言ってはダメというだけなら普通かもしれませんが、この町は悪口にとても厳しいのです、過去には金貨一枚の罰金刑を下された人もいるほどなので」

悪口で金貨一枚の罰金とは、確かに厳しい。

「わかりました、気をつけるようにします」

もう一度お礼を言って、僕は門の先へ進んだ。

街の中はレンガ造りの家がまばらに建っていて、人々が明るい顔で往来を歩いていて、なかなか活気のある町だった。

町人はみんな気さくな感じで、僕の近くを通りがかる人全員が、「こんにちわ」とか「おはよう」とか声をかけてくる。

今のところ。ごく普通の町という印象だ。

誰とも仲良くなれない町らしいが、今のところそんな感じは全くしない。

僕が西側の方に進むと、チャーリーが不満げな声で話しかけてきた。

「なんで西の方に進んでいるの?」

「西側の宿の方が安いからじゃないか」

「ケチね、お金はあるんだから東側のほうにすればいいじゃない」

「この先、何があるかわからないからね、少しでも節約しといたほうがいい」

それからも宿に向かって歩いていると、先の方で何やら人だかりを見つけた。

何だかざわざわとしている。

「なにかしら?」

「行ってみよう、チャーリー」

人だかりのところまで行き、一番近くにいた人に声をかけた。

「なにかあったんですか?」

「ん、おお、昨日、殺人事件があったみたいでな、死体があそこに置いてあったんだ」

その人が指さす方を見ると、

ぐったりとあおむけに倒れている人がいた。

「またこんな事件が起きたのか」

「これで七日連続だな」

「おそらく同じ人間の犯行だろうな」

「次はおまえの番だったりして」

「やめろよ、物騒だな」

なんて話し声が人ごみの方から聞こえてくる。

「七日連続で殺人事件が起きたのか、同一人物が起こしたのだとしたら、相当いかれたやつだな」

僕がそう言うと、人だかりの中にいた人たちが一斉に僕の方を怪訝な顔で見た。

「な、なんですか?」

困惑していると、人ごみの中から恰幅のいい男が出てきた。

「あなた、見ない顔ですね、旅人さんですか?」

「え、あ、はい」

「私はこの町の長《おさ》の、モリスンと言います、この町では、悪口を言うことが禁止されているので、今のような発言は控えていただきたいです」

「え、でも、相手は殺人犯なんですよ」

「誰に対しても、この町では悪口を言ってはダメなのです、あなたはよそ者ですから今回は大目に見ますが、今後は気を付けてくださいね」

びしっと人差し指を顔の前に立てる町長。

なるほど、確かにあの門番が言うように、悪口に厳しい。悪人に対しても言ってはダメとは、徹底している。

「申し訳ありません、以後気を付けます」

「そうしていただけると助かります。困ったことや気になることがあったら、何でも私に言ってくださいね」

「それでは、少し死体を近くで見させてもらってもいいですか?」

「いいですけど、なにするつもりですか?」

「あ、いえ、なにも。ただ見るだけですよ」

僕は人ごみの間を縫って、死体の前に行く。

血が流れている箇所をよく見てみる。

胸に鋭い爪でひっかいたような傷があり、だらだらとそこから流れていた血が赤黒く変色していた。

「この傷のかんじだと、モンスターの仕業だな」

そう言うと、人だかりの中で声を上げる者が出た。

「え、でも、俺、五日前に、犯人が人を殺しているところを見たけど、明らかに人の顔をしていたぞ? その時夜で暗かったし、すぐに逃げちゃったからよく見てないけど」

「オレも三日前の夜に犯人を遠目からちらっと見たけど、人間だったぜ」

人間? 妙だな、この傷はどう考えてもモンスターの鋭い爪によるものっぽいけど……。

と思っていると、別の町民が声を上げた。

「ん? でも、俺は昨日、犯行の現場を遠くから見たけど、四足歩行の獣っぽい姿をしていたぞ?」

「は? オレも昨日見たけど、虫っぽい姿をしていたぞ、砂漠にいるサソリみたいな見た目だった」

「あれ、私は二日前に犯人っぽいのを見たけど、羽があったわよ? だから鳥みたいなモンスターなのかなって」

町民たちが次々と話す目撃情報を聞いて、町長が頭を抱える。

「言っていることがばらばらじゃないか!」

「それぞれの事件は別の犯人が起こしたんじゃないの?」

とチャーリーが言うと、この場にいる全員が「え、乗り物がしゃべった?」と驚いた。

「魔法によって人間っぽい言葉をしゃべらせているんです」

「へー、そんな魔法があるんだ、それにしても、面白い乗り物だな」

とある男が言い、まじまじとチャーリーを見つめる。

町長がそこでせき払いを一つした。

「ごほん、話を戻しましょう、先ほど、別人がそれぞれの事件を起こしたという意見が出ましたが、どの事件も犯行の手口が全く一緒なので、私は同じ者が起こしたんだと思います」

そんな町長の言葉に異議を唱える者が出る。

「模倣犯がいる可能性もあるんじゃないか?」

「たしかに」

「でも、なんで昨日は被害者が一人なのに対して、犯人が四足歩行の獣というやつもいれば、虫っぽい姿だったと言うやつもいるんだ?」

「それは……なんでだろうな?」

うーんと唸りながら首をかしげる町民たちを見て、チャーリーがため息を吐く。

「目撃者たちの情報が矛盾しているわね、少なくともあの中の誰かの発言は間違っているということになるのかしら、どう思う、テル?」

「本当に誰かが嘘をついているのか?」

「は? だってどう考えても矛盾している情報があるじゃない」

「もし、矛盾していないとしたら?」

「そんなはずないわ」

「そうか? この目撃情報がすべて当てはまるモンスターがいるじゃないか」

「なんてモンスター?」

「マンティコアだ」

「なによそれ」

「なんだ、知らないのか?」

「知らないわよ、どうせあなたが元々いた世界の知識なんでしょ、違う世界の知識でマウント取らないでよ、むかつくわね」

「いや、ごめん、そんなつもりはなかったんだ、マンティコアっていうのは顔が人間で、胴がライオンで、尻尾がサソリ、そんでコウモリの羽が生えているモンスターだ」

「そんなモンスター本当にいるの?」

「この世界にいるかどうかはわからないが、目撃情報を聴いている限り、こいつしか考えられないな」

「ふーん、事実は冒険小説より奇なりというけれど、まさかそんなのがいるとはねぇ」

チャーリーが感慨深げにそう言ったとき、僕たちの会話を聞いていたらしい町長がこちらに来た。

「マンティコア? あなたは犯人に心当たりがあるのですか?」

「本で読んだ知識に過ぎませんが、僕が知ってるモンスターだと思います」

「あなたは旅人なんですよね、今までモンスターと遭遇したことがあると思いますが、そういう時はどうしてました?」

「倒してきました」

「ということは、実力はそれなりにあるということですよね……それならばお願いがあるのですが、そのマンティコアとやらを討伐していただけませんか?」

「え、うーん、どうしようかな」

「お願いします、倒していただけたら、報酬として金貨10枚を差し上げます」

「わかりました、やります」

即答すると、チャーリーがはあっとあきれたように溜息をついた。

何だよ、お金は少しでもあったほうがいいだろ。

しばらくは旅ができるほどの蓄えはあるが、しかしこれから先何があるかわからないしな。

おお……と町民たちが感嘆の声を上げる。

「ありがとうございます、直接モンスターと戦う以外でしたら、何でも協力します」

と町長が深くお辞儀をしてくる。

「では、地図を持ってきてくれますか?」

「ちょっと待ってください」

十分くらい待った後、町長が地図を持ってきた。

走ってきたようで、息を切らしている。

「急がなくてもよかったのに」

「いえ、事態は急を要するので」

「まあ、たしかにそうですね、町長、これまでで殺人が起きた場所がこの地図のどこにあるか、おしえていただけますか?」

「えーと、最初の事件が起きたのは、このへんですね、次はここ、その次は……」

と町長が、地図の北、北東、東、南東、南、南西、西を順に指示していく。

「テル、これって……」

「ああ、北から時計回りになっているな」

「ということは、次の事件があるとしたら、北西?」

「そうだと思う」

「そのマンティコア、だっけ? そいつが隠れ潜んでいるのもそのあたりなのかしら?」

「多分な」

「北西といっても、どうやってそいつを探すつもり? しらみつぶしに探すと時間がかかるわよ」

「こちらから探さなくても、北西の辺りで、夜に外にいたら、向こうから僕たちを狙ってくるだろ」

「たしかにそうね、じゃあ、今夜、北西の辺りで待ち伏せていましょうか」

よし、方針は決まった。あとは夜までにポーションとかいろいろ補充しておかないとな。

「それにしても、なんでそんなモンスターがこの町に侵入してきているんだ……門番は何をやってるんだ?」-

「そいつ、飛べるんでしょ、空から来ればバレないんじゃない?」

僕の疑問にチャーリーがすかさず答えを返した。

すると、町長が僕たちに近づいて、会話に割って入ってきた。

「いえ、上空もちゃんと警戒させています、万が一空から侵入しようとするモンスターがいたら、警報を鳴らすように言っています」

「あ、そうなの、じゃあどうやって町にはいってきたのかしら?」

「顔は人間なんだし、フードとかで隠せば、夜だと獣だとばれにくそうなので、町に入れちゃったんじゃないか」

今度はチャーリーの疑問に僕が答えると、町長も口を開いた。

「そうかもしれませんね、でも、ここで推測を語るより本人たちに聞いた方がいいですね、ちょっと門番の所に行きましょうか」

それから町長と共に町の入り口の方へ向かい、さきほど門の前で僕が会話をしたあの門番と、宿舎で休んでいた他の門番、計10人を呼び出した。

そして魔物が街に侵入したことを説明し、怪しい者が来なかったかを訊くと、「あっ」と一人だけ声を上げた。

町長がその者に鋭い目を向ける。

「何だ、心当たりがあるのか?」

「え、えっと」

「正直に話せ、大丈夫だ、罰とかは与えないから」

「一週間くらい前に、行商人を名乗る、赤い髪の男と黒いフードをかぶった怪しい男が来ました。フードをかぶった男は馬車の中にいて、窓から顔だけ出してたから全身が見えなかったんですけど、今思うと……」

「多分フードをかぶった方がマンティコアだ」

と僕が言うと、彼は深々と頭を下げた。

「そうだったんですか、すみません、顔は人間だったし、言葉をしゃべっていたので、問題ないと思っちゃいました」

そいつ、人間の言葉をしゃべるのか。

「なんて言ってました?」

「『夜遅くまでごくろうさまです』とだけ」

「その赤髪の男はその後、どこへ行ったかわかります?」

マンティコアと一緒に行動しているとしたら、そいつもただ者ではないだろうと思ったので、尋ねてみた。

「あ、そいつは、五日前に馬車と共に去っていったよ」

マンティコアだけ残していったのか。

「何者なんだろう、その赤い髪の男は?」

「とりあえず、今はマンティコアをどうにかすることに集中しましょう」

とチャーリーに言われ、確かにそうだなと思い直す。

それから、町の人たちにも協力してもらって、北西の辺りに住んでいる人たちに、今日の夜、外に絶対出ないように言いふらしてもらった。

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  • 最強のママチャリに乗って美少女と一緒に異世界をのんびりと旅する   私って自由だったんだ

     誰とも仲良くなれない町を出て、しばらく自転車を街道に沿ってこいでいた。 先程から周囲がほぼ草木しかない光景が続いている。 たまにゴブリンやスライムなどの低級のモンスターが襲い掛かってきたが、自転車でそのまま轢いて吹っ飛ばして進んでいく。 数時間くらいこぎ続けているので、そろそろ一休みしたいな、と思っていた時、ちょうど数十メートルくらい先に、大きな木を見つけた。「あそこの木陰で休憩しよう」「わかりました」「オッケー」 クルシェさん、次いでチャーリーが返事をした。 やがて、大きな木の前に着いたので、その近くに自転車を停めて、木に持たれるようにして座り込む。「ふぅ」「お疲れ様

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